714.伝説の料理、テュナマヨ。

 俺は、昨日の戦いで『コロシアム村』の破壊された場所を建て直すつもりなのだが、バタバタしていてまだ手をつけていない。


 人目が少なくなる夜に……今夜にでも魔法の力で、一気に直してしまおうと思っている。


 ほとんどの人々が、まだ『コロシアム村』に残っているので、一夜にして修復されていたら、かなりの衝撃映像だろうが、もはや多少のチートは見られてもしょうがないと思っている。

 昨日の戦いで、かなり見られているからね。

 ただ戦いと関係ない建設チートは、本当は隠したいんだけどね。


 まぁ妖精女神の御業ということで、誤魔化せばいいだろう。

 気持ち的に、早く綺麗にしてしまいたいんだよね。


 そして、この際、『コロシアム村』をもう少し拡張することにした。


 拡張の最終ラインには、セイバーン公爵領で標準仕様になっている外壁をしっかり作ろうと思っている。


 この拡張で、完全に本体の街である『セイセイの街』よりも、広くなってしまう。

『コロシアム村』は、独立自治区のような特別な扱いになっているが、一応、『セイセイの街』の付属の村なのだ。


 それなのに、本体の『セイセイの街』よりも巨大になってしまうという不思議な状態になるが、ユーフェミア公爵がいいと言ってくれているから、大丈夫だろう。


『セイセイの街』の守護のピオーネ男爵は、微妙かもしれないが……性格が悪い人ではないと思うので、大丈夫だろう。

 どちらかというと……ユーフェミア公爵の注目度が高まってしまって、ビビっているかもしれない。



 この拡張にあたって、ニアには、『猿軍団』の『赤リスザル』の生息域である森を作ってほしいと頼まれた。


 この近くに『赤リスザル』たちの住んでいた森があるのだが、その森を俺の新しい『固有スキル』の『絶対収納空間』で再現してほしいというのだ。


『絶対収納空間』の『データ収納』コマンドを使うと、特定の空間そのものをコピーして収納できる。


 そのデータのコピーを任意の場所に貼り付ければ、そこに同じ環境が再現されるのだ。


 これによって、この『コロシアム村』の内部に『赤リスザル』たちの生息地、いわば家を作ってほしいというのである。


 『赤リスザル』たちは、人なつこくて、訪れた人たちの人気を得ているし、猿たちも意外に『コロシアム村』での生活が好きになっているというのだ。


 これはニアさんの話で、直接猿たちから聞いてないから、盛っている可能性はあるけどね。


 ただ俺が見る限り、猿たちも楽しそうにこの街を闊歩し、人と触れ合っている感じだ。

 それなりに楽しんでいるのは、間違いないだろう。


 そこでニアさんは、このまま『コロシアム村』の仲間として『赤リスザル』たちを定着させることにしたようだ。


 ただそれにあたって、彼らの元々住んでいた森を作ってあげようということのようである。


 一応、ニアさんなりの気遣いだと思う。



 ちなみに『白島猿しろしまざる』……通称『白ニホンザル』たちは、落ち着いたら元の住処である『聖血島』に戻してあげる予定らしい。

 猿たちにとっては、何よりだろう。

 でもきっとまた、ニアさんの都合で呼び出されるだろうけどね……不憫な奴らだ。



 今回の四日間の『三領合同特別武官登用武術大会』を手伝ってくれた『聖血鬼』のメンバーや『フェアリー商会』の人たちも、ある程度落ち着いたら元の業務に戻ってもらう予定だ。


 ただもう数日は、スタッフたちも残る必要があるのだ。

 訪れている人々に『コロシアム村』に残ってくれるように案内していて、実際残ってくれそうだからね。


 昨日の終戦後、魔物化因子を取り込んでしまっている人が、魔物化してしまわないか確認する意味でも、数日残るようにアナウンスしたが、ほとんどの人はそれを聞いて残ってくれるようだ。


 明日の炊き出しのときには、体内の魔物化因子を浄化できる対策ワインを振舞酒として配ろうと思っている。


『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんにもらった『血晶石ブラッドストーン』で作った水溶液を、混入した対策ワインを配るのである。

 これによって、知らない間に魔物化因子を体内に宿した人たちが、知らない間に魔物化因子を浄化して元に戻るという状態になるはずである。


 そうすれば、この村を離れても大丈夫だろう。


 ただなんとなく……そういうのとは関係なく、ほとんどの人は、しばらく『コロシアム村』を楽しみたいというような雰囲気を出しているけどね。



 炊き出しがほとんど終わったタイミングで、『格闘術プロレス』の伝承者のアンティック君がやってきた。


 アンティック君は、『フェアリー商会』のお店で『マヨネーズ』を売っているのを発見し、自分たちに伝わっている幻の調味料と同じかもしれないとわざわざ教えに来てくれたのだ。


『マヨ』という名前で伝わっている幻の調味料で、レシピがなくなり再現できない状態だったのだそうだ。


 アンティック君は、名前の感じと見た目と食べたときの美味しさが、伝えられている『マヨ』と同じではないかと考えたらしい。


 そしてそもそも伝わっているのは、『マヨ』という調味料ではなく、それを使った『テュナマヨ』という伝説の料理なのだそうだ。


『テュナマヨ』を、炊き上げた米の中に入れて三角形に成形すると、『おむすび』というスタミナを維持できる特別な料理になると伝えられているらしい。


『テュナ』のレシピは、残っていて……マグロなどの魚をオリーブオイルで煮たものだそうだ。


 この話を聞いた時点で……俺の中では確定した!


 これって完全に『ツナマヨ』だよね!


『シンニチン王国』に伝わっているもう一つの伝説の料理『テュナマヨ』は、『ツナマヨ』で間違いないと思う!


 そして、それを入れて作る『おむすび』は、もちろん『ツナマヨおにぎり』のことだろう。


 アンティック君たちは、船で商売の旅をしていたので、マグロを捕まえて『テュナ』自体はよく作っていたらしい。


 もしやと思って訊いてみたら…… 『テュナ』の作り置きを持っているそうだ。

 オリーブオイルに浸して、保存食の一つとして活用していたとのことである。


 しかも今持っているというので、すぐに出してもらった。


 ……間違いない!

 見た目は完全に『ツナ』だ!


 俺はアンティック君に、伝説の料理『テュナマヨ』は、俺の知っている『ツナマヨ』という料理と同じであるということを伝えた。


 そして、今取り出してくれた『テュナ』を分けてほしいとお願いした。


 アンティック君は、快く譲ってくれた。


 そして俺は、すぐに『マヨネーズ』を取り出し、『ツナマヨ』を完成させた。


 俺は、迷わず口に放り込む!


「うおぉぉぉぉ、美味い!」


 間違いない!

 俺の大好きな『ツナマヨ』だ!


 『ツナマヨ』という存在自体を、忘れていたけど……俺は『ツナマヨ』が大好きだったのだ!


 おにぎりの具の中でも、『ツナマヨ』が一番好きだったかもしれない。


 いやぁ……これは大収穫だ!


 この素晴らしい食べ物『ツナマヨ』を異世界に広めなければ!


 今度、海に行って、マグロを探して大量にゲットしよう!



 俺は、アンティック君たちにも食べさせてあげた。


 他の『シンニチン商会』のメンバーも集まってきて、今ある分は食べきってしまった。

 みんな……感動に打ち震えながら食べていた。


 伝説の料理が食べれたんだから無理もない。

 そして、めっちゃ美味しいからね!


 ただ……この『ツナマヨ』にありつけなかった俺の仲間たちは……恨めしそうな顔で、俺を見ている……。


 やばい……なんとかしなければ……。


 アンティック君に聞いたら、もう少し作り置きがあるということだったので、それも分けてもらうことにした。


 それで何とか仲間たちに試食をさせてあげて……あとは早くマグロを捕まえに行かないと……。


 待てよ……マグロが手に入るということは……赤身、中トロ、大トロ……寿司が食えるじゃないか!


 これはすぐにでもマグロ漁に行かないと!


 そんな思いで『魚使い』ジョージの方を見ると……ジョージもやる気満々の顔で、瞳をキラリと輝やかせた。


 場合によっては、ジョージに先行してマグロ漁に行ってもらってもいいかもしれない。


 今度『領都セイバーン』の式典で開催される『美味い屋台決定戦! 屋台一番グランプリ』にも、出店してみよう!


 これも人気メニューになるのは、間違いないだろう!



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