1214.解呪できる、凄い技コマンド。
「アクアリアさん、実は、このリリイは『死霊使い』で、チャッピーは『猛獣使い』なんです。最近『使い人』スキルが発現したんですよ」
俺は、仲間になると言ってくれた『水使い』のアクアリアさんに、改めてリリイとチャッピーを紹介した。
「え、こんな小さいのに……。でも、この子たちは、迷宮にも入っているし……小さくても強いんでしょうね」
「この子たちも縁があって仲間になったのですが、自分の身を守れるように強くなってもらったんです。
まさか『使い人』スキルが発現するとは思いませんでしたけどね。
『使い人』スキルが発現している子たちは、未成年が多いんです。今クランのメンバーとして一緒にいる『雷使い』の子は、六歳ですし」
「『雷使い』……六歳……そうなんですか……」
アクアリアさんは、驚いて苦笑いしている。
「私の理解が間違いでなければ……『水使い』というスキルは……技コマンドとして様々な『水魔法』が使えるのだと思いますが……?」
「はい。そうみたいです。
『通常スキル』としての『水魔法』を技コマンドとして、いくつか使えます。ただ私の場合は、なぜか回復系のものばかりで、攻撃魔法がないんです」
「そうなんですね。改めてステータスを確認させてもらってもいいですか?」
俺は、さっき勝手に『波動鑑定』をしているのだが、改めて断りを入れた。
「は、はい……どうぞ、見てください……」
アクアリアさんは、そう言って少し頬を赤らめた。
やはり誰かに凝視されるというのは、恥ずかしいよね。
ステータスを見ている間は、その人を見つめていないといけないからね。
改めて確認させてもらった彼女のステータスは……
レベルは、32だった。
駆け出し冒険者としては、ありえないぐらい高いわけだが……勇者パーティーのメンバーとしては、確かに低かったのだろう。
『種族』はもちろん人族で、『年齢』が十六歳だった。
ちなみに外見はというと、小柄で華奢な感じで、フードを取ると可愛い系の美人顔だった。
青髪のショートヘアだが、癖っ毛でぴょんぴょん跳ねている。
雰囲気は大人しめに映るが、芯が強い子なのだと思う。
『職業』欄や『状態』欄や『加護』欄には、何も記載されていない。
『称号』には……『戦場の癒し手』という称号がついていた。
『通常スキル』は、『水使い』しか持っていない。
『水使い』は、『通常スキル』と言っても極めて特殊なスキルなので、一般的な『通常スキル』は持っていないと言っていいだろう。
この位のレベルがあるのに、一般的な『通常スキル』が一つもないというのはかなり珍しい。
また、『固有スキル』も発現していない。
まぁこれは持っている人の方が少ないから、普通ではあるのだけど。
『水使い』スキルの中の技コマンドは、現時点で四つあるようだ。
下級の『水魔法——癒しの雫』、上級の『水魔法——清流のせせらぎ』、極上級の『水魔法——清めの雨』、極上級の『水魔法——鏡花水月』、究極級『水魔法——命の水』が、技コマンドとして使えるようだ。
この五つの中で『水魔法——癒しの雫』は、『共有スキル』にセットされている。
残り四つは、『共有スキル』にセットされていない。
つまり俺が所持していないスキルだ。
だが、残念ながらこれらを共有することはできない。
これらは、あくまで『水使い』という特殊なスキルの中にある技コマンドなのだ。
『通常スキル』として存在している魔法スキルとは存在形態が違うために、『絆』メンバーになってもらっても、『波動複写』でコピーして、俺のスキルにすることができないのだ。
それ故に、『共有スキル』にセットすることも、できないのである。
『水魔法——癒しの雫』は、対象の『身体力(HP)』を回復させることができる。
『水魔法——清流のせせらぎ』は、解毒ができ、対象の汚れを落とすこともできるようだ。
洗濯とか、洗い物もできちゃうということだろうか……?
そして自分の体も綺麗にすることができるのかな……?
解毒ができる事はもちろんだが、汚れを落とせるというのもかなり便利なスキルだと思う。
『水魔法——清めの雨』は、呪いを浄化でき、アンデッドに対しては特効攻撃になるらしい。
はっきり言って、このスキルは凄いと思う!
呪いを浄化できるというのは……解呪できるということだ。
まさに俺たちが求めていたものだ!
どの程度の呪いまで浄化できるのかわからないが、かなり凄いと思うんだよね。
このスキルを使えば、地図売りのイグジーくんのお母さんの足腰が弱る呪いも解けるかもしれない。
それに呪いの武具の解呪もできたら、かなりすごいと思うんだけど……。
ちょっとテンションが上がってしまった。
『水魔法——鏡花水月』は、幻影を作り出すことができるらしい。
敵を撹乱させるのに使えそうなスキルだ。
『水魔法——命の水』は、失われゆく命を繋ぎ止めることができると表示されている。
瀕死者を回復させることができるようだ。
究極級の魔法に相当する技コマンドだし、はっきり言って凄すぎる!
『
本人が言っていた通りに、攻撃型の技コマンドは持っていない。
勇者パーティーで、回復役に徹していたのは当然だろう。
回復系の技がこんなに使えるのは、凄いことだと思う。
なぜ彼女を追放したのか、全く理解できない。
彼女は、ソロで迷宮に潜っていたわけだが、武器はやはり魔法銃を使っていた。
しかも、二丁拳銃だった。
見せてもらったが、かなりいいものというか……『
話によれば……武具屋で、呪われたアイテムとして安く売られていたのを購入して、先程の『水魔法——清めの雨』を使って解呪したらしい。
やはり、呪われた武具の呪いを解くことができるようだ。
呪いの程度にもよるだろうけどね。
この銃は、『名称』が『魔法銃
かかっていた呪いは、一撃の攻撃力が二倍になる代償として、使用者の『魔力(MP)』の総量が半分に落ちるというものだったそうだ。
一度使うと、一日経過しないと元の総量まで回復しない呪いだったらしい。
魔力量が半分に減ってしまうから、撃てる数が減ってしまうわけだ。
もちろん魔力回復薬などを飲めばいいわけだけど、総量自体が半分になってるから、またすぐ消耗してしまうわけだよね。
だが呪いを解いたことによって、『魔力(MP)』の総量が半分に落ちるというデメリットがなくなったらしい。
その代わりに、一撃の威力も通常の威力に戻ってしまったらしいけどね。
一撃の威力が二倍のまま、魔力総量が減るというデメリットだけがなくせればよかったんだろうけど、一体となっていたからできなかったようだ。
まぁ威力が通常に戻ったとは言え、『
アクアリアさんによれば、序盤の魔物には充分すぎる威力だったようだ。
それから彼女は、変わった形の魔法カバンを持っていた。
実際は、カバンというか箱だ。
『名称』も『魔法の収納箱』となっている。
縦長の箱で上に持ち手が付いている。
色がシルバーであることも合わさって、俺には出前などで使う“おかもち”のように見える。
普通の魔法カバンに比べてかさばるから、運びにくそうだ。
彼女は手で持ったり、背負ったりしていたみたいだ。
これも呪われたアイテムだったらしく、安く購入できたのだそうだ。
逆に安かったから、この不便な形でも我慢して購入したのだそうだ。
一度使うと、三日間『スタミナ力』の数値が半分になると言う呪いがかかっていたらしい。
それを解呪したので、今は普通に魔法カバンとして使えるとのことだ。
『階級』が『
特徴は、“おかもち”のようになっている箱の収納部分は、三段の引き出し状になっていて、三つに分けて収納することが可能になっている。
かなり便利な機能だと思う。
なかなかにコレクター魂をそそられる、面白い魔法収納だ。
アクアリアさんが持っていると、なんとなく……食堂でバイトをしている学生が出前に出ているみたいな感じに見える。
そして、そこから魔物の死骸が出てくるのだから、魔物の配達に来たみたいな感じになっちゃうよね。
俺的には、かなり面白い。
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