わがままでごめんね

亜夢

わがままでごめんね

あたしはその場に立ちつくしていた。

目の前にある現実をあたしは受けとめられずにいる。


まさに開いた口が塞がらない、目は点な状態なのだ。








いつもの朝、いつもの教室に

あたし『早瀬 理夜はやせ りや』の彼、

真柴 徹ましば とおる』の席だけがない。


理夜「え?……どうして?」


あたしが呆然と立ちつくしていると

ガラガラと教室のドアを開けて田村先生が入ってきた。


田村先生「早瀬、早く席につきなさい」


教卓の前にたたずむあたしに田村先生が声をかける。


理夜「先生、真柴君は? 真柴君の席がないんですけど……」


あたしは田村先生の声を背中に受け、振り向くこともなく

そのままの姿勢でたずねた。


田村先生「? 朝から何を寝ぼけたことを言ってるんだ?

いいから、早く席につきなさい」


理夜「!!? 先生こそ何を!? ……真柴君は?

真柴 徹を知ってますよね!? 昨日まで一緒に……

真柴君はどこに行ったんですか?」


あたしは振り向きざまに田村先生に問い詰める。

状況が理解できずにいたあたしは混乱していた。


そして、田村先生もあたしの発言に混乱していた。

田村先生があたしの気迫に押されて、たじろいでいる。


生徒A「早瀬どうしたんだ?」


席に座っているクラスメイトたちがざわつき始めた。


生徒B「真柴君って誰?」


生徒C「理夜、何の話してるの?」


次々に投げかけられる言葉にあたしは耳を疑う。


昨日まで一緒のクラスメイトだった男の子を

みんな、知らないと言っている。


しかも、みんな嘘をついているようには見えなかった。


理夜「みんな、何を言ってるの……?」


全身から力が抜けていくような、そんな感覚の中

あたしはポツリとつぶやく。


生徒D「はははっ、夢でも見てたんじゃないのか?」


理夜「…!!?」


その言葉にあたしの体は弾かれたようにビクッと震え

稲妻のようなビリビリとしたしびれが駆け巡る。


田村先生「……ほ、ほら早く席につきなさい!」


理夜「先生! ちょっと気分が悪いので早退します!!」


あたしはそう言い放つと、教室を飛び出していた。


田村先生「早瀬!!?」


生徒E「何、何? いったいどうしたの?」


生徒F「理夜ぁ!?」


みんなの声はあたしの耳には届かなかった。


廊下を駆け抜けて下駄箱で靴にはきかえると

門の前にいた風紀委員の声も無視して街中へ。


あたしには信じられなかった。


徹がいなくなったなんて信じられなかった。


きっと風邪で寝てるんだ。


徹の家に行けば会える。


そんな気持ちで夢中で走り続けた。




(>< ;)=3=3=3




そして、徹が住んでいた家の前まで来て

あたしは驚愕きょうがくする。


理夜「!!?」


その家の表札にゆっくりと手を伸ばし、

そこに書かれた文字をカタカタと震える指でたどっていく。


表札には『 山川 』の文字。


あたしの頭は真っ白になり、その場にへたりこんだ。


理夜「……徹……?」


あたしの頬を涙だけが静かに流れ落ちていく。

もう何も考えられなかった。






✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨







田村先生「あーっ、早瀬…!」


あたしが職員室の前を横切ったちょうどそのとき、

プリントの束を両手いっぱいに抱えた田村先生とすれ違った。


それはつい昨日の出来事。


理夜「はい……?」


振り向くとニッコリ微笑む田村先生の姿がそこにあって、

嬉しそうにあたしを手招きしている。


理夜「( ̄▽ ̄;)」


すっごく嫌な予感がするよ…。





……。





で、案の定プリントの束はあたしの手の中にあった。


理夜「もーっ、田村のバカぁ!」


あたしはぶつくさ文句を言いながら廊下を歩いている。

そこへ、階段をのぼってくる徹の姿を見つけた。


友達と談笑しながらこちらへ近づいてくるので

あたしの頬は思わず緩んでいた。


理夜「徹♪」


あたしが声をかけると徹も気がつき、

友達に「ちょっと待ってて」と声をかけてからこちらへ歩み寄る。


徹「なんだよ?」


友達の前だからか少し照れくさそうにそう言う徹の顔には

笑顔すらない。


理夜「手伝って〜、重くって……」


あたしが悲鳴をあげると徹はめんどくさそうに答えた。


徹「やだよ! 友達待たせてるし」


理夜「……じゃ半分」


徹「やだ!」


理夜「三分の一でいい」


徹「嫌だって言ってんだろ」


意味のない押し問答がしばらく続いたあと

あたしはとうとう口をとがらせる。


理夜「分かったわよ。もうあんたには頼まない!」


徹「すねんなって(´∀`)」


徹はそれまでの愛想の欠片も何もなかった顔をほころばせると

あたしの肩をポンポンとたたいてくる。


徹の友達「お〜い、真柴ぁ!!」


徹「あーっ、今行く」


先に廊下の奥へと歩き始めた徹の友達が呼ぶその声に

笑顔で答える徹。


徹「わりぃ…」


徹は待たせていた友達に軽く詫びるとすぐになごやかな談笑を

再開し、こちらを振り返ることなく去っていってしまった。


非情な男だな(´๑•_•๑) なんて思いながらあたしは

徹の背中を見送った。


理夜「徹のバカ……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




理夜「咲奈さな〜、聞いてよ(T^T)」


教室に戻ったあたしはプリントを教卓へドカッと乱暴に置くと

友達の咲奈に泣きついた。


咲奈「今日は何?」


咲奈はいつものことだからか、冷静な態度を崩さない。

あたしは一部始終を咲奈に話した。


咲奈「この前は約束すっぽかしたって言ってたよね」


理夜「うん」


咲奈はいつも親身になって話を聞いてくれる。

だから、あたしはいつも咲奈に甘えていた。


咲奈「大丈夫だって! 真柴君の方から告白してきて

付き合ってんだから、理夜を嫌うわけない!」


あたしがあまりにも落ち込んでいるのを見て

咲奈は笑顔で両手を握りガッツポーズをする。


そんな咲奈にあたしは何度元気をもらっただろう。

あたしは笑顔になっていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




教室では退屈な授業が始まっていた。

黒板に軽快な音をたててチョークが踊っている。


先生「この問題をとける人」


先生がこちらを振り返りみんなに問いかけているが

あたしはそれどころではなかった。


理夜 (咲奈にはいつも元気づけられるけど

やっぱり不安なんだよね)


手に持ったペンをくるくる回しながら

あたしは物思いにふけっていた。


理夜 (もう1年ぐらい付き合ってるけど

デートしたのは数えるほど)


頬杖をついたその姿勢は授業を聞くつもりなど

全くないことを意味している。


理夜 (メールは毎日のようにくるけど

「おはよう」とか「おやすみ」とかだけだし……)


徹にたいする文句が次から次へと出てきて止まらない。


理夜 (当の本人はそっけない奴だし……)


あたしは真後ろの席に座っている徹を睨みつけてやろうかと

後ろに視線を向けた。


理夜 (寝てる……)


徹は気持ちよさそうに机に突っ伏し

立てた教科書にかくれて寝ている。


理夜「( ˘•_•˘ ).。oஇ」


あたしがこんなにも悩んでるのに気づこうともしないで

優雅に寝てるぞこいつは! なんなんだ!?


はっ倒そうかと思ったことを踏みとどまると

あたしはなんだか無性に悲しくなってきた。


理夜「(´๑•_•๑)」


理夜 (それでもあたしは徹のコトが好き

大好きなの……!)






キーンコーン……


チャイムが鳴り渡り、今日の授業が終わりを告げる。


ボコッ


不意にあたしは後ろからカバンで頭を殴られた。


理夜「痛っ……」


と、いっても徹のカバンはほとんど何も入ってないから

たいして痛くはない。


徹「一緒に帰ろーぜ」


振り向くと徹がにっこり微笑んでいる。

あたしは天にものぼるような気持ちになった。


理夜「うん!」


あたしはとびっきりの笑顔で答える。


理夜 (わーい、嬉しいよぉ♪

何日ぶりだろ、徹と一緒に帰るの)


花が咲く、徹と一緒に帰るのが嬉しくて

花が咲き乱れる。


会話がはずんでとても楽しい。


なんだ徹って優しいなって

あたしの頭は本当に都合のいいことばかり言ってる。


結局は単純なんだよね。


夕暮れの街並みを2人で肩を並べて歩く

あたしの気持ちは本当に舞い上がっていたんだ。




✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨ ✨




徹「あっ、そーだ。明日あいてる?」


いきなり徹があたしの話を遮って何かを思い出したように

聞いてきた。


理夜「あいてるけど……」


徹「じゃ、6時にいつもの場所で待ってる」


らしくない真面目な顔で話し出すから何かと思ったら

久々のデートだぁ! ってあたしの気持ちは飛び上がった。


理夜「うん、6時だね!」


にこやかに答えてすぐあたしの頭に?が大量に飛び交う。

……ん?……明日???


その?の意味するものに気づいたあたしは

急にどんよりと曇り始め、悲しくなってきた。


理夜「でも、明日は部活があるんじゃ……」


徹「だから6時って言ってんじゃねーか」


徹はそれが当たり前かのように平然としている。


不思議……こんなに近くにいるのに

どうしてあたしの気持ちは伝わらないんだろう……


あたしはどんどん不機嫌になっていた。


理夜「えーーっっ! もっとゆっくり会える日にしよーよ!」


徹「嫌なら来るな」


あたしが不満をこぼすと徹も眉をしかめ、

あたしたちの視線が互いに交わることはなかった。


今は徹が遠く感じる。


徹にあたしの気持ちが伝わらない。


そんなもどかしさがあたしを支配していく。


理夜「行く」


徹「オレこっちだから、……じゃあな」


あたしが不満げに力なく答えると徹はあっさり

手を振りあたしに背中を向けた。


理夜「∑(°口°๑)ガビーン」


理夜「家までおくってくれないの?」


あたしが徹の背中に声をかけると徹は立ち止まり

不思議なものでも見るかのような視線を注ぐ。


徹「オレん家向こう、お前ん家はあっち」


そして、あたしたちの家が反対方向であることを

それを知るあたしに丁寧に説明し始めた。


徹「お前ん家行ってたらすっげぇ遠回りになるの

知ってんだろ? じゃあな…」


徹はニコニコ笑いながらそう言うと

今度は振り返ることなく歩いて行く。


徹の背中がすごく冷たく感じたあたしの胸に

なんとも言えない寂しさが押し寄せてきた。


そんなコトくらい知っているんだ……


ねぇ、徹……


優しくしてほしいと思うのはわがままなコトなの?


あたしの視界は涙でにじんでいった。







☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆







そして、次の日徹が消えた。








あたしはまだ『 山川 』と書かれた表札を出している

家の前で呆然としていた。


そこは昨日まで間違いなく徹の家だった場所だ。

でも、表札を何度確かめても『 真柴 』とは読めない。


何がどうなっているのか本当に分からなかった。


おばあさん「おや、どうしたの?」


通りすがりのおばあさんに声をかけられ

あたしはふと我に返る。


あたしは立ちあがりおばあさんのもとへ駆け寄った。


理夜「あの、ここって真柴さんのお家じゃないんですか?」


おばあさん「はて? ここはずっと山川さんのお家のはずだよ」


おばあさんはキョトンと小首を傾げている。


理夜「えっと……、じゃ、じゃあこの辺に真柴さんってお家は

ありませんか?」


おばあさん「真柴……? うーん、聞いたことがないねぇ。

ごめんね、役に立てなくて。早く学校行くんだよ」


そう言うとおばあさんは手押し車を押しながら

ゆったりとした足取りで歩き出す。


1人残されたあたしは全身から血の気がうせていくような

強い衝撃を受け、まるで抜け殻のようになっていた。





徹はいない?





徹は本当にどこにもいないの?





もう会えないってコト?








嘘だ!!








何かに突き動かされるようにあたしは走り出していた。


近くの商店街や公園、住宅街など思いつく限り

徹のいそうな場所を、手当り次第くまなく捜してまわった。




誰か知っているかもしれない。




徹がいなくなったなんて信じない。




あたしは必死だった。




でも、走っても走ってもゴールのない道を走っているような

そんななんとも言えない感覚だけがあたしの頭を駆け巡っていた。


不安でじっとしていられない。


あたしは泣きたくなる気持ちをグッとこらえて走り続けた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




気がつけば辺りは赤く染まり始めていた。


どこもかしこも捜しつくして疲れ果てたあたしは

夕暮れの街をとぼとぼと歩いている。


そこへ学校帰りの咲奈とばったり出くわした。


咲奈「理夜! 心配したんだからね?

突然いなくなっちゃうし、何があったの?」


咲奈の疑問はあたしの耳には入ってこなかった。

あたしの頭の中は徹のことでいっぱいいっぱいだったから。


理夜「咲奈、徹を知らない?

学校に徹の席もなかったし、どうしたんだろう……」


あたしがしょぼんとして元気なく聞くと

咲奈は目をぱちくりさせる。


咲奈「え? 徹って?」


理夜「もぉ、やだ! 咲奈ったらとぼけちゃって……

真柴 徹だよ、真柴 徹!!」


あたしは泣きそうな気持ちを必死にこらえ、

なんとか笑顔を作る。


咲奈「悪いけど本当に知らないのよ…」


ガ━l||l(ㅇㅁㅇ)l||l━ン


この反応を今日1日ずっと聞いてきたハズなのに

咲奈に言われると本当に目の前が真っ白、いや真っ黒?

もうなんだか分からないことになってきていた。


咲奈「……で、その真柴君って理夜のなんなの?

友達? 恋人?」


あたしはフラフラとした足取りでその場から立ち去る。


咲奈「ちょっ……、理夜ぁ!?」


背中に咲奈の戸惑う声を受けながらも

まだどこかにいるだろう徹を求めたあたしの足は止まらなかった。








罰があたったんだ……。








あたしいつも徹にわがままばっかり言ってたから……。








徹……!!







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







徹「その……オレお前のコトが好きなんだ……」


理夜「え……」


約1年前、学校の校舎裏で徹に告白されたときは

心臓が飛び出すかと思うほどびっくりしたんだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




理夜「ねぇ、ねぇ、徹! あれかわいーっ♪」


徹「しょーがねぇなぁ、買ってやるか」


理夜「ほんと!?」


それから徹とのデートのたびに

あたしは何かをおねだりしてたんだ……。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




理夜「ねぇーっ、いーでしょ?

チケットが手に入ったのよ♪」


徹「でも、その日は用事があるし……」


理夜「えーっ? ダメなの?」


徹「分かった。行くよ」


徹が優しいことを知っていたから

いつもあたしは強引にお願いしてたんだ……


徹が困ってるのも知ってたし、用事があるのも知ってたのに

あたしは徹に文句ばかり言ってた。


徹が怒らないからって自分のことしか考えてなくて

徹の気持ちをずっと無視していたのはあたしのほうだったんだ。


あたしの気持ちが伝わっていないような気がしたときは

徹が冷たくさえ感じていて


そんな徹が嫌だって思ってたからいなくなっちゃったのかな?




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




今 徹がいなくなって分かった……


あたしずっとわがまま言って徹を困らせていた。


嫌だ嫌だと思っていたのは徹のことなんかじゃなく

あたし自身のことであたしが嫌な女だったんだ!





でも、徹が好きだから

大好きだから……!!





徹、お願い!!


意地悪しないで出てきてよ!!!





あたしの頬を大粒の涙が伝って落ちていく。



今頃気づいても遅い。

徹はもういない。





徹……





徹!














理夜「ただいま……」


誰もいない家にあいさつすると

あたしは2階にある自分の部屋のベッドにダイブした。


涙はあとからあとからあふれてきて止まらない。


パサッ!


そんなあたしの顔に、帽子かけにかけていた帽子が

落ちてきた。


あたしはその帽子を手にとり見つめる。


理夜 (この帽子……

あのときかぶってた……)





☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆






あのとき……そう、あのとき。

今から約1年前。


あの日は学校が休みで咲奈と2人で公園を歩いてたんだ。


そのとき突然の強い風があたしのかぶっていた帽子を

さらっていった。


あたしと咲奈は慌てて帽子を追いかけていって

でも、なかなか追いつかなかった。


帽子との距離はひらくばかりでやきもきしていたとき

あたしの帽子をキャッチしてくれたのが徹だった。


理夜「……!」


長身の徹は軽やかにジャンプして帽子をつかむと

あたしに爽やかな笑顔を見せた。


徹「君の?」


理夜「はい!」


あたしも明るく笑顔で答えると、徹は「ほらよ」って、

あたしの頭に帽子をのせてくれた。








徹が同じ学校だって分かったのは次の日だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




理夜 (懐かしーっ、あれ以来かぶってなかった……)


あたしがその帽子につまった楽しい思い出を

思い出しているといつの間にか涙は止まっていた。


あたしはハッとなって時計を見る。

針は5時51分を指していた。


サッと制服を脱ぎ捨て私服に着替えると

あたしは部屋を飛び出していた。


考えるより早くあたしの体は動いていた。





いないかもしれない。





でも6時にいつもの所でって約束したもの。





徹がそう言ったんだもの。





いつもの場所 (初めて会った公園)で待ってるって!








約束の公園につくと

息をきらしながらあたしは辺りを見回してみる。


理夜 (いない……)


あたしは腕時計を見た。

針は6時15分を指していた。


ベンチに腰掛けるとあたしは

まるで電池が切れたかのようにガクッとうなだれる。





もう会えないのかな……。





なんだか、今日1日ずっと走り通しだったためか

まぶたが重たくなってきた。


あたしはウトウトと心地よい眠気に誘われながら

徹に思いをはせる。





会いたいよ徹……。


今すぐ会って声が聞きたい……。


思いっきり抱きしめてほしい……!


徹……





■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■






完全にまぶたが閉じ、あたしの目の前が真っ暗になる。


今日ずっと感じていた焦燥感はなく、

そこは安心感に満ちていた。


体がふわふわ浮いていくような不思議な感覚が

あたしを包んでいた。





カッ!











突然あたしのまぶたの奥の方で眩しい光を感じて

でも、体は動かなくてあたしは深い眠りに身をまかせていた。



?「……や……」



声がする。



?「……理夜」



あたしを呼んでる?



?「理夜、理夜!」



理夜「もーっ、誰?」


あたしはまだ眠い目をこすりながら体をおこした。


理夜「だ……れ……」


そして、声の主と目が合う。










徹「遅れたのは悪かったけどさ

こんなトコで寝てんなよな」


理夜「!!?」


徹!


徹がいた。

そこには徹がいた。


徹「ったく、熟睡しやがって……」


徹はあきれているけれど、

あたしの頭は今のこの状況についていってなかった。


少しずつ頭が冴えてきて、目の前にいるのが

ずっと捜していた徹なんだとやっとあたしの頭が認識してくれる。





徹!!





徹「全く……変な奴に襲われたって知らねぇぞ」


徹はぺちっとあたしのおでこを優しく小突いた。


徹「聞ーてんのか?」


何も返事をしないあたしの顔を徹がのぞき込む。

あたしはまだ信じられなくて、呆然としていた。


あたしはごしごしと目をこすってみる。


すると、やっぱりそこにいるのは本当に徹で

気持ちがやっと追いついたあたしは嬉しくて

その目は涙で潤んでいった。


徹「どーした理夜……」


徹がオロオロしているけれどあたしの涙は止まらない。

とうとう顔を手で覆いながら泣きじゃくっていた。


理夜「ごめ……なんでもな……」


それしか言葉にならなくて、

あんなに会いたかったハズの徹の顔さえも見れない。


徹は恥ずかしそうにポリポリと頭をかくと、

泣いているあたしを優しく抱きしめた。


理夜「!!」


不意の出来事にあたしは全然ついていけなくて

何がおこったのか分からない。


徹「ごめんな……オレ女の子と付き合うの初めてでさ。

理夜を傷つけるようなコトしてたかもしれねぇ」


徹が優しく語り始めた言葉は

あたしにはもったいないくらいの言葉で。


あたしの胸は徹の優しさでいっぱいになっていた。

徹の腕の中はポカポカあたたかくて、安心する。


徹「……けど、好きだから」


もう、涙は止まっていた。


あたしは、びっくりしたのと安心したのと、

嬉しいのがごちゃまぜになっていた。


バカだったのはあたしで、どーしてこんなに簡単なコトに

今まで気づかなかったんだろう。


徹がそばにいる。

それだけでよかったんだ。


それだけで幸せだったんだ。





☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆






徹「お前も覚えてたんだな」


徹はあたしが落ち着くのをゆっくりと待っていてくれたので

辺りはもう真っ暗だった。


夜の公園を2人仲良く肩を並べて歩いているとき

徹があたしをじっと見つめたまま話しかける。


理夜「え?何を?」


徹の言葉を理解しきれずにあたしは

徹にたずねた。


徹「なんだ、その服着てるからてっきり……」


理夜「?」


徹がしゃべっていることが全く分からず

あたしは途方に暮れている。


そんなあたしに徹は優しく微笑んだ。


徹「今日はオレたちがこの場所で初めて会ってから

1年目なんだぜ」


理夜「!!」





あたしは徹と初めて会ったときと同じ服、

同じ帽子をかぶっていた。


それは本当に偶然だったのか、必然だったのか

あたしには分からないけれど、


どうして徹が今日会いたいと言ったのか。

あたしはこのとき初めて理解したんだ。


あのとき文句を言ってしまった自分を恥じながら

改めて徹の優しさを噛みしめる。





徹はずっと優しくてあたしのコトも考えてくれていた。

あたしが勝手に怒って文句を言ってただけだったんだ。








それから、あたしたちの生活はもとに戻った。

徹がいる当たり前の生活。





結局どうして徹が消えたのか?

どうして徹はまた現れたのか?


それは今でも分からないんだけれど……





あの出来事のおかげで大切なことに気づけた。





徹がいてくれることが当たり前だと思っていたけれど

当たり前のことなんてこの世界にはなくて。





そばにいてくれる人がいるだけで本当に幸せなこと。





徹がそばにいてくれるだけでいい。

そこで笑っていてくれるだけで幸せなんだ。





だから、あたしも徹のそばでずっと笑っていよう。

そう思った。





理夜「徹、いつもありがと♪

あたしも徹が大好き!!」


あたしはとびっきりの笑顔を向ける。


徹は一瞬面食らってはいたけれど、

すごく嬉しそうに笑ってくれたんだ。











おしまい。








☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆


優しい人って怒らないからと

わがままばかり言ってしまっていませんか?


自分の気持ちは伝わって当然とか

思っていませんか?


相手は自分の思い通りに動くのが

当然とか思っていませんか?


素直な気持ちは人を傷つけません。


素直に「一緒にいてほしい」とか「寂しい」とか

「嬉しい」とか「ありがとう」とか「大好き」を

言えるほうがいい。


それを伝えずに遠回りに言っちゃうから

うまくいかないんですよね。


本音をかくして、自分をよく見せようとか

嫌われたくないからと発言した言葉のほうが

人をたくさん傷つけちゃうんです。


言わないほうが傷つけないからと何も言わないでいるのも

気持ちが分からないので相手にとっては辛かったりします。


素直な気持ちを伝えれば伝えるほど

人間関係って思っている以上にうまくいきますよ。


☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆


最後まで見て頂き、とっても幸せです♪

みんな、いつもありがとう(*´ω`*)

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