あっ

「これは……成長ではない……これが本来の――」「殊の外いい素材じゃないか。これ       は、ひょっとすると――」「私は、MCG機関の事務員になりまし          た~」「利害の一致と高度な政治的判断だ」「あのボロアパー            トって匡人さん以外の人はもう出ていっちゃってますし…             …」「私も持ってますよ」瞳さんは黄色の紐に括り付け    あっ       られた黄色のカードを懐から取り出して「親も居ません             でしたし、家も金もなく……物心付いて始めて覚えたの            がそれで、ずっとそのまま……」「そういう出自だと黄色           になる事が多いぜ?」天海は、本気で俺達に見つけられると思       っているのか「『いい天気ですね』」無意識の内に足を止めてしまった「暫くは東京支部に帰ってこないでくれ」奥の路地へ足が向いたのは本当に偶然「貴方には芯が無い。心に一本通った芯が無いんです。……私が、手本となりましょう」正義って何だろう「『分体をやる余裕もない』のでは無かったのですか?」「アレは嘘だ」「あの女は絶対ハラグロ」俺はそういう電子機器に対して変に忌避感を持っている。別に機械音痴だとか、そういう時代錯誤なタチではなかった筈だが……「帰還した奴らからの情報は無し……か、天海に止められたか?」「不自然じゃないか?」「天海は俺達に考えさせよ         うとしてんじゃね?」「『どうやって』とか、『何が出来               るか』とか?」「やっぱ、オメェの能力は危険                  だな」「意識とか認識にロック掛けられ                      んぞ」「でも、どうして天海って                       人はそんな嘘をついたんだろう                        」「正義とは別に『これだけは           あっ            ぜってぇ譲れねぇ』ってモン                        を持っとけ」「雨が、降ってきた                      な」「交渉部のREDに待機が義務付                      けられた」「今日は、何だか張り切っ                  て作りすぎちゃって……」「貴様も、自らを能              く能く考察する事だ。そこには、必ず、思いもよらぬ使いみ         ちがある」「普通、とめますよ」「貴様はREDでベルカンだろう」「自らを悪と自覚するからこそのベルカン。更生の余地がないからこそのRED」「社会貢献だ」「それは『鍵』。アナタは忘れていった」「生きろ」「貴方は、生きていた方が都合が良い」麻薬組織『MUL.APIN』「……天海ィ、俺が待機なのは何故だ?」「拘束しているとはいえ、伊秩半七をセーフハウ  スに置き去りというのも心許ないだろう? だが、移送しようにも、ちょ         いと込み入った事情があってな。見張りが必要なのだ」「ア             イツの能力には制限が多いんでな」天海は嘘をついた               「それは、正しいけど正しくないよ」「君には―                ―『愛』がないのか?」「人間なら誰しもが持つ       あっ       無償の愛だよ!」「俺達は『侵入者が来るかもしれ               ないが、出来れば殺すな』と言われてたんだ」「殺し             たがりが……!」「『合理的』だの、『無駄のない』だの         、君は勘違いしているよ」「人間が真に合理的な行動を取り続けるなん  て不可能だ。人間は、極めて非合理にこそ生きる獣なんだ。君は『合理』じゃなく『非合理』を理解し向き合わなきゃいけない。それが『真の合理』に繋がる」俺達が倒れた後は天海が丸っと収めたという事なのだろうか。愛。友愛だの、家族愛だの……香椎さんにあれこれ言われてから余計に分からなくなった「……わかんない」おかしいな、思い出せない。考えれば考えるほど頭には霞がかかってゆく「匡人さんとは違った意味で起伏がなく……」「最初『薄い』と感じました。六道鴉にも通ずる『薄さ』を……」人に関心を払って生きてこなかった。財布やカバンを盗られた人がどうなるかなんて一顧だにしてこなかった。彼等に憐憫を抱くのも今思えばこそであり当時は「無」であった「鹿刎番の時の情報は、生存者の記憶を情報部がサルベージした不完全なもので、全てを把握していたわけじゃない」「変異者が突如として失踪する件は把握していたが、未だ調査中であった」「私は反対、あれは絶対ハラグロ」「伴侶を選ぶなら夢は    どデカく。天海がオススメ」「言うに事欠いて天海て! 確かに、MCG        機関の創設から噛んでるぐらいだ、相応のコネは持ってるだろう   あっ   がよ!」「あれは傑物。第三次元宇宙の恩寵を一身に受けた存在」他       ならぬ瞳さんからの誘い「く、薬を……盛ったの、か……?」一体、何    処から……?「手癖の悪さは聞き及んでいるのでな。僭越ながら、自由を封じさせて貰ったよ」「何が目的なんだ……MCGとは、天海とは、瞳さんとは……貴様らは『蕃神が云々』と抜かしていたな」「私とて、コイツの指し示す縁に導かれて来ただけだ」「全ては盤上の出来事に過ぎぬからだ」何時見ても、あれこれと大きな問題に腐心している所には同情を抱いてしまう。あのモチベーションは何処から来るのだろう……『蕃神信仰は異能を知っている』『別地球αで行われた『実験』に志願する事で異能を会得した』「そういえば、大丈夫でしたか? 顔の方は」「顔?」「アジトの地下で俺が蹴飛ばして――」「顔を蹴飛ばされた記憶は無いけど……」龍が持っていた『探知機』「『十二次元宇宙論』って、こっちの地球にも  あるの!?」「『十二次元宇宙論』って向こうでは『纏骸皇』も支持して         るって説だよ!」『探知機』とは別地球αの使者に授けられ             た『纏骸皇』の発明、それを蕃神信仰が所持している               事など合ってはならない。MCGに持ち込んだデー       あっ       タベースを参照していた「ここは『夢』」「それ               は君のもの。どうか忘れないで、それは常に君と共に             ――」……俺は怒っていたのか? あの時、天海に瞳さんを         殺された時は。二回目だから「思ったより」……思ったより悲しく  ――「それが貴様の本音だ」「正しさが形を得ることの出来ない世の中で、貴様の様な紛い物のゴミクズがのうのうと生きている事実には吐き気を覚える」「……下手だなぁ、天海」意味のないことなんて、お前はしないからな。嗚呼、しかし、見れば見るほど……やはり、似てるなぁ……「《還元》?」「私の目には人とは違う景色が映ってるの。彼女たちは死んでたの」これは――脱皮。この【短剣】は俺なんだ「これでまた一歩、世界は漸進した!」「なぜ、一番危険な右手を残した?」「それが縁の嚮導だからだ」「私を殺そうと考えたな? いや、いいさ。だが、保険を掛けておくべきだな」「[體名 ("新条正人")] [約款の追加] [Lisa_1("Lisa Fernandez"の許可なくば、生命活動を維持する以上の能動的行動を禁ず)]」「[體名("新条正人")] [約款の削除] [3]」俺の脳内に燻っていた霞を、一部、晴らして    しまうほどの――「……あっ……」俺は言われた通りに指定された座標        を《掴み》、ジェジレㇿと六道鴉と共に砂浜へと降り立った「――   あっ   現在、第三次元宇宙は緩やかに破滅へと向かっている。真綿で首を絞       めるが如き閉塞の未来へと……我々は真剣な正義感から人類を救済せん    としているのだ!」「否! 人類だけではない! 地球、太陽系、銀河系、第三次元宇宙、更には平行世界線に至る知的生命体乃至は未観測の地球外知的生命体、果ては未来永劫に渡るその存在可能性ごと救わんというのだ! その為に――」『我々は神話を科学するものである!』「それだけの可能性が《異能》にはある」アア……産まれる……「失敗作K1とK2」「――お前、彼奴らをどう見る?」「〝格〟が違う……いや――〝次元〟が違う……」「そうだ。〝次元〟が違う。失敗作とは、謂わばこんがらがった運命の赤い糸の『巨大な結び目』」「更には、天に投影された別地球――同次元平行世界線上の地球も影響している」「始まるぞ! 神楽舞だ!」「これ程まで高位に到った存在が二つも暴れれば、第三次元宇宙が危うい! 見ろ! 間もなく『介入』が始まるぞ!」「来た! 〝Ascension〟の時が!」気付いた時には其処に" "がいた。[鬮泌錐("譁ー譚。豁」莠コ")][體名("新条正人")][蜻ス繧帝°縺ケ][命を運べ][荳也阜繧貞ョ檎オ舌&縺帙m][世界を完結させろ]「投影されているのか!? 化身か!?」人が人である以上は……!「容易く感化されてるんじゃない!」「何もかも、掌の上って事かよ……」デジャヴ。黒い短剣だけが俺の正当性の証明「―命の危機にならないと解けないようなロック  をしかけていた―だなんて」―別地球βに関する基礎知識―「以前は、時         間を忘れるほど長考する事なんて無かったんですが……途中             で霞が掛かる所為で。しかし、今はそれが無い」「で               も、MCGではアレが『正義』なんデスね」「違う                」「ただ、認められているだけ……特別な権限       あっ       があり、罪に問われる事がないだけ……MCGは……             『正義』では、ないよ」「じゃあ――」「『正義』は四             藏サンなの?」「……それも違う」俺はベルカンだ。昔も今         も変わらずに「必要だったんだ。この寄る瀬なき宇宙で生きる為には、  何らかの指針が……人は何かに自分を縛り付けないと生きていけないから……見失ってしまうから……世界ばかりか、自分すらも……」「灰崎の奴にさ、言っといてくれない? 『もうすぐだから報酬を用意しとけ』ってさ」「報酬?」「口頭でバレないように頼むよ」『蕃神信仰と、それにまつわる天海の不可解な言動』ちょっと待て、俺とコイツは――「初対面の筈?」「もう、二回ほど前の話らしいから」「被驗體・番號玖――だから九蟠にしたのよ」俺という無銘が【四藏匡人】となった瞬間は覚えている。けれど、そこに至る経緯もどのようにして名付けられたのかも全く思い出せない「私達クローンはMCGに所属した時点で『使命』の一部を思い出す。『認識票』を介して『間者』としての『使命』を」圧倒的優位にも関わらず、ガキは不意打ちせずに対話を試みている「俺を選んだ理由は?」「《異能》と出自や」「蕃神信仰と、繋がりあるやろ?」「《異能》には次元を超越し得る可能性が秘められとる」「貴様ら二人の力量を見込んで任命した」「なんて事を――!」「握手をするのか? しないのか?」「レユニオン島に居たと言ったな。そしてインド洋上で救助されたとも」「俺は『切り抜けた』と言ったが……あれは嘘なんだ。俺は完膚なきまでに負けた」「オメェも見た……のか?」「見ましたよ」「ああ、そうか……分かったよ」「彼なら昼食の後、法倉螺湾を連れて何処かへ行く姿を見かけたような」「建設的な話をしよう。君たちと僕たちが歩むべき輝かしい未来の話を」案の定というべきか、俺の能力に対しても既に備えは万全の様子……全部、知ってやがる「今日は返事を聞きにきた」そんな事の為に人工島を襲撃をしたというのか? 何か、別の目的があるのか?「精神干渉を試みないのは何故         だ?」「上の人たちが言うには無駄、無意味らしいんだ」               「君が自分の意志で選択する事が重要なんだっ                  てさ」「灰崎の制服の中にUSBメモリと                      MCGにマークされてない携帯端                       末がある……」「灰崎の亡き今                        、中身は君に託す……」「           あっ            操作は……」「それは大丈夫                        です。俺、やっぱり機械音痴じゃ                      ないみたいですから」「にいちゃん                      がそないな強行的な手段に出るとはなぁ                  」「蕃神信仰の思い違いについて。一つ、『鈍色              の鍵』は現象のイメージとちゃう。二つ、第四次元宇宙だけ         を見てしまっている。三つ、そもそも人間は上位次元に到達できひん」「『鈍色の鍵』は現象じゃなく実在する。『天命の書板』。『天命の書板』とは即ち第四次元宇宙じゃなく第十二次元宇宙そのものなんや。存在座標は十二に連なる零であり無限……」つまりは、(0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0)であり、(∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞, ∞)「第三次元に投影した場合のイメージ」「『天命の書板』を得る事が現代魔術聯盟の当座の目的」「それとMCG機関を襲う事になんの因果関係が?」「《異能》は使い手のイメージを媒介して世界そのものへ干渉できる」「『天命の書板』は?」「代魔術聯盟の長である『真なるアーシプ』は、まだ上位者がこの第三次元宇宙を見捨ててへんかった神代の頃から、約5000年以上にわたって現在も生き続けとるからや」彼女の【靈驗】なら何の問題なく抜け出されてしまう。しかし、縁の嚮導はそうならなかった「六道鴉のおかげだよ。彼女に教えてもらったのを思い出したんだ。恐らくは二巡前の時に」クローンに関するものは一切残されていなかった「ポーン」という例の音がジェジレㇿの左掌上から鳴り響いた『異能の根源・干渉力導出量を決定づける要因』上手く読む事ができない。名簿には藤莉佳子の名も乗っていた「――ああ、そうなのか」アレは[認識阻害]越しにかけられた[精神干渉]――つまり、インド洋で目撃した『上位者』なる存在の欺瞞は明らかなものとなった。俺の行動はいくらか誘導されていたのか。

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