第58話 クレイジーロケット

 ダンボールの170サイズほどある箱をバラけて、中身を取り出すメシヤ。

教室内の生徒たちの目線が一点に集中した。

「うわーーー!!!」

大歓声が巻き起こった。


「あのー、メシヤ。一応聞いとくけど、これは何?」

「よくぞ聞いてくれました。これは、スペースセンター・日本基地だよ」

「こんなふざけた宇宙基地なら、星間交遊も断絶しそうね」

(メシヤさま、あなたは地球で納まる器ではありませんわ)

 レマは真剣なまなざしで二人のやりとりを見つめる。


 たまねぎ頭をした塔が9つ、集まっている。中央にはそびえ建つ主聖堂がある。メシヤはそれを指さした。

「こいつが宇宙ロケットさ」

「ロケットって・・・・・・建物じゃないの」

「発射台も無いな」

 マリアとイエスがごく当たり前の感想を述べた。

「こいつがこのまま飛ぶんだよ」

「クレイジーだわ。どういう原理で飛ぶのよ」

「それは・・・・・・」

 メシヤは困ったように一瞬つまり、レオンの方にそっと目線を向けた。レオンがその目線を捉えると、首を左右に振った。


「ごめん、まだ考えてない」

「なによ、絵に描いたお餅ならぬ、手を抜いたおもちゃね」

 一同がぽかーんとしている。

「マリアもダジャレ言うんだネ!」

「ちっ、違うわよ! ちょっとこいつのが感染うつっただけよ!」

 マリアの唐突なボケに助けられたメシヤ。まだロケットの動力については秘密にしておくようにレオンに言われている。


 そのレオンのミニチュア作品だが、パルテノン神殿のようなエンタブラチュアが目に入った。古代アトランティス文明の想像図などでも登場するそうだ。ただ、今回はあまり目立たないように、神殿だけでとどまった。メシヤはそれを見て微笑を浮かべた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る