第20話 君はTOMBOY
聖ヨハネ北伊勢教会では日曜礼拝が行われている。宗派が違うので裁紅谷姉妹は欠席だが、メシヤ・イエス・マリアの姿があった。神父はメシヤに話があるようだった。奥の控室で向かい合う二人。
「メシヤくん、マリアから聞きましたよ。お手柄だったようですね」
どうやら、夢賀渓での一件のことらしい。
「すみません、勝手に剣を持ち出して・・・・・・」
メシヤはバツが悪そうに詫びる。
「いいのですよ。あの女神像の剣には古くからの言い伝えがありまして、剣を抜いた者こそ、正当な持ち主の証なのです」
「でも、僕はただの食堂のせがれですし、好奇心で持ち出そうとしただけなんです」
メシヤがめずらしく自分を卑下した。
「メシヤくん―――」
「はい」
「あなたの出自がどうであれ、メシヤくんの意志で多くの子供たちの命を救ったことは事実です。剣を持ち出したのはいたずらごころだったのかも知れませんが、
「僕はあのとき無我夢中で・・・・・・。でも、子供たちが無事でホッとしました」
「そうやって天狗にならないところがあなたの良さです。マリアも褒めていましたよ」
「ちょ、ちょっと、神父様!」
立ち聞きしていたマリアとイエスがなだれこんで来た。
「メシヤはおだてるとドンドン変な方向へ突っ走ります!」
自分の本心を照れ隠ししたいのか、話題をすり替えるマリア。
「マリア、あなたも素直じゃありませんね。メシヤくんの前だと―――」
「わーーー!!」
神父の言葉に明らかにうろたえ、大きな声でかぶせるマリア。
「わわ、私はこいつの教育係みたいなものです。厳しくて当然ですよ」
「あなたもここへ住み込みを始めたときは、かなりのじゃじゃ馬でしたよ」
「へー」「ほう」
メシヤとイエスが興味深そうに声を漏らす。
「私も神父様に導いていただいて、まっとうな道を歩めるようになりました。そんな私から見てもメシヤの異常行動は目に余ります」
マリアには複雑な家庭の事情がありそうだったが、いまはそんな様子を微塵も感じさせなかった。メシヤとイエスもある程度、事情は知っているようだが、深くは聞かなかった。
「こんな時代に必要なのは、メシヤくんのような
神父は完全なメシヤ寄りなので、マリアは白旗を揚げて黙ってしまった。
場が静まったところで、神父は本題に入る。
「メシヤくん、あなたは鳳雛剣と臥龍剣を手に入れました。ですが、この三重県にはまだ隠された神宝があるのです。それは――」
黙って神父の次の言葉を待つ一同。
「聖杯と石板です」
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