837.ツクゴロウ博士の、わがまま。
この中央の巨大なスペースに置いてあるのは、建造途中のメカワイバーンだけのようだ。
「こ、これは! これはおそらく設計図です! これは凄い発見です! この設計図があれば、当時の技術力の一端が解明できると思います! ただ……解明できたとしても、我々が再現できるかは別問題ですが……。でも設計図があるから、この操縦型人工ゴーレムを完成させられる可能性もあります!」
人族の天才ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんが、設計図を見つけたようだ。
かなり興奮している。
「設計図があるのは、すごく、すごいのです! 設計図を基に完成させられるかもしれないのです! ミネは、カレーライス氏と対峙した時のように、急激に熱くなってきたのです! 燃えてきたのです!」
『ドワーフ』のミネちゃんも、興奮気味だ。
設計図があるのは、確かに凄い!
設計図通りに作ることができれば、完成させるだろうし、その過程で技術を解明できるかもしれない。
逆に言うと、設計図があっても技術力がなくて作れない可能性もあるけど……焦る必要はない。
ゆっくりやればいいと思うんだよね。
設計図の解明と、このメカワイバーンの組み立てについては、ミネちゃんとドロシーちゃんに任せることにした。
国王陛下やユーフェミア公爵も、それで良いようだ。
俺たちは、周りの部屋についても確認することにした。
基本的な作りは、『オープンゾーン』や『シークレットゾーン』と同じで、中央の円形の広場の側面に扉がいくつもあって様々な部屋があるという構造になっている。
この新たなスペースは、『オープンゾーン』の下の部分にあるので『アンダーゾーン』という名称にすることにした。
みんなで手分けして、各部屋を確認する。
少しして、各部屋の確認結果の報告を受けた。
この『アンダーゾーン』の特徴は、工作室のような作業台がある広いスペースが四つもあったことだ。
それ以外は、他のゾーンと同じように多目的に使える個室や食堂のような大スペース、会議室のような大部屋などがあった。
やはりテーブルと椅子ぐらいしか残っていなかった。
新たな発見は、機関室のようなものがあり、『魔力炉』が設置されていたことだ。
ミネちゃんとドロシーちゃんの分析によれば、この基地全体の動力源となる装置ではないかとのことだ。
小型の『魔力炉』で、移動できるタイプのようだ。
エメラルディアさんの見立てでは、以前『シークレットゾーン』に置いてあったものを移動して、専用の機関室を作ったのではないかとのことだ。
『魔力炉』は、外見的にはメカヒュドラに搭載してあった『魔力炉』と似た感じである。
『魔力炉』の隣には、やはり『魔芯核』の備蓄槽があり、自動で『魔力炉』に供給するシステムになっている。
ただこの『魔力炉』は、稼働しているわけではない。
各フロアを照らしている魔法のランプなどは、自動で点灯していたが、その稼働エネルギーは、この『魔力炉』から供給されているわけではないようだ。
何か補助的な供給システムがあるのか、蓄えてあったエネルギーを消費しているだけなのかは、わからない。
だがいずれにしろ、この基地に備え付けられている魔法のランプは、かなり高性能なもののようだ。
『魔力炉』の隣の備蓄槽には、『魔芯核』が八割ぐらい残っている。
かなりの量だ。
これだけの『魔芯核』は貴重なはずだが、回収する余裕もなく、この基地を放棄したのだろう。
それから工作室の一つに、展示されるように飾られていたものがあった。
なんとそれは……革ジャンとサングラスだった。
前にフミナさんが言っていたが、当時の『勇者団』のメンバーが親指将軍に着せるために冗談半分で立案した特別なアーマーが完成していたらしいのだ。
俺も知っている有名な映画で、未来からやってくるロボットが着ていた感じのものだ。
その装備を『波動鑑定』してみると……『名称』が『革ジャングラサンアーマー』となっていた。
『階級』が『
『魔鋼』を練り込んだ『魔鋼繊維』という特殊な素材で作られているらしい。
『魔鋼』は現代でもあるが、『魔鋼』を練り込んだ『魔鋼繊維』というものは、ないそうだ。
現代では失われている技術だと、ドロシーちゃんが言っていた。
エメラルディアさんの話では、当時でも最先端技術の防御用繊維で、開発中だったものらしい。
俺のよく知る『革ジャン』と革製のズボンがセットになっている。
一応、軽鎧と言っていいだろう。
見た目重視の“ロマン武具”と言っていいものだが、『
そして見た目は革ジャンだが、通気性などはかなり良いようだ。
『魔鋼繊維』の特徴らしい。
『グラサン』も俺のよく知っているサングラスと同じ形状だが、魔法道具になっている。
どういう仕組みなのかわからないが、かけても視界が薄暗くならない上に、視力を補強する効果もあるようだ。
『視力強化』スキルを使った時のように、遠くがよく見えるようになる優れもののようだ。
そして、『グラサン』からライトが照射され、暗闇を照らすという懐中電灯のような機能もあるらしい。
便利アイテムで、武装は無いようだ。
一緒にショットガンのような形状の魔法銃が置かれていて、『名称』が『魔法のショットガン』となっていた。
『階級』は、『
この『魔法のショットガン』は、魔力を貯めて大きめの魔力弾を発射する構造になっている。
一発の威力を大きくする為の仕様らしい。
かなりかっこいいので、俺が使おうと思っていたのだが……
「これはワシにくれんかの〜。これがあれば、近距離専門の『アタッカー』だけでなく遠距離攻撃もできるのじゃ! 『ロングアタッカー』にもなれるのじゃ! ちょうど飛び道具が欲しいと思っていたのじゃよ! ワシのためにあったような装備じゃ! いいじゃろ? グリム」
なぜかツクゴロウ博士が、欲しいと言い出してしまった。
九十五歳のツクゴロウ博士に戦闘力を期待してる人は、一人もいないと思うのだが……。
本人のこのやる気は何なんだろう……?
杖で好きなように暴れ回れる『アタッカー』で充分だと思うけど……飛び道具も欲しいわけね。
まぁ本気で戦おうと思ったら、そういう発想になるのはわかるが……。
俺としては、自分が使いたい気持ちが強いのだが……。
ここで、断るのも大人気ないので……やむを得ず了承した。
まぁどうしても俺が使いたい場合は、『波動複写』でコピーすれば、同じものが作れるからいいけどさ……。
ただツクゴロウ博士とお揃いになるのは絶対に嫌だから、自動的にもう使えないことは確定だけどね……トホホ。
白髪のチリジリロン毛のじいさんが『グラサン』をかけ、『革ジャン』と『革ズボン』を着て、ショットガンを構えている姿は……シュールすぎる……トホホ。
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