1161.都市伝説の、真相。
『セイチョウ迷宮』迷宮管理システムのイチョウちゃんが、前マスターが残してくれたという迷宮防衛のための手段について、話してくれた。
それは、驚くべき内容だった。
まず前マスターという人は、約三百年前の人で、『スライム聖女』と呼ばれていた人らしい。
その人が伝えていたという迷宮を防衛する手段というのが、特殊な『スライム』による防衛だった。
なんと、『スライム』を百八体集めて、特別な儀式をすると、特別なスライムに変わり、強固な防衛戦力になるというのである。
『スライム』を百八体集めるという話……どう考えても、あのアホ貴族ボコイがやろうとしていたことだ。
今や都市伝説みたいになっている話である。
もしかしたら、その話の出所は、その『スライム聖女』なのかもしれない。
ただ現在広がっている都市伝説は、『スライム』を百八体集めると、願いが叶う的な都市伝説だけどね。
俺は『スライムの聖女』が語っていたと言う、その特別な儀式について確認した。
まず『スライム』を百八体集めなければならないが、これは一人のマスターに対し、『スライム』百八体全てが自主的に仲間になった状態でなければならない。
この条件は、普通では実現不可能なほど厳しい。
いくら優れたテイマーでも、百八体もの生物を使役するのは大変だ。普通は不可能だろう。
しかも『テイム』スキルで、強制的に仲間にするのではなく、自主的に仲間になってもらわなければならない。
そして、『スライム』についても条件があった。
第一の条件は……百八体全てが、レベル1であるということだった。
自然に生息している『スライム』で、レベル1の『スライム』だけを百八体も集めるのは、かなり難しいと思う。
第二の条件は、百八体全てがマスターを信頼し、命を捧げる覚悟があることだ。
第三の条件は、百八体とは別に、上位種の『スライム』がいて、その『スライム』が百八体の『スライム』全てに、魔力と生命エネルギーを分け与えること。すなわち、それが可能なほどの強い上位種の『スライム』が必要だということだ。
『スライム』に関する条件は以上だが、儀式を行うためには、月の光を取り込み増幅できる特別な神殿が必要らしい。
その神殿を探し当てる事も、ある意味条件に含まれているわけだ。
ただ百八体の『スライム』が自主的に仲間になり、上位種の『スライム』を従えているようなマスターであれば、発見するのは難しくないと伝えられたそうだ。
儀式の方法は、神殿にたどりつけば、おのずとわかると言っていたらしい。
これらの条件は、普通では、ほぼ実現不可能だろう。
だが……俺には、できちゃう感じだ。
なぜなら……レベル1の『スライム』百八体は、今いる『スライム』たちに分裂してもらえばいい。
レベル1の分体を作ってもらえばいいのである。
そしてその子たちはおそらく、自主的に俺の仲間になるだろう。
まぁ既に仲間になっている『スライム』が分裂するのだから、自動的に俺の仲間の状態であるとも言えるが。
そうだとしても、俺の仲間の『スライム』たちは、みんな自主的に仲間になってくれているから、おそらく条件は満たすだろう。
百八体の『スライム』たちに、生命エネルギーと魔力を分け与える上位種の『スライム』は、『エンペラースライム』のリンちゃんがいるから、全く問題ない。
あとは、儀式ができる神殿を見つけ出すだけだ。
まぁある意味、これが一番の問題だけどね。
見つける方法は、何も伝えられていないようだし。
ある意味、そこが試されている感じかもしれない。
なんとなく、クエスト的な感じもする。
そういえば、リンちゃんがこの周辺を調査したいと言って、自由行動しているが、ついでに、神殿らしきものがないか探してもらおう。
俺は、リンちゃんに念話を繋いだ。
そして今聞いた話を説明し、調査を依頼した。
(わかった! あるじのため、がんばる! きっと見つけられる! スライムたち……山の奥で、ちょっと見つけた。友だちなった。みんな、レベル1のスライムに、別れてくれる)
リンちゃんが、そんな返事を返してくれた。
ほとんど『スライム』がいないこの国でも、リンちゃんは仲間を見つけたようだ。
そして、その『スライム』たちに分裂してもらって、レベル1の『スライム』も準備できそうだ。
まぁ分裂ができる『種族固有スキル』の『増殖』が身につくレベル6までは、レベルを上げる必要があるかもしれないが。
(わかった。リンちゃん、じゃあ頼むよ)
(わかった。あるじのため、がんばる!)
うまく儀式をすることができれば……百八体の『スライム』は特別な『スライム』に変わるという事のようだから、すごく楽しみだ。
おそらく、特殊なクラスチェンジなのだろう。
成功すれば、迷宮防衛に役立つほど、強い『スライム』になるということだし。
すぐにできないのが残念だ。
神殿を見つけないといけないからね。
迷宮防衛の方策としては、中・長期的な対策ということになるだろう。
結局すぐにできて、効果の高い短期的な対策は、ないってことなんだよね。
まぁ警戒態勢を十分にとって、少しでも怪しい気配があったら、俺が駆けつけるという事しかないだろう。
とりあえずは、一般に最終フロアだと思われている『冒険者最終到達フロア』の床の穴を、石で塞いでおこう。
存在を秘匿しなければならないシークレットフロアに、行けてしまうからね。
数日で修理が完了するようだが、その間、万が一何者かが来るとまずいから、巨大な石で塞いでおくのだ。
短いスパンで、再度、あの悪魔たちが攻撃を仕掛けてくるとは考えにくいが、警戒体制だけは、十分にとっておくべきだろう。
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