第79話 ヨセフ 奴隷として売りとばされる

ヨセフを憎みながらも、兄達は仕事をします。羊の群れを牧草地に連れて行くのです。シェケムというカナン人の住む町に10人で、出発!


 シェケム――そこは因縁ある町。ヤコブの娘ディナがカナン人に憧れて……犯された町。田舎者の娘が東京で危ない目に遇うのと同じです。ディナと母親共通の兄、シメオンとレビはぶちギレて妹の復讐をしました。妹を犯した男だけでなく、家族も皆殺し&羊や牛を略奪します。過去の話。


 ヤコブは気が気ではありません。報復だってあり得ます。あろうことか、ヨセフを呼んで兄達の様子を見に行くよう言いつけます。


 17才のヨセフは父親に従い、80キロを徒歩で追いかけます。「ダルっ、行きたくねぇ」とはならないいい子です。しかも父親にもらった長い縞柄の衣を着てルンルン行くんです。


 シェケムに着きました。兄たちは更に北に向かっていました。「どこまで行くねん‼」とは突っ込まず22キロ先のドタンでやっと追い付きます。


 5日ぶりに会う兄達を見て、ヨセフは安心したに違いありません。「よく、ここまで一人で来たな」と労いの言葉を期待したに違いありません。

「兄たちはヨセフを見かけると、たちまち憎しみを掻き立てられた」創世記37:18 「見ろ、あの夢見る方がやって来るぞ。さああいつを殺してどこかの貯水穴に投げ込んでやろう。――獰猛な野獣に食い殺されたと言えばいい。あいつの夢がどうなるのか見てやろう」口々に言う兄たち。


 それを聞いた長男ルベンは、「殺してはいけない。荒野の貯水穴に投げ込むだけで、命を奪うのはやめよう!」とたしなめます。もし、ヨセフが死んだら、血の罪を負うのは最年長の自分だと分かっていたからです。後で救いだすつもりでした。創世記37:19~22


――兄たちに笑顔で近づくヨセフ。ハグは?


兄たちはヨセフに襲いかかり、長い衣を剥ぎとり、貯水穴に引いて行き、投げ込みました。幸い水はなく、ヨセフは溺れ死にを免れました。


 けど、けど、ショックだったよね。穴から出すように哀願しても無視されたヨセフ。空を見ながら泣いたよね。兄たちの声が遠ざかります。


 意地悪な兄たちは、近くで食事をとります。ルベンが席を外すとまたヨセフを殺す計画を立てます。どんだけ~‼今度はユダがこう提案しました。


「殺すのはやめて、ここを通るイシュマエル人の隊商に奴隷として売り飛ばそう」創世記37:29


お金ですか?お金欲しいのですか?罪が重なりますよ。20シェケルでヨセフを売り飛ばします。


 うーんと、一人2シェケルですね。ちょっとしたおこづかいです。戻ってきたルベンはヨセフがいなくなったのを知って嘆きますが、また更に罪を重ねます。


 剥ぎ取った長い衣をやぎの血に浸すのです。野獣が殺した事にすれば父親ヤコブからの処罰はありません。ろくでもない兄たちです。恥を知れ。


 家に着くと、ルベンはヤコブにヨセフの血に染まった衣を見せました。

「あー、あの子の服だ!獰猛な野獣に襲われ、切り裂かれたのだ」と何日も泣きます。誰の慰めも受け入れずに何日も泣きます。


 それを見た兄たちはどう思ったのでしょうか?聖書には記されていません。反省した?もっとヨセフが許せなくなった?良心の呵責で苦しんだ?


 ヨセフはどうでしょう?エジプトに向かう隊商の奴隷としてラクダの後ろを歩かされています。

「もう父親に2度と会えない、弟のベニヤミンにも会えない……家に帰りたい。家に帰りたい」と泣いたと思います。


 しかし、エジプトに連れていかれた後も更なる悲劇が待っています。ヨセフがんばれー。

 

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