チームワーク
15日目、討伐の日がやってきた。ノルダが氷の前に爆薬を設置し始めているのを横目にミルは作戦の最終確認を始める。
「陣形は包囲型、私、マイン、ノルダが初めに攻めるのでついてきてください」
以前なら自分一人で攻めてそうだがわかってくれているようでしみじみしていると、唐突に話しかけられる。
「マインが気を引く係ですよ、1番危ないので気をつけて」
「わ、わかってる!」
ノルダが設置を終えると氷鉱夫は陣形につく。その先頭の真ん中に俺はたった。
氷前の爆薬にノルダが着火するとダッシュでこちらへやってくる。ノルダがスライディングで戻った途端轟音と閃光と共に氷の壁が取り除かれコオリドラゴンが氷片を取り払いながらでてくる。
「敵意は…」
確認するまでもなかった。突然コオリドラゴンはこちらへと向かって口から閃光を撃ってくる。顔の横を銃弾が通ったかと思うほどの速度。氷鉱夫には当たらなかったがこれまでのどの攻撃よりも早かった。
「気を引くまでもないぞ!やる気満々じゃないか!」
コオリドラゴンは助走をつけてこちらへと突っ込んでくる。戦略的には賢い選択だ。陣形を組んでいるなら力づくでそれを突破する。そしてそれを俺たちは防がなくてはいけない。
「ついてきてくれ!足を止めるぞ!」
俺についてきた氷鉱夫とともに列をなし、ツルハシを盾のように構えた。列はコオリドラゴンに対して一列に、そのまた後ろに2、3、4列。
一列目がツルハシでコオリドラゴンを受け止める。だが巨大な体躯は砲弾のようだ威力であり、それだけでは止められない。
「2、3、4列目!抑えてくれ!」
2、3、4列目は前の人の背中をささえ、体当たりに立ち向かう。氷鉱夫が層のように列を組んで防御するとアイスドラゴンの動きは止まる。
すかさず別働隊のミルとノルダが切り込んでくる。
「一点集中!はぁぁあっっ!!」
「うらっっ!!」
ミルは突風を出すのではなく、ツルハシのみに力を集中しているようだ。それなら体力も温存できる。二人の攻撃に続き他の氷鉱夫も間隙を作らず切り込む。しかしアイスドラゴンの装甲のような鱗はこれを弾き返してしまう。
「かっったっ!」
「まだまだっ!追撃!」
ミルの呼びかけで第二、第三の攻撃が波のように押し寄せる。サイドからの猛攻にはコオリドラゴンも少し効いたようだ。反撃に出たコオリドラゴンは腕を高く上げ氷鉱夫を爪でなぎ払う。ガードが間に合うも受けた氷鉱夫は後ろに吹っ飛ばされた。
「力が強いな…!正面からじゃ…」
硬いし早いし強い、まったくもって隙がない。高速移動する鉄の塊と戦ってるみたいだ。
しかしミルが何か思いついたようだ。彼女は氷鉱夫に呼びかける。
「一発…突風で相手を巻き上げます…!」
「おい!むりすんなよ!」
「だから追撃は任せますよ!」
ミルは仕方なさそうに、しかし少し笑いながら言った。No.1ルーキーに言われては俺たち氷鉱夫は彼女に応えるしかない。ミルは相手から距離を取り、ツルハシを後ろへ引いた。
コオリドラゴンは勘が鋭いらしく突風を放たんとしているミルに狙いを定める。口から光が溢れ出している。しかしジャマをさせてはならない。
「こっちだぁっ!」
俺は気を引くためにコオリドラゴンへノルダとと突っ込む。一人で突っ込むのはいけない、人を引っ張る、ともに行くことが大切だ。ノルダは俺の方へツルハシを伸ばしてくる。俺はそのツルハシに自分のツルハシをひっかけ、ジャンプし体を浮かせた。
「飛ばすよマイン!」
二人の氷鉱夫がツルハシをひっかけ片方がハンマー投げのように一人を投げ飛ばす、ツルハシアンカーだ。
体をひねり、腕を鞭のようにしならせたノルダが俺とツルハシをコオリドラゴンへ投げ飛ばす。
ミルの突風が発動の邪魔はさせない。浮いた状態から勢いをつけてツルハシを振るった。相変わらず硬いが先ほどよりも攻撃が響く。コオリドラゴンもそれに気づいたようだ。すなわち俺の方へ注意が向いた。
「こっち向いた!」
俺が叫ぶとミルは即座に反応して突風を放つ。間一髪俺は距離を取れたが空気がひっくり返るような暴風がコオリドラゴンを包み込んだ。
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