普通の相手
翌朝、つまりプロジェクト四日目の朝は快晴だ。光が窓から差し込んでいるがノルダはいつもどおり布団の中、もすっと布団の上から起こしてみるがノルダは5分、と言ってはほっとくと10分くらい寝てしまう。顔に光を浴びながら満足そうに寝ている。
「そろそろ慣れようぜノルダ!」
「うう…」
ノルダの準備を手伝ってから作業場へと向かうといつもとは雰囲気が違う。氷鉱夫同士書類やらファイルやらまとめ作業をしている。屋外で書類とは珍しいが、人が多く集まって作業できるのでスムーズにいくようだ。
やはりミルは早速人に頼ることを実践したらしい。この方が効率がいいし1人の負担も少ないだろう。
「おれも手伝う!」
「僕も!」
書類を受け取るとどうやら取り出した製品についてのものらしい。氷の中から出すことのできた製品はツララ塔に売却するがその値段やら種類、個数、商品状態などをチェックするのだ。
今取り出している製品は計47個、テレビやら電子レンジやらだ。俺はその種類と、個数を照らし合わせて、チェックを入れた。
「よし、次は採掘いくぜ!」
チェックしたものを置くとツルハシを持って持ち場へと向かう。いつもより10分遅いスタートだが、このくらいの遅れで他の仕事がみんなで手分けしてできるなら全く問題はない。ミルも助かるだろう。
ツルハシを持ち、後はいつもと同じだ。守護者もしばらく見かけない、だからこの隙に採掘のスキルを上げてしまうのが良い。
しばらく書類作業、採掘の日々が続き、次の守護者が現れたのは十日後、プロジェクト14日目の朝だった。俺たちはミルと一緒に氷の中にどん、といる守護者を覗き込んだ。
コオリドラゴン、四足歩行で体は硬い鱗に覆わている。長い尻尾の先にはツルハシのような部位がついていてそれを振って攻撃したり、爪での引っ掻き、体当たりを得意とする。鋭い目は氷越しでもすくんでしまうほどだ。青く巨大な体駆は岩のようだ。
「今年度初めてじゃないですか?コオリドラゴン」
「でも情報は持ってるし、それを伝えて連携すればまぁいけるだろ」
ミルは氷鉱夫を集めた。彼らを遠距離、近距離舞台に分け、コオリドラゴンの情報を伝える。一つ情報が増えるたびに氷鉱夫の緊張が高まっていく。それも当然だ、まともな戦いはプロジェクト初なのだ。
「敵意があったら即座に気を引き、足止めをします。相手の遠距離を掻い潜り、近接部隊が攻撃、そのあと彼らの撤退を遠距離がサポート。明日、本番です」
ミルは氷鉱夫たちにそういうと、宿舎に戻っていく。
「マイン、ノルダ、準備を手伝ってください」
少しホッとした。また1人でやるとか言い出すのかと思っていたのだ。しかし書類作業などの仕事だけでなく戦闘関係も任せてくれるようになったのは大きな進歩だ。
「爆薬の設置、量はノルダに任せます、マインは敵意があったら…あの…ツルハシが光るやつで気を引いてください」
「わかった。ミルは?」
「近接隊を率います」
そのあと細々としたことを確認し、俺とノルダはミルの部屋を出た。自室に戻ると明日に備えた装備の確認、グレンさんにもらった防具をピカピカに磨いた。ここで成果を上げられたらグレンさんも喜んでくれるだろう。
「よし、明日は頑張るぞ、ノルダ!」
「うん!」
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