887.新たなる、神獣。
コバルト城で『小悪魔 インプ』と『小悪魔 ジャキ』の悪魔因子融合体と戦闘している現場に、突然『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウが転移で現れ、宙に浮いている。
フォウの前には、『化身獣』となったオリョウたちが持っている『想いのペンダント』と同じデザインのものが現れ、たった今、フォウの首に巻き付いた!
フォウは、一瞬驚いていた感じだったが、今は固まっている。
多分だが……天声が響いているのかもしれない。
何者かと話している感じだ。
(フォウ、大丈夫かい?)
俺は、フォウに念話を入れた。
(ご主人様、アタイ、『化身獣』に選ばれたみたい。天声が突然響いて……今はキリン様が話しかけてきてる。とにかく力を貸してくれるって言うから、やってやろうじゃん! アタイに任せて!)
フォウは、そんな驚きの報告をあげた。
キリン様と言っていたから……どうやら新たな神獣が力を貸してくれるようだ。
キリン様は、おそらく俺が元の世界の知識で知っている麒麟と同様の存在だろう。
麒麟は確か……黄竜と同じように四神の中央に位置する場合もあるし、四霊と呼ばれる瑞獣の一体でもあった。
瑞獣は、幸運をもたらす神聖な獣ということだった。
四霊は、様々な生物の長ともいわれ、麒麟は毛のある生物の長だったはずである。
この世界の『キリン』様が同じような性質を持っているかはわからないが、いずれにしろ『コウリュウ』様たちと同じ神獣で、力を貸してくれると言うことのようだ。
そして、フォウが選ばれたようだ。
「キリン様と話してるだけで、力が湧いてくる! やってやろうじゃん! 化身獣覚醒! キリン憑依!」
おお、早速フォウが
フォウが、みるみる光に包まれていく……
ペンダントが発する光が、フォウを包み込んでいるのだ。
光がまん丸に変わった。
そして眩しさが収まると……透明なガラス玉というかシャボン玉のような感じになった。
オリョウたちの時と同じだ。
中にいるフォウの姿は、キリン様の姿に変わったようだ。
体色の金色は、フォウの元の状態より更に明るくなり、発光している感じだ。
顔は龍のようになっていて、龍同様二本の角が生えている。
そして、四肢と尻尾に、炎のように揺らめく光を纏っている。
サイズは元のフォウと同じ位だが、力強く威厳に満ちた風貌だ。
『波動鑑定』をかけてみると……
『職業』欄に『
そして『状態』の表示が、『キリンの化身状態』となっている。
「なるほど、キリン様の巫女は、オカリナちゃんってわけね。来て!」
フォウがそう叫んだ。
「わぁ」
戦っていたオカリナさんが、突然、宙に舞った。
驚いて手足をバタバタさせているが、そのまま宙を滑るようにキリンの化身状態になっているフォウの前に移動した。
「え、なに!?」
「オカリナちゃんが、キリンの巫女だからアタイの相棒ってことでよろしく! 一緒にやってやろうじゃん! この世界のために!」
「え、…………」
オカリナさんは、不思議顔をしていたが、そのまま固まった。
おそらく……天声が流れ、キリン様が語りかけているのだろう。
途中から、頷き出した。
「はい、キリン様。はい、謹んで拝命いたします! はい、わかりました。いきます! 我こそはキリンの巫女、戦巫女としてその力を現さん! 化身獣とともに……今覚醒の時! 出でよ! キリン
オカリナさんは、キリンの巫女としての使命を受け入れたようだ。
そして彼女の前には、突然、金色の細長い棍棒が現れた!
棍棒の両端が青くなっていて、独特な美しさを持っている。
転移してきたようだが、この国の神話にはキリン様は登場していないから、キリン様が直接送ってきたのかもしれない。
オカリナさんは、その『キリン
「
おお、戦巫女モードになる為の
棍で描いた頭上の円から光が降り注ぎ……オカリナさんを包み込む。
筒状の光の柱は、やがて丸みを帯びた球状になった。
そして光がやわらいで、中の見える透明なシャボン玉形状になった。
中には……金色の鎧に身を包んだオカリナさんの姿がある!
右肩のガードパーツの上には、キリンの頭を模したものが乗っている。
左肩のガードパーツの上には、キリンの尾を模したものが乗っている。
胸からお腹のあたりに絞り込まれるようなデザインの胴当て、ミニスカートと一体となった腰当て、肘近くまで伸びた小手パーツ、そしてロングブーツ、すべてのパーツが金色に煌めいている!
めっちゃかっこいい!
そして、手にしている『キリン
『波動鑑定』をすると……
『職業』欄に、『神獣キリンの巫女』と表示されている。
『状態』には、『戦巫女発動状態』との表示が現れている。
「ご主人様、この襲撃は悪魔の仕業だってキリン様が言ってる! 獣の命をもて遊ぶ『獣の悪魔』という奴がやってるって! キリン様が、ここで倒さないと、多くの命が失われるって言ってる。上空に隠れてるらしいから、アタイとオカリナちゃんでやっつけてくるから任して!」
「グリムさん、私にも同じ説明がありました。フォウちゃんと一緒に、悪魔を倒します!」
フォウとオカリナさんが、俺に向かってそう叫んだ。
「分りました。フォローは任せてください。充分気をつけて!」
俺はそう言って、任せることにした。
相手が悪魔となると、一癖も二癖もあるので本当は心配だが……神獣であるキリン様が力を貸している状態だから大丈夫だろう。
二人が俺に向けて頷くと、二人を包んでいたシャボン玉のような透明な円形物体が弾け、オカリナさんがキリンの化身状態になっているフォウの背中に騎乗した。
そして、フォウは空を駆け上った。
キリンの化身状態になっているので、空中をかけることができるらしい。
いつもは『天翔る蹄』という魔法道具を使って宙をかけていたが、今は『化身獣』としての力で宙をかけているようだ。
キリン様の話では、この上空に『獣の悪魔』という厄介な悪魔が潜んでいるらしいが、全く気づかなかった。
俺は、二人に任せるつもりだが、万が一の時にフォローできるように、『視力強化』スキルと『聴力強化』スキルを使って、二人の行方を追跡した。
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