1110.大口賛助会員、ゲットしました!

 翌朝、俺はクランメンバーに、新しい仲間を紹介した。


 それは『魔盾 千手盾』の付喪神のフミナさん、『ホムンクルス』のニコちゃん、『高速飛行艇 アルシャドウ号』の付喪神エメラルディアさん、『カミナリ使い』の虎亜人のラムルちゃんの四人だ。


 それから、昨日保護したイチョウちゃんと、『白金牛』のモバスチャンちゃんのことも、改めて紹介した。


 ニコちゃんは、『ホムンクルス』という特殊性と長期間休眠状態にあった特殊性で、『基本ステータス』の『年齢』には『三歳』と表示されるが、見た目は八歳児くらいだ。

 リリイやチャッピーと同じくらいに見えるのだ。


 ラムルちゃんは六歳で、イチョウちゃんは四歳なので、このクランの最年少は、イチョウちゃんになった。



 また新しい仲間が増えたことに、子供たちは喜んでくれた。


 苦しい環境にあった子供たちだが、みんな素直で良い子なのが助かる。


 心がねじ曲がってしまっても、おかしくないと思うのだが、人の痛みがわかるからか、すぐに受け入れてくれる。


 林に隠れていた子供たちは、リーダーだったツリッシュちゃんを強く信頼していて、彼女の正義感のようなものが、みんなに伝わっている感じだ。

 よく助け合うし、自分より小さい子の面倒をみてくれるのだ。


 それに倣うかのように、奴隷商館から救出した子供たちも、助け合う気持ちでいてくれる。


 人数が多いといっても、今のところ大きな問題は起きていない。


 まぁ子供だから、多少の喧嘩や駄々をこねたりということは、あって当然だと思っているけどね。


 保護して数日だから、そんな余裕もまだないんだろうけど。



 お互いの挨拶が終わり、朝ごはんの準備をする前に、リリイ先生とチャッピー先生による『護身柔術体操』が始まった。


 今日からは、毎朝、食前に行うことにしたのである。


 そんな時だ、門から綺麗な馬車が入ってきた。


 あの馬車は……


「皆さん、おはようですわ!」


 叫ぶようにして挨拶しながら降りてきたのは、ムーンリバー伯爵の孫娘ルージュちゃんだった。


 なんと今日も遊びに来たようだ。


 ルージュちゃん……まさか、ほんとに毎日来る気じゃないよね?

 まぁいいんだけどさ。


 そして今日も母親のベニーさんと、叔母のムーランさんが一緒だ。


 挨拶を交わすと、朝食の準備を手伝いに来たと説明してくれた。


 ありがたいことなので、もちろん手伝ってもらうけどね。


 三人は急いで『護身柔術体操』の輪の中に入って行った。

 一緒にやっている。



 『護身柔術体操』が終わると、みんな朝ごはんの準備にとりかかったが、ムーランさんが俺のところに来た。


「グリムさん、どうでした、昨日の冒険者の採用は? すごい人数が来てましたけど?」


 ムーランさんたちは、昨日は昼過ぎまでいたから、押し寄せている様子を見ているんだよね。


「かなり来ていただきました。これから、合格者を貼り出す予定です」


 俺はそう言って、面接に来た人数と採用した人数など、大体の情報を教えてあげた。


「まぁすごい! そんな人数になったのですか!? ……おそらく、これからも増えますわね。この『ツリーハウスクラン』は……迷宮都市で一大勢力になりそうですわね!」


 なぜかムーランさんが、楽しそうに笑った。


「いえいえ、あまり目立ちたくないので、そんなつもりはないんですが……。子供たちを保護することと冒険者の支援をすることが、クランの目的なので杓子定規に定員を作ることは、できなかったんですよね……」


「でも相当落とされた冒険者もいますわよね? 何かもったいないですわね。もっとメンバーにしちゃえばいいのに! 味方は多いほどいいんじゃないですか?」


 ムーランさんが、また楽しそうに笑った。

 そして、お気楽な感じで言っちゃってますけど。


 まぁ彼女の言ってることも、一理あるんだけどね。


「私も、もっと入れてもいいと思ってるんだけどさぁ。ただこれ以上は、ここの敷地が狭くなっちゃうと思うのよね。

 でもまぁ、人間性に問題がなくて本当は採用してもいい冒険者たちには、賛助会員をお勧めするつもりだから!」


 お気楽な発言に刺激されたのかわからないが、ニアがそんなことを言った。


「まぁ賛助会員というのは、何ですの?」


「それはねぇ、クランの正式なメンバーになれない人でも、応援したいっていう気持ちがあれば、サブメンバーになれるっていう制度なのよ。詳しくはグリムが説明するから」


 ニアがそう言って、俺に無茶ぶりした。

 まぁ無茶ではないけど。


 俺は、賛助会員について説明した。


「まぁそれは素晴らしいですわ! それなら確かに、問題になりませんわね。国に仕えるような衛兵とかでも、個人的に孤児院を支援することはありますからね。賛助会員ならそれと同じだから、問題になることもありませんわね」


「グリムさん、私、賛助会員にならせていただきます!」


 何か感動した様子のムーランさんが、宣言した。


「大丈夫なのですか?」


「ええ、支援ですもの! それに今のお話からすれば、昨日も今日も訪ねて来て、一緒に参加してる私たちは、実態は既に賛助会員ですわ! 会費を払わなければですわ! 私は、毎月十口払います」


 なんと、十口も払ってくれるようだ。


 一口三千ゴルだから、毎月三万ゴル支援してもらえるのは、結構ありがたい。


「グリムさん、後で話をまとめてきますが、ムーンリバー家は、おそらく全員賛助会員になると思います。ムーンリバー家で、多少はこのクランを支援できると思います」


 ムーランさんはそう言うと、張り切った様子で、義姉のベニーさんのところに行った。


 準備を手伝ってくれていたベニーさんだが、ムーランさんと一緒に戻ってきた。


「グリムさん、話は聞きました。私も、個人として賛助会員になります! 元々ムーンリバー家では、すべての孤児院に援助しておりますので、その一環と思えば、全く問題ありません。……そういえば昨日話のあった孤児院についての問題は、今調査をさせております。情報が入り次第、グリムさんにもお伝えいたします」


 ベニーさんはそう言って、少しドヤ顔になった。


 というか……孤児院の調査結果を俺に報告してくれなくてもいいと思うんだけど。

 まぁ気になってるから、報告してもらえるとありがたいけどさ。


 どっちにしろ、孤児院の件については、『闇の掃除人』として、調査しようとは思っているけどね。

 今夜にでも、いくつかの孤児院を調査しようと思っている。


 調査といっても、忍び込んで変なことをしている証拠がないかを探すだけだけどね。


 ベニーさんも、ムーランさんと同じで、個人として十口入ってくれるとのことだった。


 この二人だけで、毎月六万ゴル入ってくるのは、やっぱ大きいね!


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