839.古代文明の、生産設備。
「ここの生産設備は、『マグナ合金』だけじゃなく『マグナ超合金』も作れるのかい?」
俺は、船の付喪神で『マシマグナ第四帝国』の第四皇女だったエメラルディアさんが教えてくれた『マグナ超合金』についても、生産管理システムのプローに尋ねてみた。
『マグナ合金』だけでも優秀なようだが、もし『マグナ超合金』まで生産できるならかなりすごいことだ。
帝国が何百年もの研究の結果、実用化にこぎつけたという超優れものの『魔法合金』だからね。
「『マグナ超合金』の生産設備も増設される計画でしたが、未実行です。現状の設備で生産可能なのは、『魔鋼』と『マグナ合金』と『魔鋼繊維』のみです」
プローが高めの機械的な音声で、明るく答えた。
残念ながら『マグナ超合金』の生産設備は、実装されていないらしい。
本当に残念だが……まぁしょうがない。
ただ『魔鋼』が生産できるのと、それを基にした『マグナ合金』が作れるというだけでも素晴らしい。
そしてもう一つ、現代では失われている『魔鋼繊維』を作れるというのも凄い。
ここの生産設備は、かなり有効に使えそうだ。
今までは、武具を作るときに魔物の素材を中心に使ってきたが、この生産設備が稼働できれば、『魔鋼』や『魔鋼繊維』を使った武具も作れるようになる。
また『魔法合金』である『マグナ合金』が使えるのも非常に大きい。
特殊な武器や操縦型人工ゴーレムも作れそうだ。
ただ生産設備が稼働できたとしても、必要な材料が手に入らないと実際に生産することはできない。
『魔鋼』を作るには、『魔芯核』と『鋼』が必要なようだが、『魔芯核』は大量に補充しているし、『鋼』の調達も多分問題ないだろう。
『マグナ合金』は、『魔鋼』をベースに、『魔芯核』『コバルト』『チタン鉄鉱』『魔砂土』が必要ということだった。
『コバルト』と『チタン鉄鉱』は、鉱脈を探す必要がありそうだ。
『魔砂土』は、この世界特有のものだと思うが、そもそもどういうものかもよくわからない。
魔素を多く含んだ特殊な砂土ということだったが、実際に見たことがあるのはエメラルディアさんだけだ。
ただエメラルディアさんも、これらの素材を見たことがあるだけで、どこで産出できるかなどの情報は、そもそも把握していなかったようだ。
「『コバルト』は……コバルト侯爵領に、鉱脈がいくつかあるはずだよ。『チタン鉄鉱』っていうのは、あまり聞かないね……」
ユーフェミア公爵が教えてくれた。
コバルト侯爵領内に、コバルト鉱脈があるなんて……侯爵の名前は、コバルトと何か関係があるのだろうか……?
「『チタン鉄鉱』と『魔砂土』については、文献で見たことがありますが、現在ではほとんど使われていない素材だと思います。その鉱脈の資料などの有益な情報は、王立研究所にもないかもしれません。一応、戻って探してみますが……」
ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんも、記憶をたどるようにそんな話をしてくれた。
「そうだね……『コバルト』鉱脈はともかくとして、『チタン鉄鉱』と『魔砂土』については、王立研究所で改めて資料を当たらせよう」
国王陛下もそう言って、任せろといった感じの笑みを浮かべた。
『魔鋼繊維』は、『魔鋼』を繊維に練り込むということだったが、実際にはどんなものが必要なのだろうか……?
「『魔鋼繊維』の生産に必要なものって、何があるのか簡単に教えてくれるかい?」
プローに尋ねてみた。
「『魔鋼繊維』の生産に必要なものは、『魔鋼』を超微粒子にした『魔鋼粒子』と通常の繊維の糸です。繊維は、どんなものでも素材に使うことができます。一番相性が良いのは、『
プローが、そう教えてくれた。
「たしか……『魔鋼繊維』を作る一番のポイントは、『魔鋼』を超微細な粒子にすることとそれを繊維に練り込む技術だったと思います。その二つの技術が、非常に難しいのです。繊維自体は、どんなものでも使えるはずです。ただ当時の研究では、プローが言った通り『
エメラルディアさんが、補足してくれた。
『
最初に俺の服や下着を作ってくれた時にも、『
前にフラニーに聞いたところによると、『
その糸で作った衣類は、汗をよく吸い、乾きも早い、おまけに消臭・抗菌効果まである。
また、ある程度の温度調節機能もあるし、使えば使うほど体に馴染むという性質も持っているとのことだった。
そして、丈夫で長持ちする。
また、精神耐性の特殊効果を持っており、精神魔法や精神攻撃に耐性を発揮するらしい。
ストレス軽減効果もあり、精神を健康に保つ効果もあるとのことだ。
精神疾患の者に身に付けさせると、症状を緩和させる効果もあると言っていた。
機能性といい特殊効果といい、非常に強力な素材なのである。
だが貴重な素材で、現代では人族の国では、ほとんど流通していないようだ。
でも俺は、フラニーに言えば『
『魔鋼繊維』も作れそうだ。
フラニーに相談して、『
それに今の話からすれば、どんな繊維でも練り込むことができるようだから、『
俺の仲間たちの服を作るときに、『魔鋼繊維』が使えたらいいね。
『麻』『綿』『羊毛』『絹』などに、『魔鋼』を練り込んだ『魔鋼繊維』のシリーズを作っておいても、いいかもしれない。
見た目は普通の服でも、防御力の高い服が作れる。
仲間たちの安全性が高まる。
なんかワクワクしてきた!
「『魔鋼粒子』は、『魔鋼』を細くすれば作れるの?」
俺は少し気になったので、プローに尋ねた。
「『魔鋼』を超微細化した『魔鋼粒子』を作るには、特殊な装置が必要です。その装置は、この『プロダクションゾーン』には設置されていないので、『魔鋼粒子』を作ることはできません。素材としてストックしてある『魔鋼粒子』を使うことしかできないでしょう」
プローは、いつものようにキーの高い機械的な音声で明るく答えてくれた。
……俺的には、がっかりな情報だ。
いろいろな『魔鋼繊維』を作って、みんなの服を作ろうと思ったが……そう気安くは作れないようだ。
「ここには、『魔鋼粒子』のストックは、どれぐらいあるんだい?」
「ここにあるのは、このストックボトル五個分のみです」
プローはそう言って、資材が置かれいるスペースのほうに転がっていった。
そのスペースには、ドラム缶みたいな形のものがいくつも置いてある。
おそらく……あれの五個分ということなのだろう。
それでどのぐらいの『魔鋼繊維』が作れるのかわからないが、いずれにしろ限りがある素材だから慎重に使ったほうが良さそうだ。
一番性能が高いという『
ただ……よく考えたら、『波動複写』を使えばいくらでもコピー生産できるから、気安く使うことも可能ではあるんだよね。
もっとも、俺の『波動複写』のコピー生産能力については、ユーフェミア公爵や国王陛下たちには解禁してないので、むやみやたらには使えない。
それにさすがにこの設備は、王立研究所などの調査が入るだろうし、俺が個人的に管理するということにはならないだろう。
一応、所長登録は俺になってしまったが、王国で管理するというかたちにするのが普通だと思うんだよね。
だからチートスキルはなしで、活用を考えた方が良いだろう。
緊急の必要性が生じたときに、情報解禁して量産すればいい話だしね。
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