799.大海域は、アトラクションエリア?

 俺たちは、海の魔物に『操魚の矢』を打ち込んで、俺と『魚使い』ジョージの二人でスキルを使って、仲間にするという作業をしていたのだが……途中で新たな事実が判明した。


 それは……うちの天才児二人……リリイとチャッピーが、自分もやる的なノリで……『テイム』スキルを使ったところ、『操魚の矢』を打ち込んだ魔物を仲間にすることができたのだ。


 これには驚いたが、改めて検証してみた結果、俺でなくても、レベル差が大きい格下の魔物なら、『テイム』スキルで仲間にできることが判明したのだ。

 もちろん『操魚の矢』を打ち込むのは大前提だが。


 この事実がわかったのは、非常に大きい。

 リリイとチャッピーの大金星なのだ。


 試しに、リリイとチャッピーに『操魚の笛』を吹きながら、仲間になれと念じてみてもらったら、その方法でも仲間にできることがわかった。


 つまり俺がやっている仲間にする方法は、仲間たちでもできるということが判明したのだ。

 そしてポイントは、レベル差であるということがわかった。


 リリイとチャッピーは、念の力が強いからなのか、20くらいレベルが下の相手なら仲間にできていた。

 他のメンバーでも、概ね30くらいのレベル差があると仲間にできるようだ。

 確かめるために、レベルの低い魔物にも『操魚の矢』を打ち込んで、みんなに実験してもらったのだ。


 これによってレベル差が重要だということが確認でき、レベルの低い魔物は、仲間たちで仲間にできるということが確定した。

 これで、一気に仲間にできる数が増える。

 レベルの高い魔物だけを、俺やジョージが仲間にすればいいということになるので、かなり楽になる。


 これは画期的だ!


 正直、気の遠くなる作業と思っていたから、気持ちが一気に軽くなった。


 俺の仲間たちの中で一番レベルが高いのは、真祖吸血鬼であり始祖であるドラキューレさんことヒナさんのレベル89だが、次に高いのは『マナ・アーマークラゲ』たちのレベル80だ。

『マナ・アーマークラゲ』たちなら、ほとんどの魔物に『操魚の矢』を打ち込んで『テイム』するというやり方で、仲間にできるはずだ。

 触手も凄い数だし、『操魚の矢』を一気に投げつけて、まとめて『テイム』することもできるだろう。

 かなり効率も良いはずだ。


 もうこうなったら……レベルの高い魔物以外は『マナ・アーマークラゲ』たちに丸投げするしかない。


 クラゲッティたちの今後の頑張りに、期待しよう!


 この大海域が終わったら、ここよりもっと陸地寄りの『マナ・メガロドン』たちが暮らす海の魔物の領域『メガロドンの領域』にいる魔物たちも、クラゲッティたちに頑張って仲間にしてもらおう。


 得意技の『丸投げ』の発動となってしまうが、クラゲッティたちもやることがあったほうが、楽しいと思うんだよね。



 魔物を仲間にする実験が終わったところで、今日のところは一旦終了とした。


 帰る前に、一つだけ気になったことを『スキュラ』のキュラリたちに尋ねてみた。


 ここは、魔域であり陸地の部分も魔素が濃いので、もしかしたら『マシマグナ第四帝国』の人造迷宮がないか確認しておきたかったのだ。


 だがキュラリたちの返答は、よくわからないというものだった。


 みんな陸上部分にはあまり興味がないらしく、意識していなかったらしい。

 ただ、人族が陸地部分に入り込んでいたという記憶はないということだった。


 多分……人造迷宮は無いよね。


 どう考えても……こんな大量の魔物がいる『海の魔域』に作るのは非現実的すぎる。

 陸地からも離れすぎていて、訪れること自体がかなり困難だから迷宮を作る意味がないよね。


 まぁ『マシマグナ第四帝国』は、飛行する『操縦型人工ゴーレム』を作る技術はあったようだから、訪れること自体はできたと思うが。


あるじ様、人族が作るという迷宮は無いと思いますが、この領域には天然の大迷宮があります。ただ入り口がどこにあるのかは、分りません。おそらく……いずれかの島にあると思いますが……」


 キュラリが、そんな情報を教えてくれた。

 普通に言っているが……かなりのビックリ情報だと思うけど……。

 天然の大迷宮って……なんか胸躍るよね!


 おそらく……未発見の天然迷宮ってことだよね。


 個人的な興味としては……ぜひ入り口を探し出して、探索に行ってみたいが……現時点での優先順位としては、高くないんだよね。


 俺が探すべきは、『マシマグナ第四帝国』が作った人造迷宮なのだ。

 そこに、『勇者武具シリーズ』などの強力なアイテムがある可能性が高いからね。


 まぁ……そうは言っても、簡単に見つかるなら、見つけてしまいたい。


 ダメ元で、『波動検知』で迷宮の気配を探ってみる——


 ……………………。


 駄目だ……うまく感じ取ることができない。


 魔素が濃すぎるからか……迷宮の気配とその入り口の気配も含め……全てがざらついている感じで、上手く感じ取ることができない。

 まぁ……今まで人造迷宮を探した時も『波動検知』で、ダイレクトに見つけられたわけじゃないけどね。

 なんとなくの直感的なものが大きかったのだ。

 だから今回も、直感に頼ったほうがいいかもしれない。

 この直感は……本当の直感なのか、『第六感』スキルや『財宝発掘』スキルが影響を与えているのかはよくわからないが、なんとなくそう思う的なものなんだよね。


 その直感的な感覚で言うと……迷宮の入り口は、多分この中央の島のどこかにあると思うんだよね……。


 この中央の島は、この大海域にある島の中では一番大きい。

 おそらく面積は、大森林の北にある『霊域』の二倍くらいあると思うんだよね。

 『霊域』は、俺の感覚でいうと東京の山手線の内側くらいの面積だったはずだから、その二倍は結構な広さになる。

 ちなみに大森林は東京都くらいの面積で、大海域はその二倍以上の広さだ。


 この島を探索しながら、気長に探すことにしようと思う。

 宝探し的な感じで、楽しんでもいいよね。


 残り六つの島、そして十五くらいある小島を探索しても、楽しそうだ。

 ただの魔物の領域で、魔物が襲ってくるだけかもしれないが、珍しい魔物がいるかもしれないし、魔物素材として貴重なものが手に入るかもしれない。

 そしてなんといっても、魔素を大量に浴びて育っている植物の中に、新たなすごい植物があるかもしれないよね。

 特に美味しい果物系を期待したいところだ。


 この大海域は、俺の仲間たちにとって、ある種のアトラクションエリアという感じで面白いかもしれない。

 普通の人にとっては、魔物の巣窟で足を踏み入れる気になどなれない恐ろしいエリアだが、今の俺の仲間たちにとっては、ほんとに冒険アトラクション的な感じで楽しめるかもしれない。


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