886.転移の先は、戦闘中!
コバルト侯爵領『ヒコバの街』での海賊の襲撃と反乱軍の襲撃を鎮圧し、後処理の指示を代官に行っていたチーバ男爵が戻ってきた。
そこで俺たちは、『領都コバルト』の領城に戻ることにした。
一緒に行くメンバーは、俺の分身『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーとニア、チーバ男爵とその次女サナさんと『特命チーム』のゼニータさんだ。
怪我をした住民や兵士たちを助けてくれた『川イルカ』のキューちゃん率いる『海獣軍団』のみんなは、『マナゾン大河』に戻り近郊で警戒してくれている。
『
チーバ男爵を待っている間に、ナビーに、転移で連れて行ってもらったのだ。
さっきコバルト城にいた時に、俺の転移の魔法道具に破壊された別館に面した中庭を転移先として登録しておいたので、今度は外壁の外ではなく、城の中庭に転移できる。
転移すると……
——え、魔物!?
城の兵士や『セイリュウ騎士団』の皆さんが戦っている。
相手は……狼のような顔だが人型だ……。
魔物と言うよりも獣人なのか?
『波動鑑定』をかけてみると……
……どういうこと?
空中を飛んでいる者は、『小悪魔 インプ』となっていて、地上で戦っている者は、『小悪魔 ジャキ』となっている。
俺が知っているインプとは全然違うが……?
両者とも、顔が狼になっているだけでなく、全身が毛で覆われているのだ。
そしてやけに筋肉質になっているし、大きさが一回り大きくなっている。
よく見ると……『状態』表示に、『悪魔因子融合状態』『悪魔隷属状態』と表示されている。
よくわからないが……どうも悪魔の手先状態のようだ。
そして、両者ともレベルが35もある。
悪魔の仕業なのか……?
まさか……今回の反乱計画も、悪魔が糸を引いていたということなのか?
それにしては……ずさんすぎるが……。
まぁ今考えてもしょうがない。
まずは、このインプとジャキを殲滅しなければ……。
よく見たら、ユーフェミア公爵と国王陛下まで戦っている。
元『怪盗イルジメ』のオカリナさんと、その親友で攻略者パーティーのメンバーだった『コボルト』のブルールさんも戦ってくれているようだ。
元『怪盗ラパン』のルセーヌさんもいる。
空を駆け巡って、インプを倒している大きな犬が二頭いるが……あれは一体……?
俺は、国王陛下の下に駆け寄った。
「陛下、これは一体……?」
「おお、シンオベロン卿! ……わからないが、突然この化け物どもが湧き出てきたのだ。今し方急にだ!」
「そうだったのですか……。まずは、倒してしまうしかなさそうですね。陛下は、安全なところに避難してください」
「気遣いはありがたいが、私の心配は無用だ。自分の身は守れる。君たちは、敵の殲滅を頼む! 今日は王妃に止められることもないから、久しぶりに存分に戦わせてもらう!」
国王陛下は、めちゃめちゃやる気だ。
よくわからないが、やはり陛下には脳筋というか……バトルジャンキーな側面があるようで、完全にスイッチが入ってしまっている。
「分りました。十分お気をつけください。チーバ男爵、サナさん、陛下の護衛をお願いします」
「承知!」
「はは、お任せください」
俺は陛下の意思を尊重しつつ、チーバ男爵と娘のサナさんに護衛を頼んだ。
いつもの護衛のタングステン近衛騎士団長とミチコルさんは、おそらく王妃殿下の護衛として残ってもらい、連れてこなかったのだろう。
「ゼニータさんは、城内の状況把握をお願いします! ナビーは、城外に敵が出現していないか確認してほしい。ニアは、怪我人の治療と全体のフォローを頼む!」
「はは、了解しました」
「かしこまりました」
「オッケー!」
俺の指示に、みんなすぐ行動を開始してくれた。
それにしても……すごい数だ。
倒されたものも合わせたら、百体以上は軽くいそうだ。
セイリュウ騎士たちが、前線で積極的に戦い、城の兵士たちは集団でまとまって身を守っている。
被害を最小限にする戦い方だろう。
おそらくマリナ騎士団長の指示だと思うが、的確な対処だと思う。
だがセイリュウ騎士たちは、レベル的には格上のはずだが、簡単には倒せていない。
インプやジャキのレベルは35なのだが、一体倒すのに、それなりの時間を要している感じだ。
屠るという感じにはなっていない。
充分倒せてはいるのだが……レベル差ほどの実力差は無いようだ。
奴らは『悪魔因子融合状態』となっていたから、おそらく悪魔の因子で強化されているのだろう。
レベル以上の強さがあるようだ。
セイリュウ騎士たちがメインで戦っている相手は、ジャキで
腕力が強く、一撃が重いようだ。
一般の兵士たちでは、太刀打ちできない感じだ。
インプは三叉鉾のような武器を持っているが、口から火を放射して攻撃している。
空を飛んで、移動しながら攻撃してくるので厄介な感じだ。
だが、インプたちを空を駆け回る犬たちが、どんどん倒していっている。
(オカリナさん、あの犬たちが何かわかりますか?)
俺はオカリナさんに念話を入れた。
オカリナさんは、俺の仲間になって『絆』メンバーになっているので念話が通じるのだ。
(ええ、あの子たちは、私の友人のブルールの仲間です。『
オカリナさんが、少し嬉しいそうなトーンで教えてくれた。
なるほど、『コボルト』のブルールさんが連れてきた助っ人ということらしい。
一時的には混乱した戦場になっていたようだが、もう落ち着いてきている。
俺は、インプとジャキの出現の元を断とうと思っている。
おそらくどこかに、召喚陣があると思うんだよね。
動き出そうと思ったその時——
え!?
フォウ!?
……しかもあの感じは……
驚くことに、空中に突然、『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウが現れた!
宙に浮いたまま止まっている。
おそらく転移で現れたのだと思う。
それにしても……どうして……?
あ! 今度は、小さな光がフォウの前に現れた。
俺は『視力強化』スキルを使って確認した。
ペンダントだった。
しかも見覚えがある……。
オリョウたちが持っている『想いのペンダント』と一緒のデザインだ!
『階級』不明の謎アイテムだったが、今では『
『ライジングカープ』のキンちゃんが持っている黄色い石がついたものと似た色だが、濃い黄色というか……黄土色の石が付いている。
これってもしかして……?
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