800.魔法AIで、何か作ろう!

 午後になって、少し時間ができたので秘密基地『竜羽基地』にやって来た。

 ここに作ってある工作室を使う為だ。

 前に、ものづくりに使う俺専用の広い工房を作ってあったのだ。


 魔法AI 『知性インテリジェンスボール』と、小型魔法AI 『知性のインテリジェンスキューブタイプクワトロ』を使って、何かを作ってみようと思っている。


 魔法AI 『知性インテリジェンスボール』は、昨日、テスト用第六号迷宮『ゴーレマー迷宮』で手に入れたものだ。


 『ゴーレマー迷宮』で生産するゴーレムに使用する魔法AIということだった。

 ピンク水晶のような質感で、バレーボールくらいの大きさの玉である。

 魔法AIの大きさから言って、ある程度大きいゴーレムにしか使えない感じだ。

『階級』は、『極上級プライム』となっている。

 俺の感覚では……『究極級アルティメット』や『伝説の秘宝級レジェンズ』でもいいような気がするが……多分、魔法AIの中での階級付けということなのではないだろうか……。

 まぁいつものことながら、階級の基準はよくわからないから、考えても無駄なんだけどね。


 小型魔法AI『知性のインテリジェンスキューブタイプクワトロ』は、移動型ダンジョン『シェルター迷宮』で手に入れたものだ。


『シェルター迷宮』に生産設備がある機械の守護兵『自律型人工ゴーレム 魔機マギマシマロイド MR1型』に、使用されている魔法AIである。

 一辺が一センチくらいの立方体なので、小型で、武器などにも内蔵することができる。

『階級』は『究極級アルティメット』となっている。

 武器に内蔵すれば、『知性あるインテリジェンス武器ウェポン』が作れるだろう。


 まずは、小型魔法AI 『知性のインテリジェンスキューブタイプクワトロ』が使いやすそうなので、こっちから使ってみようと思っている。


 かなり優れたもののようで、『波動鑑定』で出てくる説明には、対象に埋め込むだけで、その対象の全体像を把握し、魔法的な神経組織のようなものを張り巡らせるらしい。


 ただこの魔法AIを埋め込んだだけでは、対象が本来持つであろう機能以上のものは、稼働させることが難しいようだ。

 足のある人形に組み込めば、歩けという指示で歩く動作をする。

 しかし、足がない……例えば剣などに組み込んで、歩けと指示を出しても歩く動作をすることは難しいらしい。


 気になったので、改めて『シェルター迷宮』の迷宮管理システムのシェリーに念話を繋いで質問してみた。

 シェリーによれば、今の剣の場合は、足はないが剣が飛び跳ねるような形で地面を歩くという動作をする可能性はあるらしい。

 魔法AIを埋め込んで起動させた後の動きは、起動させた者の念の強さにも影響を受けるらしいのだ。

 動きを命じるときに、念とともにイメージも送れるようで、念の力が強いものが強くイメージしながら、剣に歩けと命じれば剣先で飛び跳ねるように歩かせることも可能なはずだとのことだ。


 なかなかに魔法的な感じだ……ただの機械的なプログラムではないわけだ。

 魔法AIは、念の指示を受け取り、そのイメージを動きに反映できるということだろう。


 ただ例えば、剣を浮遊させて動かすというようなことは、念でイメージを送っても、難しいだろうとのことだ。

 これも、念の力が強い者が行えば、理論上は絶対不可能ではないらしいが、通常は難しいそうだ。

 この魔法AIには、浮遊させるような魔術式が標準装備されていないかららしい。


 だが、例えば、剣に浮遊する魔術式が組み込んであれば、それを魔法AIが稼働させて浮遊することはできるとのことだ。


 逆に言うと、いろいろな魔法というか魔術式を組み込むことができれば、魔法AIがそれを稼働させ、様々な攻撃を繰り出すこともできるということのようだ。


 剣に、浮遊の魔術式や火を出す魔術式や水を出す魔術式を組み込んでおけば、魔法AIがそれを掌握して、使用者の指示で発動させることができるのだそうだ。

 念で指示を出すにしろ、発動真言コマンドワードを設定して唱えるにしろ、魔法AIはそれに従い機能を発動するということのようだ。


 使い方を工夫すれば、かなり多機能なものになると言うことだろう。


 だが普通に、この魔法AIを単体で使う場合は、人形を動かすというような単純なことができる程度と考えた方がいい。

 まぁ単純なことと言っても、手足があるものに使えば手足が動かせるわけで、関節などの機能を魔法的な神経が果たすわけだから、すごい高機能だけどね。

 そして、それをもとに武器を使って敵を攻撃させるとか……そういう事はできちゃうわけだから、充分すごいと言える。


 そして魔法道具を作る技術や能力がある人が使えば、かなり多機能な魔法道具や魔法の武器ができるということだ。


 そう考えると本当は、『ドワーフ』のミネちゃんみたいに魔法道具が作れる人が、この魔法AIを使った方が有効に活用できるのだろう。


 だが今回は、半分は俺の遊び的なチャレンジなので、あくまで俺が作ろうと思う。


 それを踏まえて、作りたい道具の具体的なイメージができたら、ミネちゃんに相談して手伝ってもらうのがいいだろう。


 この小型魔法AIの生産設備が再稼働しなくても、俺が『波動複写』すればすぐにコピーできるから、ミネちゃんにもあげてもいいんだけどね。

 自由に作りたいものを作ってもらえば、すごいものを作り出しちゃうかもしれないし。


 これらの魔法AIとしての特性は、基本的に 『知性インテリジェンスボール』でも同じようだ。

 違う系統の技術ということだったが、持っている特性は同じようなものらしい。


 ただあくまで性能的には、小型魔法AI 『知性のインテリジェンスキューブタイプクワトロ』の方が高いようだ。

知性インテリジェンスボール』は、元々人工ゴーレムに埋め込んで動かす為のもので、より複雑な動作は想定していないらしい。

 人型用のものは人の動き、多足生物型のものは動物の動きを再現しやすいプログラムのようなものが、組み込んであるのだろう。


 人工ゴーレムの馬を作ったり、馬車を作ったりするのには向いているのだと思う。

 馬車自体に、足をつければ、自走する馬車ができるだろう。

 やはり某人気アニメに出てくる猫のバスのように、動物型の馬車を作ってみたい。


 だがまずは、使いやすそうな小型魔法AI 『知性のインテリジェンスキューブタイプクワトロ』を使って、何か作ってみるのだ。


 ただそうは言っても……まだ何を作るか思い浮かばないんだけどね。

 悩むところではあるが……この悩む行為自体も楽しいと言える。


 例えば……可愛い動物の人形を作って、はめ込んで動くようにしたら、すごく楽しそうだ。

 だが、俺の仲間には可愛い動物たちもいっぱいいるし、敢えて人工ゴーレムで作る必要は、ないんだよね。

 もう少し、変わったものがいいなぁ……。


 今ふと思ったのだが、この魔法AIを使えば、単純作業をする生産ロボットみたいなものが作れそうだ。

 人型のゴーレムを作って、両手に包丁も持たせて肉をミンチするとか、そういう単純作業はすぐにできそうだよね。

 ハンバーグも作り放題になるな……

 ただ……肉をミンチするだけなら、わざわざゴーレムにやらせなくても、ミンチする魔法道具をミネちゃんが作ってくれるだろうから、そっちの方がいいだろうけどね。


『魔盾 千手盾』みたいに、自分で動くことができる盾を作って、人々を守らせるというのは面白いかもしれないなぁ。

 千手盾ほどのハイスペックなものはできないだろうが、簡易量産型みたいな感じで作ったら面白いかもしれない。


 丈夫な素材の盾に、手足をつけて動けるようにすれば、簡単に作れそうだ。


 最初のお試し作品としては、いいかもしれない。

 よし、歩く盾を作ってみよう!



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