1209.水中戦は、大変だ。
迷宮中層の『南エリア』の最初の分岐を、左に入ったルートの一つ目のフロアを転移先として登録した。そこで襲ってきた角狼魔物の群れも瞬殺で撃退した。
あとは上層に戻って、帰り道でレアな魔物を探しそうと思っている。
だが……ニアさんが自由気ままに飛んで行き、何やら探しだした。
この人……このフロアで薬草探しを始めちゃったよ。
狙っている薬草は、『迷宮ノビル』という葉ネギみたいな感じの薬草だから、なんとなくこのエリアにありそうな気もする。
草原のエリアだからね。
ニアも、何か閃いたのかもしれない。
今は、ニアが取得している『薬草検知』のスキルを、使っているようだ。
まぁこのスキルは、『共有スキル』にもセットしてあるから、俺たちもみんな使えるんだけどね。
ただこのスキルは、実物を知っている薬草を念じて、探し出すものだから、ダイレクトには探せないと思うんだよね。
『迷宮ノビル』は、見たことがないからね。
ただ、なんとなく薬草の気配を探るみたいな事は、できる感じではあるけど。
そんなことを考えつつ、ニアを見ると姿が見えない。
おそらく薬草を見つけ、着地したのだろう。
俺は、リリイとチャッピーとともにニアの降り立った方に、足を運んだ。
やっぱり、見つけたようだ。
細い葉ネギのようなものが、群生している。
ニアが引っこ抜いているのを見ると、俺が知っているノビルと同じで、地中に埋まっている部分が丸みを帯びている。
普通に、ノビルとして食べれないかなぁ……?
ノビルって、美味しいんだよね。
サッと湯がいて、塩昆布とあえると最高なのだ。
一つ千ゴルで売れるから、かなりの高価な食材と言えるが、こんなにいっぱいあるから、もし美味しく食べれるなら、食べちゃってもいいんじゃないだろうか。
ニアは、羽妖精サイズなので、そのサイズからしたら結構大物を引っこ抜く感じになっている。
普通なら大変なところだが、高レベルからくる筋力で難なく引っこ抜いている。
というか……むしろあのサイズだから、大きい草を抜く感じになって、面白いんだろうね。
リリイとチャッピーも、楽しそうに抜いている。
俺は、一応魔物が襲ってこないか警戒している。
このフロアも広いから、最初に襲って来たのがさっきの角狼魔物二十体というだけであって、まだまだ魔物の気配はいっぱいあるのだ。
——おっと危ない!
——バンバンバンバンバン
突然俺たちに向けて、無数の針が飛んで来た。
全部剣で叩き落としたけどね。
これは……ハリネズミの魔物か……?
しかも自分の針を発射できるようだ。
この針……強度があって、いい武器になりそうだ。
なるべく傷めないように倒すか……。
俺は、この針を『投擲』スキルを使って、ハリネズミ魔物の額に突き刺した。
大型犬くらいの大きさがあるから、頭もある程度大きいので、充分狙いは付けられた。
しかしこの針、使えるな。
強度もかなりあるし、投擲武器としてかなり優秀だ。
加工の必要もないし、クランの若手冒険者たちに配布しよう。
まぁ投擲の練習をしないと、使いこなせないだろうけどね。
この針が欲しいから……もう少しハリネズミ魔物を狩っておこう。
俺は、ハリネズミ魔物を探し、追加で八体仕留めた。
ニアたちのところに戻ると、一面に自生していた迷宮ノビルがほとんど採り尽くされていた。
どうもリリイとチャッピーが、めっちゃ頑張ったらしい。
まるで収穫機械のように、凄まじい速さで採り尽くしたようだ。
ニアも満足そうな顔をしている。
そして全身泥だらけだ……残念。
なんか最近ニアから……“山菜採りが大好きなおばさん”みたいなオーラが出だしてるのは、気のせいだろうか……。
それにしても……いったい、いくつ採ったんだろう?
採りすぎちゃって、全量は買取センターに出せないパターンじゃないかな。
確実に何百という単位は採っているよね。
今日のところは、一旦引き上げよう。
帰り道でレアな魔物も探したいし。
俺はみんなに声をかける。
「そうね、そうしましょ。『迷宮ノビル』もすごい採っちゃったし」
「わかったのだ。魔物を探しに行くのだ!」
「チャッピーが頑張って、見つけるなの〜」
俺たちは、迷宮上層に戻った。
迷宮上層は、地図が作られているように、大きく前半、中盤、後半と分けることができる。
できれば帰る行程で、それぞれに転移ポイントを作っておきたい。
人が来にくいようなフロアを探して、転移の魔法道具に転移先として登録しておくのだ。
来た時と同じように『飛行』スキルを使って、最短で各フロアを通り抜ける。
そして水の部分が多い冒険者に敬遠されそうなフロアを選んで、転移ポイントとすることにした。
『南エリア』後半に属するフロアの中で、そんな場所を見つけたので、転移先として登録した。
ついでに、ここでレアな魔物も探すことにする。
水の中に生息する魔物を誘き出すしかないので、水中に入ったほうがいいんだが……できれば濡れたくない。
そこで俺は、ボタニカルゴーレムを起動して囮になってもらうことにした。
竹筒形状の中に姫人形が入っている『かぐや一号』を動かして、水の中に侵入させる。
水深がどのぐらいあるか分からないので、水没してしまうかもしれない。
どこまでやれるか、やってみよう。
『かぐや一号』は、早々に水中に没してしまった。
結構深いようだ。
これはやばいなぁ……水中で身動きがとりづらくなっているはずだ。
魔物に攻撃されたら、まともに戦えないだろう。
と思っていたら、早速攻撃されている。
やばい、魚の魔物が群れで襲いかかっている。
もはや、俺の「戻ってこい」という指示も実行できない状況に、陥っているようだ。
そしてこの魚の魔物は……どうもピラニアの魔物みたいだ。
水面にも出てきているので、その凶暴な姿が見えている。
鋭い歯がぎっしり生えている。
しかも大きさが、一メートル以上ある。
この集団……恐怖でしかないな。
冒険者が襲われたら、ひとたまりもないだろう。
それにしても参った……。
ボタニカルゴーレムを回収する方法が、思いつかないなぁ……。
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