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《人事ファイル:ec45-JP-1182》

レベル2資料

作成日:B32年6月15日


氏名:???

性別:女

年齢:27~34

住居:不定


分類クラス・コード:RED

所属:未定


備考1:東京支部/交渉部 岸刃蔵きし じんぞう

 蕃神信仰の拠点を荒らしていた人物。

 異能と武装励起を操る事から蕃神信仰に属する者との見方が強いが、今の所、詳細は不明である。



    *



【人亊名簿(纒骸):貳仟佰玖什肆ニセンヒャクキュウジュウシ - 軍極秘】


いみなAlphonse アルフォンス Louis ・ ルイ ・ Constantコンスタン

あざな:レヴィ

性:女

齢:貳什肆ニジュウシ


ぞく:近衛旅団 第三歩兵小隊 小隊長

級:少尉


淨明正直じょうみょうせいちょく肆句シノク- 明階めいかい

むくろ:大杖

めいげい/ずい/ちりばむ/非贓物ひぞうぶつ

ごう異端者の大杖ヘレティックス・スタッフ

ずい中道の秘術オカルティズム


補:什肆ジュウシ

 纏骸暦てんがいれき 貳仟參什ニセンサンジュウ年 肆月陸日シゲツムイカ

 尊暦そんれき 貳仟陸佰玖什ニセンロッピャクキュウジュウ年 參月肆日サンゲツヨッカ


 レヴィ少尉

 右ノ者ヲ近衛旅団第三歩兵小隊小隊長ニ任ズ

 (中略)

 少尉ノ位ヲ与へヨ


 御名御璽ぎょめいぎょじ


 內閣總理大臣 中山愰なかやま あきら

 國務大臣 鳩久王やすひさおう

 ~(以下略)~



    *



【人亊名簿(纒骸):貳仟貳佰貳什伍ニセンニヒャクニジュウゴ - 極秘】


姓:草部くさかべ

いみな:不明

あざな萌禍もえか

性:女

齢:貳什參ニジュウサン


ぞく:近衛旅団 第三歩兵小隊 第二分隊長

級:上級曹長


淨明正直じょうみょうせいちょく貳句ニノク - 権正階ごんせいかい

むくろ朱漆打刀拵しゅうるしうちがたなこしらえ

 鞘は腰元。刀は右手、或いは両手で保持する。三尺。

めいこころ/朱熱せきねつ

ごう朱仔虎あかとらのこ

ずい:灼熱


補:參什伍サンジュウゴ

 見込みは皆無。無能だけならともかく、纏骸皇より賜りしむくろを、よく切れて燃える絡繰からくりナイフ程度にしか認識していない。

 前線に送り込んで擦り潰れるまで戦わせるか、試し切りに使う他、使いみちが思いつかない。兄が有能でなければ、とっくにそうなっていた事だろう。

 ……しかし、ここからは少しばかり俗信的な話になってしまうが、彼女には論理では説明のつかない「天運」が付いている様に思える。普段は無能な彼女だが、要所に至って、急に彼女の都合の良いように物事が運び出すのだ。勿論、私が纏骸皇を思うばかりに作り出した幻想、思い過ごしの類かも知れんが……。

 北富士纏骸学舎 西美樂にし みら(教官)



    *



こんなところに梵天王! その5 著・神辺梵天王かんなべ ブラフマー



◆纏骸皇とは


 とある近衛旅団員、曰く――「汎ゆる宗教、人種、民族、国家の上位に位置し全てを統べる為、約二千年前に『むくろ』を纏った偉大なる『始まりの纏骸者てんがいしゃ』! 即ち至尊である!」


 要約すると、『名称なき世界宗教』の信仰を一身に受ける「宗主」といった所でしょうか。その権能は極めて強く、遍く国家に干渉する様は、我々の目に独裁の様にも映りますが、「そうではない」のだそうで……。(次項解説)


 始まりの纏骸者と呼ばれている様に彼自身も纏骸者の様です。その霊験れいげんによって不老不死を体現しました(?)。また、彼は主観的な記述を除いて「中性」として扱われます。誇張でなく、見る者によって外見が変化するからです。性別は勿論の事、犬や猫といった動物や、植物、海や山であったと言う者までいるそうです。


 実態は不明、存在もあやふやですが、とにかく、すごい影響力を持つ信仰対象なのです。


★ワンポイント・アドヴァイス!

 むやみに纏骸皇を批判してはいけません。死にます。



◆纏骸ノ皇、君臨スレドモ統治セズ


 世界宗主たる纏骸皇の下す決定は、神秘的、宗教的な要素を含む為に不可侵であり、事実上、別地球αに於ける全ての事象をほしいままにできますが、その権能を積極的にふるう事は稀です。


 基本的には、国家間に於ける争いごと(戦争、領土問題、経済摩擦)が起こった時、当事国から仲裁を求められた場合にのみ動きます。それ以外は、象徴としての君臨を認める者に、自由(信仰の自由を含む諸々の人権)を保証するだけです。

 ああ、後、むくろに刻まれた『めいを翻訳する』という仕事もありました。


 当然、長い歴史の中には従わぬ国もありました。しかし、反目するより形だけでも従っておいた方が得だと気付き、なあなあに敬意を示していたら、民も政も代替わりするに連れて、本物の信仰心に変化してしまった……という感じでしょうか。

 治世に宗教を利用しているつもりで、逆に呑まれた例は我々の地球でもありますが、絶対的に違う点として『骸』の存在が挙げられます。

 現実に顕現した『奇跡の実感』は、目撃者の心に否定しきれない『畏怖』を呼び起こします。その影響は多大にして不可避。結果、比較的最近になってから異能を観測した我々とは、違う文化、信仰が形成されたのでしょう。


 これは余談ですが、向こうの日本(細戈千足国くわしほこちだるくに、もしくは豊葦原瑞穂国とよあしはらみずほのくに大日本おおやまと)も、天皇を国民統合の象徴とする立憲君主制を布いていますが、その名は纏骸皇の「てん」の音と「皇」の字を避けたのか(避諱?)、『尊王』と呼ばれているそうです。



◆『纏骸皇=キリスト同一説』は謬説


 ここまでに気付いた方、或いは既に見出しの謬説を聞いた方の頭にはあるかもしれませんが、纏骸皇とは、我々の地球で言う所の「イエス・キリスト」に近い存在です。

 二千年ほど前に纏骸者となって以降、新たなる暦を数え、又、信仰の対象となった点で一致しています。また、別地球αの伝承によると、纏骸皇は行く先々で布教がてらに“奇跡”を行ったらしいのですが、その内容もキリストの奇跡に似通っているのです。


・水を酒に変える ・食べものを増やす

・病や怪我を癒す ・悪霊を祓う


 という風に。

 こうまで見事に一致するものですから、『空に投影された別地球は、隣り合う同次元平行世界線上、つまりパラレルワールドの風景だ!』という流行りの言説に乗っかり、容易な『纏骸皇=キリスト同一説』を唱える者がMCG内に多く見られます。


 ……嘆かわしい……嘆かわしいですよ!


 上記の列挙は結論ありきで意図的に抜き出された箇条書きのペテン!

 相違点も相応に存在します!

 これから、お話する事をよーく聞いて下さいね!


 ――コホン! ……数多ある相違点の中から大きなものを端的に抜き出すと、それは「罪」と「死生観」の二言に集約されます。


 キリスト教倫理観には「原罪」という概念があります。これはアダムとイブの犯した「罪」を我々も引き継いでいるという考えです。しかし、纏骸皇の言葉や周辺の思想にそういったものはみられません。それどころか、特定の教義自体が存在していないのです。現代日本の緩い仏教、神道に近い感覚なのでしょうか……? とにかく、「罪」はありません。

 また、纏骸皇は死者の復活に否定的です。キリストは死者を蘇らせたり、自らも死んでは復活し、もう一度死んで再臨を予告したりしていますが、纏骸皇は一度も死ぬことなく君臨し、今では積極的な采配は振るわないまでも、権威、神秘の象徴として生き永らえています。



◆まとめ


 歴史に於ける役割、登場の仕方は「イエス・キリスト」に似通っている纏骸皇ですが、そっくり入れ替わっている訳ではありません!


 今後とも、別地球αに於ける文化、風俗を調査次第、報告して行きます!

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