704.光柱の巫女の、これから。
『雷使い』スキルが発現した虎耳の女の子ラムルちゃんの、今後についての話し合いが終わった。
あと気になるのは、『光柱の巫女』のみなさんが、今後どうするつもりかということだ。
「『光柱の巫女』の皆さんは、これからどうしますか?」
国王陛下が、単刀直入に切り出した。
「しばらくは、テレサと行動を共にしようと思います。この可愛い『従者獣』たちのこともありますし」
「もちろん、人々の為にできることがあれば、力を尽くすつもりです」
「私は……この子たちと一緒に暮らせればいいと思っていたのですが……昨日の戦いの中で……私にできることがあると知りました。人々を守る力が……微力ながらも与えられたなら、その責任を果たしたいです。ただ正直……何をどうしたらいいのか、まだわからないんです」
老巫女のサーシャさん、熟女巫女のアリアさん、新人巫女のテレサさんは、それぞれの思いを口にした。
「皆さんは、本来自由な存在だから、心の赴くままに進めばいいと思いますよ。今まで通り『セイセイの街』で教会を運営しながら、子供たちと暮らせば良いでしょう。助けを求めたい人は、自然と教会に集まってくるはずです。ただ……もしよろしければ、月に一度か二度、場所を決めて大きな礼拝会をやるとか、この領内の各市町を回ってみるのもいいかもしれませんよ」
国王陛下が、自由にした方が良いと話しつつ、何をしたらいいかわからないというテレサさんの為だと思うが、一つの指針を提案をしてくれたようだ。
「はい。そうですね。そのような形で多くの人に接して、祝福を授けてあげたいと思います」
テレサさんは、目を輝かせた。
「いいわねぇ。それは楽しそう」
「そうですね。より多くの人が、喜んでくれそうです」
サーシャさんもアリアさんも、乗り気なようだ。
「それじゃぁ、こういうのはどうだろう……。月に一度、日にちを決めて、『コロシアム村』で大礼拝会を行う。グリムに大きな教会を作ってもらおう。それ以外に十日に一度、各市町を訪れて礼拝を行うというのはどうだい? 転移の魔法道具を使えば、すぐに行けるだろう」
ユーフェミア公爵が、具体的な提案をしてくれた。
そして俺のほうに視線を向けた。
話にあったように、俺に大きな教会を建てろということだろう。
政教分離の建前があるから、国や領で教会を建てることはできないだろうからね。
俺が建てて、寄進するというかたちにするなら何の問題もない。
転移の魔法道具も貸し出してほしいということだと思うが、元々『光柱の巫女』の皆さんにも貸し出ししようと思っていたので、特に問題はない。
教会は、大人数が収容できる巨大なものにしよう。
『セイセイの街』の教会は、かなり狭いからね。
『コロシアム村』に、大きな教会があって毎月決まった日に大礼拝会があるとわかれば、それを目指して訪れる人もいるだろう。
『セイセイの街』の人で普段行けない人でも、その日だけは礼拝に来る人もいるかもしれない。
そんな人たちが多く集まっても、十分収容できるような教会にしようと思ってる。
その日は、縁日のようにして屋台をいっぱい出して、盛り上げてもいいだろう。
「『コロシアム村』に、大きな教会を作ります。よかったら……皆さんに、デザインをどうしたらいいかアイデアをいただきたいのですが……。転移の魔法道具も貸し出そうと思っていましたので、それを使っていろんなところに足を伸ばしてください。セイバーン公爵領内の各市町を転移先として登録した転移の魔法道具を、後でお渡しします」
俺がそう話すと、皆さん、喜んでくれた。
「大きな教会をデザインできるなんて、楽しそうね」
「ほんとですわね。どうせなら、荘厳で美しい教会がいいですわね」
サーシャさんとアリアさんが、嬉しそうだ。
「あ、ありがとうございます。あとできれば……ピグシード辺境伯領も訪れたいと思います。悪魔の襲撃で、多くの人が命を落としたということですし、生き残られた方の心を少しでも癒すことができればと思います」
テレサさんは、そう申し出てくれた。
「まぁ、ありがとうございます。ぜひそうしていただけると、嬉しいです。領民たちは皆喜んでくれると思います」
アンナ辺境伯が、笑顔で礼を言った。
「それはいいことね。ぜひそうしましょう」
「そうですね。ピグシード辺境伯領も、ヘルシング伯爵領も、ほとんど教会は機能していませんからね」
サーシャさんとアリアさんも、大賛成のようだ。
「そういえば……教会のセイバーン支部長が魔物化して死んじまったけど、今後どうするんだい?」
ユーフェミア公爵が、微妙な表情をしながら尋ねた。
「そうですね。彼は残念な最期でした。彼の死は悼みますが、教会としては恥ずべきことでした」
「新しい支部長を決めなければなりませんが、我が教会は人材不足ですからね。期待はできないかもしれませんね」
サーシャさんもアリアさんも、渋い表情になった。
「まぁ一度、王都の教会本部に戻って、話をしてきましょう。報告をあげないと神官長がスネますからね」
「そうですね。報告を上げがてら、人材についても、私たちの今後の活動についても、話してきた方がいいですわね」
サーシャさんとアリアさんは、この後、一旦二人で王都に戻ることになった。
国王陛下が、転移で送ってくれるとのことだ。
サーシャさんたちにも、転移の魔法道具を貸し出すので、帰りは自分たちで戻ってこれるだろう。
国王陛下は、すでに一度王都に戻っていたようだ。
俺と『セイリュウ騎士団』が、『魔物の博士』たちのアジトを制圧している間に、転移の魔法道具で王都に戻っていたらしい。
そして、いろいろな手配をして、またすぐに戻ってきていたようだ。
王城を離れていて大丈夫なのかと思ったが、周りに優秀な人材が多くいるだろうから問題ないのかもしれない。
そしてなんとなく……国王陛下も王妃殿下も、ここにずっといたいような雰囲気だ……まぁスルーしてあげよう。
今上がった報告を受けて、再度王都に戻っていくつか指示を出してくるようだ。
そしてすぐに戻ってくると言っていた……。
やっぱりこの人……ここにいたいんだなぁ……まぁいいけどさ。
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