1226.称号を得た、報酬。

 俺は、特殊スライムを出現させる儀式を無事終了し、『スライム聖者』の『称号』を得るとともに、この『スライム神殿 月の院』の主にもなった。


「マスター、これをお受け取り下さい。あなた様に引き継がれるべきものです」


 俺の『絆』メンバーとなった『スライマン』のスラリーがそう言って、大きな宝箱を出した。


 開けてみると、その中には四つの箱型装置が入っていた。


 『波動鑑定』すると……『名称』が『幻惑結界の基柱』となっていて、『究極級アルティメット』階級のアイテムだった。

 四つで一セットになっている。


 名前からしても、ここの幻惑結界を発生させている装置と同じもののようだ。


 これを使えば、新たに同じような場所が作れるということだろう。


 これはありがたい。

 『波動複写』でコピーができるから、いろんな場所に結界を張ることができる。


 もっとも人族の街では使いにくいから、大森林や不可侵領域などで、部外者が立ち入らないようにするために使うという感じになるだろう。


 その装置は、三つモードがあって選べるようだ。


 『偽装映像モード』は、映像情報だけ誤魔化して実際と違うものを見せるというカムフラージュ機能だ。

 目に見える状態が偽装されているだけで、普通に出入りができるようだ。


 『幻惑モード』は、幻惑現象を発生させ、惑わせて侵入して来れないようにする機能だ。

 この場所に使われているもので、幻惑状態になり普通には侵入できない。


 『物理結界モード』は、物理的な結界を張って、侵入不可能にする機能である。

 一番強力な機能であるが……逆に気づかれやすいというデメリットがあるようだ。


 『偽装映像モード』は、使う場所によってはかなり便利だと思う。

 大森林のみんなが集まっている広場などに使えば、上空から部外者に発見されることもないだろう。

 それでいて中の仲間たちは、効果範囲への出入りは普通にできる状態だからね。


「マスター、これもお受け取り下さい」


 スラリーがそう言って渡したのは、長い杖だ。


 『波動鑑定』によれば……『名称』が『聖杖 スライムの杖』となっている。


 これも『究極級アルティメット』階級だ。


 詳細表示を確認すると……この杖には、様々な機能がある。

 『スライム』と会話ができたり、物理反射の結界を張れたり、傷の回復ができる。


 聖属性の武器としての機能があり、打撃武器として悪魔に対し特効があるようだ。


 これは、なかなか使える。


 こいつで、悪魔をタコ殴りにしてやればいいわけだ!

 仲間たちに使わせてあげれば、普通に悪魔と渡り合えそうだ。



 俺は、『スライマン』のスラリーとスラミティーちゃんにも、自由にしてくれて構わないという話をした。

 だが、二人はできれば俺に同行したいという希望だった。


 ずっと迷宮中層の『スライムフロア』にいて、不満があるわけではないが、少し飽きているとのことだった。


 そこで、俺付きの執事とメイドということで、クランメンバーに入れることにした。


 まぁ執事とメイドといっても、何かやることがあるわけではないので、基本は自由行動だ。

 好きなときに『スライムフロア』や『スライム神殿 月の院』に行ってもらえばいいと思っている。


 俺は、二人のステータスを改めて確認させてもらった。


 『波動鑑定』によれば……二人ともレベルは55だった。

 かなり高い。


 『種族固有スキル』は、通常の『スライム』が持っている『分解』『吸収』『種族通信』『増殖』『体内保存』『変形』を引き継いでいる。

 『スライマン』独自のものは、『吸収体百面相』だ。

 吸収した人の姿になることができる優れた能力で、その人の生前のステータスが、偽装ステータスとして自動的に表示されるようだ。


 これなら『鑑定』スキルを持った人に出会っても、よほどスキルレベルが高い人でない限り、見破られる事はないだろう。


 『通常スキル』もかなりいろいろ持っているが、俺が所持していないものとしては『拘束バインド』があった。


 特殊状態異常の一つで、対象を動けないように拘束できる。


 前に倒したカエル魔物のキングに、『拘束バインド』を帯びた超音波攻撃を受け、『拘束バインド耐性』は獲得していたが、『拘束バインド』自体は持っていなかったので、取得できて良かった。

 もちろん俺のスキルとしてコピーして、『共有スキル』にセットするつもりだ。


 これは人に対して使うには、『状態異常付与』の『麻痺』とあまり変わらないが、ゴーレムなどに対しても使えるので、その点では優れている。



 一通りの確認も終わったので、一旦解散することにした。


 スラリーとスラミティーちゃんは、一旦『スライムフロア』に戻ってから、『ツリーハウスクラン』に来ることになった。


 俺は、今誕生したばかりの『オリハルコンスライム』百八体を連れて、『セイチョウ迷宮』のダンジョンマスタールームに転移で移動した。


 この子たちには、『セイチョウ迷宮』の防衛戦力になってもらおうと思っている。


 もともと『セイチョウ迷宮』を守る方法について話し合っているときに、最後のダンジョンマスターだった『スライム聖女』の言い残した話として、特殊な『スライム』や『スライムの神殿』について知ったわけだからね。


 冒険者たちに最終フロアと思われているフロアのすぐ下のフロア……シークレットフロア第一層を、この子たちの待機するフロアにしようと思っている。


 悪魔に人造迷宮であることが知られているので、再度襲撃される可能性があるが、その場合の防衛戦力になってもらうのだ。


 時間を稼いでもらえば、俺が駆けつけることができる。


 迷宮管理システムのイチョウちゃんと打ち合わせをし、この子たちのことを任せることにした。


 この迷宮の中にいる魔物を倒す実戦訓練も適宜やってもらうつもりだ。


 『オリハルコンスライム』は『アイアンスライム』と同じように、レベル1で固定なので、レベル上げをする必要はない。

 だが、経験値自体は入るので、後で誰かにその経験値を譲るためにも、レベル上げをするつもりで戦わせることは有効だ。

 常にレベルが1なので、レベル補正で経験値も大きく入る。

 『セイチョウ迷宮』で出現するレベル30程度の魔物相手でも、常に大きな経験値を得られるのである。


 それにスキルレベルは、1で固定ではなく通常通り上がるらしいので、スキルレベルを上げるという意味でも、戦闘訓練はした方が良いのである。


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