694.装飾品の中に、掘り出し物が……。

『魔盾 千手盾』の付喪神であり守りの勇者の残留思念でもあるフミナさんと、吸血鬼の『真祖の血統』である『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんの説明のお陰で、吸血鬼の始祖ドラキューレさんについての事情がだいぶわかった。


 彼女は元『癒しの勇者』で、魔王の呪いにより吸血鬼に変性してしまったという事情だった。

 そして『斬撃の勇者』であるケントさんと結ばれ、今は五百年毎に繰り返し巡り会うというラブロマンスをしているようだ。

 そして、そろそろ目覚める頃とのことである。


 そして、家となっているのは『マシマグナ第四帝国』の作った人造迷宮の本格稼働迷宮第一号の『希望迷宮』ということだった。


 カーミラさんは、いずれ家に戻るときには、俺たちも一緒に連れて行ってくれると約束してくれた。

 今から楽しみである。


 親友だったフミナさんを見たら、母親のヒナさんも喜ぶだろうとカーミラさんも楽しみにしている様子だった。


 本当は、もっと色々と聞きたいことがあるが、一旦は話を終了することにした。

 時間がいくらあっても足りないからね。

 他の勇者のことや当時の帝国のことなど話題は尽きないが、徐々に訊いていけばいいだろう。


 朝食を食べながらの話だったが、みんなもうほとんど食べ終わっている。



 俺は、ここに集まっている皆さんに、メカヒュドラの宝物庫と首領のアジトで発見した装飾品を、お土産としてプレゼントすることにした。


 大型宝箱二つを、魔法カバンから取り出す体で『波動収納』から取り出した。

 宝箱の蓋を開けると、女性陣からどよめきが起きた。


 そしてみんなで手分けして、装飾品を一通り並べてみた。


 なにか……新作ジュエリーの展示会みたいになってしまった。


 女性陣は、目をキラキラさせている。


 勇ましい女性ばかりだが、やはり綺麗な装飾品は好きなようだ。


 指輪がかなりあって、その指輪はリングサイズが自動で調整されるという話をすると、皆衝撃を受けつつも、更に目を輝かせていた。


 ティアラなどの髪飾り、イヤリング、ネックレス、ペンダント、ブレスレット、アンクレット、ベルトなどの腰飾り、指輪が並べられた。


 使用されている宝石などは、一般的なもののようだが、どれもデザイン性が優れていて素晴らしいものばかりだ。


 俺は、装飾品は必要ないので、みんなで山分けしてもらってもいいという話をした。


 みんなにあげてしまっても、俺の場合、必要ならいつでも同じ物を手に入れることができる。

『波動複写』でコピーすることができるからだ。

 古代文明の遺物は貴重なので、一応、すべての物を一旦『波動収納』にしまっている。

『波動収納』に一度収納してしまえば、波動情報が分かるので、いつでも『波動複写』でコピーすることができるのだ。

 そして時間があるときは、コレクター魂のままに、『波動複写』でコピーして、『波動収納』の中にフォルダを作って管理しているのだ。


 俺の提案したみんなで山分けという話は、何を選ぶかということと、どう配分するかということが微妙に難しいし、時間がかかると判断されたようで、王妃殿下が「一人二つにしましょう」という鶴の一声を発し、そういうことになってしまった。


 一人二つになったことで、逆に選びやすくなったようだ。


 ここにいるメンバー全員が一人二つ選んでも、かなり残ると思うが、それはそれでいいだろう。

 今後、プレゼント用に使ってもいいだろうし。


 様子を見ていると、やはり指輪に興味を持っている女子が多いようだ。

 あと、腰に巻くチェーンのような装飾品も珍しいようで、気に入っている女子が多い。


 確かにドレスにも合うし、いろんな服に合う感じなんだよね。

 アクセントとしても、いい感じだしね。


 そういえば、この装飾品についてはちゃんと見ていなかった。

 もしかしたら、凄いお宝があるかもしれない。


 そう思いながら改めて装飾品を見ていると、一つ気になるものがあった。


 シルバーのチェーンに、ハートの形のペンダントトップが付いているペンダントだ。


 ピンク色のハート型ペンダントトップが、微妙に色がくすんでいる。


『波動鑑定』をしてみると……『名称』が『魔具 ラブオーナメント』となっていた。


 魔法の装飾品のようだ。


「それって……? すいません、ちょっと見せてください」


 そう言って俺の横に現れたのは、『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんだ。


 まじまじとペンダントを見ている。

 そして少し驚いたような顔をした。


「これは……色がくすんでいるけど、間違いない……。マナミが使っていたラブオーナメントだ……」


「フミナさんは、このアイテムをご存知なんですか?」


 俺は期待を込めて尋ねた。


「はい。これは『九人の勇者』の一人『愛の勇者』が使っていた魔法の武具です。私『魔盾 千手盾』も含めた『勇者武具シリーズ』と言われているものの中で、最強との呼び声が高かった武具です」


 フミナさんは、驚きと懐かしさが入り混じった複雑な表情になっている。

 そしてなんとなく……悲しげな感じだ。


 それにしても、本当に凄いお宝が眠っていたらしい。


 ここに並んでいる装飾品の中では、一番目立たない感じだったが、『愛の勇者』が使っていた武具だった。

 しかも、勇者たちの使っていた武具の中で、最強との呼び声が高かったもののようだ。

『正義の爪痕』は……首領は……気づかなかったのだろうか……?

 いや……そんな事は考えにくい……。


 待てよ……この色のくすみは……。

 もしかして……起動ができなくて、使えていなかったのかもしれない。


 今までの例からすれば……『魔盾 千手盾』も『魔槍 フタマタ』も、起動させるのに大量の魔力が必要だった。


 この『魔具 ラブオーナメント』も、その可能性が高い。


 俺は、早速魔力を流してみることにした。


 ……やはりそうだ!


 もう三回目なので、だいぶ慣れた。

 最初に魔力を流すと、後は自動で吸い上げられる。

 そして、どんどん吸われていく。

 ある程度すると、魔力の吸い上げ速度が弱まるというパターンは完全に同じだ。


 くすんでいたピンク色が、鮮やかになった。


「はじめまして、マスター。私は、ラブオーナメントのラブリーです。呼称は前マスターがつけたものです。変更が可能です。変更しますか?」


 突然、機械的な音声が流れた。

 この魔法の武具は、音声応答ができるようだ。



 

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