第7話 金と銀

部活動を終え、主戦場フィールドをキッチンへ移すメシヤ。

 「カツ丼頼む」

 早退したイエスが再び、めし屋フジワラで合流した。

「あいよ! とんかつは豚の晴れ舞台や!」

 豚の一番うまい食べ方は揚げることだとメシヤは常々思っている。

「エリとレマも食べるかい?」

メシヤが自分の得意料理を勧めると

「ロー!(駄目!) 豚肉はイスラエルでは禁忌なんだヨ!」

 エリが怒ったような表情で拒絶した。

「あー、エリもレマもユダヤ人だもんなあ。豚がタブーって訳か」


「!」

 メシヤの発言でエリのネタ帳にまたひとつ項目が追加された。

 マナに揚げておいてもらったとんかつを手にし、メシヤが親子鍋を火にかけたその時、事件は起きた。


「メシヤさま、おズボンが……」

 レマが異変に気づいた。

「へ?」

 メシヤはズボンの両サイドにインサイドパンツホルスターを取り付け、柄を挿していた。左腰の柄が赤いようなピンクのような光を放っていることに遅れて気づいた。

 柄は二本あるが、光っていたのは金の装飾をしたほうだった。


 メシヤが料理を中断し、金の柄を右手で持つと、光は消えてしまった。

「あれ~?」

 火は付けっぱなしで、左手に持ち替えると、また柄の先が赤く灯り、光が強くなった。そして、弱火のときは小さく、中火・強火と火の勢いを強くするにつれ、光が大きくなった。強火でちょっとした脇差くらいのネオン光のような炎のような複雑な形の剣になった。


「そういうことかあ!」

 メシヤは何かを思いついたようで、もう一方の銀色の装飾の柄を右手に持った。


「たぶん、こっちだ」

それからシンクに移動して、グースネックから水を出すと、銀の柄が青のような水色のような直線的な光を放った。これも金色の柄と同じく、水の勢いに呼応して光が変化するようだ。確認のため銀の柄を左手に持ち替えると、メシヤの思惑通り蒼い光は消えてしまった。


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