第43話、逆ループ。

 ──現代日本の推定三千万人の、異世界転生希望の、ヒキオタニートのお兄ちゃんたち、こんばんは☆


 作者による露骨なテコ入れにより、何と『ツンデレ気味の妹(しかも幼女)』というキャラ付けがなされたことでお馴染みの、『転生法』だよ♡


 今回『転生法わたし』が扱うのは、ズバリ、『逆ループ』なの。


 ……え、「逆ループって、何のことだ?」ですって?


 うふふ、それについてはこれからおいおい語っていくとして、まず初めは、実際に異世界転生を行うに当たって、ものすっごく重要なことを、改めて述べておきたいと思うの。




 一言で言うとね、お兄ちゃんたちったら、いくら念願の異世界転生をさせてもらえるからといって、初めて会ったばかりの『神様』や『女神様』なんかを、無条件に信じすぎていると思うのよ。




 例えば、「異世界を救うためには、そなたの転生が必要なのじゃ」とか言われて、何の疑問もなく、「俺は勇者として選ばれたんだ!」なんて喜び勇んで転生を承諾したところ、その『異世界を救うためには』、現代日本人の肉体や魂を、魔王や悪魔やドラゴンの類いに、生け贄として捧げなければならないパターンだって十分あり得るんだから、お兄ちゃんたちが転生した瞬間に、ドラゴンに丸呑みされてしまうかも知れないよ?


 つまり、女神様なんかに異世界転生をさせてあげるなんて言われた時には、有頂天になって二つ返事で承諾するんじゃなく、どういった形で異世界転生をさせられるのか、どのような使命を果たさなければならないか等々を、ちゃんと明確に知っておくべきだと思うの。




 そこで、異世界においてひどい目に遭いかねない一つの例として、『逆ループ』が挙げられるんだけど、まさしくこれぞ『異世界転生の仕組み』を悪用した、禁忌中の禁忌である、『死者の復活』であり、『不老不死の実現』でもあるの。




 ……まあ、『死者の復活』や『不老不死の実現』と言っても、あくまでも「擬似的な」という言葉フレーズが頭につくんだけどね。



【具体例】


 この『逆ループ』って、具体的にはどのような手順でやるかについては、『小説家になろう』様オンリーで公開中の、『なろうの女神が支配する』第37話『白日夢』を例に取り上げて、簡潔に箇条書きにて説明して参りましょう。


・不治の病に蝕まれて、余命いかばかりも無い、幼い少女がいるとしましょう。


・当然父親としては、悪魔に己の魂を売り払ってでも、助けたいと思っているの。


・そこにつけ込んできたのは、魔族最強の術者である、当代魔王陛下の実の妹、ご存じ『妖女ちゃん』だったりしてね。(本作第8話を参照)


・妖女ちゃんは望みを叶えてやる代償として、実は特殊な力を隠し持っていた父親の肉体を要求するの。


・この時点で娘はもちろん、父親も肉体を失ってしまうことになるけど、大丈夫、妖女ちゃんに不可能は無いのだから♡


・実は妖女ちゃんは、現代日本で言うところの、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってきている、いわゆる『集合的無意識』に人を強制的にアクセスさせることができるので、彼女の忠実なるしもべである、不老不死で不定形の暗黒生物『ショゴス』を二つに分裂させて、その片方を娘に変身させて、集合的無意識を介して娘自身の『記憶と知識』をインストールすれば、元々『自己』というものを持たないショゴスは、完全に健康体で不老不死の、娘そのものとなってしまうことになるの。


・とはいえ、娘だけを永遠に生きながらえさせても、あまり意味が無いので、父親のほうも『不老不死』にしたほうが好ましいとも思われるけど、彼自身の要望は、あくまでも娘を生きながらえさせることで、それはすでに叶えられているんだから、彼までも娘同様にわざわざショゴスを使ってまで、『完璧な不老不死』にする必要は無いんじゃないかな?


 何せ父親と娘との両方共をショゴスにしてしまったんじゃ、それはもう『ショゴスを使った人形劇』そのものでしかなくなるしね。


・それに、父親にとっては、娘は肉体も魂も娘自身で無くてはならないけど、(本当は人外のショゴスである)娘にとっては、父親に相当する人間が、本物の父親の『記憶と知識』さえ継承していれば、外見のほうは別にどうでもいいと思われるの。


・よって父親のほうに関しては、ショゴスではなく他の適当な男性の身体を利用して、いわゆる不老不死とすることにしたのだけど、具体的にはやはり異世界転生の仕組みを利用する形で、集合的無意識を介して父親の『記憶と知識』をインストールすることで、すっかり自分のことをショゴス少女の父親だと思い込ませるわけなの。


・……それでえ、これからどんどんと話はおぞましくなっていくんだけど(なぜか輝く笑顔の『転生法』ちゃん♡)、ショゴスのほうは年を取らないでしょう? だから必然的に父親との生活も、同じ月日の繰り返し──いわゆる『ループ』そのままにならなければならないんだけど、ただの人間である父親のほうは寿命があるから、ある程度使用年数が過ぎたら、新たな肉体と交換しなければならないの。


・そこで選ばれるのが、こういった集合的無意識を介しての、他者の『記憶と知識』のインストールといった、『異世界転生の仕組み』に慣れ親しんだ肉体の持ち主──そう、まさしく異世界転生の経験者が選ばれることになるの!


・『ループ』とか言うと、永遠に夏休みを経験する『あの作品』の影響か、「むしろラッキーじゃん♡」とか誤解している、ラノベ脳のお兄ちゃんたちも多いと思うけど、物理的に考えて、一人の人間が同じ夏休みを何万回も経験することなんか、肉体的にも精神的にも耐え得るはずがなく、一回夏休みを体験するごとに、別の『犠牲者』が必要になってくるわけ。


・つまり、すでに人外になってしまった、ショゴス少女が『永遠の夏休み』の世界の中で暮らループして行くには、無数の父親の『身代わり』が必要になってくるわけで、それには異世界転生経験者が選び出される可能性が非常に高くなるからして、もしも実際に異世界転生することがあった場合には、お兄ちゃんたちも十分に気をつけてね♡

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る