840.生産用の、秘密基地。
新たに発見された『プロダクションゾーン』には、『魔鋼』『マグナ合金』『魔鋼繊維』を生産する設備があった。
『マグナ合金』と『魔鋼繊維』は、現代には伝わっていない技術の産物である。
それぞれを生産するための素材は、ある程度の量がストックしてあるようで、試しに生産することはすぐにでもできそうだ。
俺の『波動』スキルの『波動複写』コマンドを使えば、いくらでもコピー生産ができるのだが、この生産設備の永続的な稼働を考えると、必要な素材を手に入れる方法を構築しておいた方が良いだろう。
俺がいなくても、施設を維持できるようにしておいた方がいいからね。
『魔鋼』を作るのに必要な『魔芯核』と『鋼』は、普通に手に入るので特に問題は無い。
『マグナ合金』を作るのに必要な素材は、『魔鋼』『魔芯核』『コバルト』『チタン鉄鉱』『魔砂土』だが、『コバルト』と『チタン鉄鉱』と『魔砂土』の三種類については、調達手段を考える必要がある。
特に『チタン鉄鉱』と『魔砂土』については、鉱脈や産出地を見つけるところからやる必要がある。
『魔鋼繊維』については、『魔鋼』の超微粒子である『魔鋼粒子』を作る方法を解明することと、一番性能が良くなるという『
『
できれば、栽培するのが一番良いので、フラニーに相談する予定だ。
この『勇者力研究所』の地上部分に、みんなで使う共同の別荘を作る予定なので、その周辺にで『
この『マシマグナ第四帝国』末期の『勇者団』が基地として使っていたという『勇者力研究所』は、『勇者団』解散後に拡張されていたようで、結局四つのゾーンがあるということが判明した。
もともとあったのは、最初に発見した崖の隠し通路から入ってすぐの『オープンゾーン』とその奥にある『シークレットゾーン』の二つのスペースだったらしい。
それが、当時『勇者団』が使っていたスペースだ。
その後、新たな使用目的を与えられ『オープンゾーン』の下に『ビルドアップゾーン』が作られ、その奥側には『プロダクションゾーン』が作られたということのようだ。
仮に上から見たとしたら、円形が二つ繋がったメガネのような形のスペースが、上下二階層にあるというかたちになる。
この基地を後にする前に、『オープンゾーン』にある食堂のようなスペースで、みんなで休憩することにした。
話題は必然的に……今後のこの基地の使い方の話になった。
新たなゾーンが発見されたことによって、再度の話し合いとなったわけである。
この『勇者力研究所』は、戦利品というか褒賞というかたちで俺に与えられている。
それに伴い、地上部分の土地も与えられ、そこにはみんなで共同で使う別荘を作るという話になっていた。
俺が、皆の意見を取り入れた別荘を作るということになっている。
だが、ただの古代文明の遺跡のみならず、失われた技術である『マグナ合金』や『魔鋼繊維』の稼働可能な生産設備が発見されたので、俺個人の所有物にするというわけにはいかないだろう。
通常であれば、王国で管理すべきものだし、王立研究所の調査を入れるべきものだと思う。
そう思ったので、そんな話をしてみたのだが……
「いや予定通り、ここはシンオベロン卿の所有ということで構わないよ。そもそも、『プロダクションゾーン』を開けるためには、所長登録が必要で所長登録の要件を満たしていたのは、シンオベロン卿だけだからね。君がいなければ、発見できていないゾーンだよ。そういう意味では、この基地自体もそうだけどね」
国王陛下が、ナイスミドルな優しい顔で言った。
重大な発見である古代文明の生産設備を、王国が管理しなくていいのだろうか……?
「でも……これほどの発見ですから、王国で管理した方がいいと思うのですが……」
俺はどうしても気になったので、確認してみた。
「まぁ普通で考えればそうだけど……ここの所長は君だし、君が管理するのが一番安全だよ。悪魔もしくは悪魔の息のかかった勢力に襲われる可能性もあるからね。この設備が悪用されたら、それこそ大変だ。ただこの技術は、できれば人々に還元したいから、王立研究所の調査は入れさせて欲しいんだけどね」
「それはもちろん構いません。というか……王立研究所で主導して調査してもらったほうがいいと思いますが……」
俺は、国王陛下の申し出を了承するとともに、そう提案した。
「そうさね……私も陛下の言う通り、あんたが中心になってここ管理するのがいいと思うよ。なんといっても、『集いし力』の中心だからね。我々が使う秘密基地は『竜羽基地』でいいと思うが、この『勇者団』の基地だったという『勇者力研究所』は、今後のために武器や魔法道具などを生産する基地にしたらどうだい?」
ユーフェミア公爵が、そんな提案をしてくれた。
「生産のための基地ですか……」
俺は特に考えていなかったが、言われてみたらそういう使い方はアリかもしれない。
なんといっても、すごい生産設備が発見できたからね。
「一番いいのは『フェアリー商会』に、研究部門を作ってここを管理したらいいんじゃないかい。そこに王立研究所のスタッフを混ぜて、合同で研究するというのがいいかもしれないね。グリムが首領のアジトで拘束した研究者たちが十五人いたけど、そのうちの十二人は拉致されて無理矢理研究させられていた人たちだったはずだ。悪い人たちじゃないから、その者たちを研究者として雇用したらどうだい? 家族がいたら、一緒に家族も呼んであげて」
ユーフェミア公爵が、思いついたという感じでニヤッとした後に、具体的な提案をしてくれた。
なるほど……そういう手はあるかもしれない。
「そうですね。その人たちさえよければ、雇用して研究してもらうというのは、いいかもしれません」
「さすが姉様! それはいいですね! 『フェアリー商会』で作る研究部門に、王立研究所の特別チームを参加させましょう。この技術を解明し、できれば後世に残してあげたいですからね。いいかね? シンオベロン卿」
国王陛下に改めて聞かれたので、俺は当然了承した。
断る理由はない。
普通なら、国が独占しようとするのが当たり前だと思うが、さすが国王陛下で、世界全体そして後世の利益を考えてくれている。
お姉ちゃん大好きオーラが出すぎているのは、少し残念感があるけど、素晴らしい為政者だと思う。
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