628.呼ばれて飛び出て、こんにちはだし!

『化身獣』となって、神獣の憑依体となった『龍馬たつま』のオリョウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・タートル』のタトルの前には、向かい合わせとなってパートナーとなった『神獣の巫女』が浮かんでいる。

 セイバーン公爵家長女のシャリアさん、ビャクライン公爵家長女で『先天的覚醒転生者』でもある四歳児ハナシルリちゃん、スザリオン公爵家長女のミアカーナさん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員でもあるドロシーちゃんの四人だ。


 彼女たちはそれぞれ、『セイリュウの巫女』『ビャッコの巫女』『スザクの巫女』『ゲンブの巫女』になって、今は戦巫女状態になっている。


 シャリアさんたちは、向きを反対に変えて内側を向いた。


 東に位置している『セイリュウの巫女』シャリアさんと、西に位置している『ビャッコの巫女』のハナシルリちゃんが、互いに向き合うかたちになっている。

 南に位置している『スザクの巫女』ミアカーナさんと、北に位置している『ゲンブの巫女』ドロシーちゃんも、互いに向かい合っている。


 そして四人は、互いを見やりながら頷くと、共に天を見上げた!


「「「「出でよ! コウリュウの化身!」」」」


 四人は、神器をかざしながら叫んだ!

 どうも五神獣の最後の一体……中央に位置するコウリュウ様の化身獣を呼んだようだ。

 プロセス的に…… 四神が現れて、最後に中央のコウリュウ様を呼ぶというシステムなのだろうか……。

 そして……このコウリュウの化身獣って……多分……あのクセの強いお方だよね……?


 ——スッ


 おお、やっぱり!


 来ちゃったらしい……転移で現れたようだ。


「呼ばれて飛び出て、こんにちはだし! やっとうちの出番だし! 『絆』通信聴いてムズムズしてたら、天声がごちゃごちゃ言ってきたし。途中からコウリュウ様が話してきて、ビックリだし。なんか……ドラゴン神が“マブ”になりたいって言うし、マジアゲアゲ! ドラゴン神と“マブ”なら、もうドラゴン王は確実だし! まじまんじ! ああ、わかったし、すぐやるし。なんかコウリュウ様に怒られたし。でも気にしないし! じゃぁ、うちも行くし! 化身獣覚醒! コウリュウ憑依!」


 霊域にいるはずの鯉の霊獣『ライジングカープ』のキンちゃんが、現れるなり、色々言っている……。

 突っ込みどころが満載だが……発動真言コマンドワードを唱えたようで……


 キンちゃんの首らしき位置に付いていた『想いのペンダント(黄)』の宝石が、強い光を発している。


 そして、こいのぼりサイズの巨大なキンちゃんを、みるみるうちに包み込んでいく……


 光は、巨大なまん丸に球に変わった。

 光の眩しさが収まると……


 おお! サイズが小さくなっている。

 今までと同じように、透明なシャボン玉のようなものになったのだが、サイズが普通の人間くらいの大きさに変わっているのだ。


 そして中には……黄金の龍がいた!

 キンちゃんが、『種族固有スキル』の『登竜門』を使って、『昇龍ライジングドラゴン』という『特別竜エキストラドラゴン』になった姿とそっくりだ。

 ただ違いは…… 『昇龍ライジングドラゴン』の時は、所々にピンクの桜の花びらのような鱗が点在していたが、今は黄金一色という点だ。


「これ凄くね! なんか頭の中に、コウリュウ様がずっといるし。何か合体した感じだし! もうドラゴン王ならなくてよくね! うちもうドラゴン神だし! 超うけるんですけど! マジ半端ねぇし! ああ、はいはい。わかったし。またコウリュウ様に怒られたし。“はい”は一回でいいとか細かいし。ちょっとうざいんですけど。ああ、はいはい……また怒られたし。コウリュウ様結構厳しいし。でも気にしないし! じゃあ、行くし! クリスティアちゃん、カモンだし! あんたの出番だし!」


 キンちゃんは、コウリュウ様を憑依させても相変わらずだ。

 だが密かに怒られているようだ……。

 まぁ本人はあまり気にしてないようだが……。

 てか、神様にうざいとか言っちゃ駄目でしょうよ!


 そして最後に、第一王女のクリスティアさんを呼んでいた。


「きゃっ」


 小さな悲鳴と共に……そのクリスティアさんが宙に浮かんだ。

 呆然とした表情になりながら、キンちゃんに近づいていく。

 近づいていくと言うよりは、何かの力で運ばれている感じだが。


 そして、キンちゃんの前に止まり、向かい合った。


 今、クリスティアさんの中にも、コウリュウ様の呼びかけがあるようで会話をしている。


「はい、わかりました。やり遂げて見せます! 行きます!  我こそはコウリュウの巫女、戦巫女としてその力を現さん! 化身獣とともに……今覚醒の時! 出でよ! コウリュウジョウ!」


 クリスティアさんが、発動真言コマンドワードを唱えた。


 すると……クリスティアさんの目の前に、黄金色に煌く杖が現れた!

 杖の先には水晶のような球が付いていて、それを杖の本体から伸びた龍の腕がつかむデザインになっている。


 クリスティアさんは、その『コウリュウジョウ』を手にとると、天に掲げて円を描いた!


変化チェンジ! 戦巫女装束バルキリーアーマー!」


 発動真言コマンドワードを唱えたようだ。


 杖で描いた頭上の円から光が降り注ぎ……クリスティアさんを包み込む……

 筒状の光の柱は、やがて丸みを帯びた球状になった。


 そして光がやわらいで、透明なシャボン玉形状になると……

 中には……黄金の鎧に身を包んだクリスティアさんの姿があった!


 右肩のガードパーツの上には、コウリュウの頭を模したものが乗っている。

 左肩のガードパーツの上には、コウリュウの尾を模したものが乗っている。

 クリスティアさんの纏っている神々しさと相まって、眩しくて直視できない感じだ。


 そして、手にしている『コウリュウジョウ』の先端の水晶のような玉からは、虹色に揺らめく淡い光が出ている。


 綺麗だ……思わず見とれてしまった。


 これで、五神獣の化身と五神獣の巫女が揃ったようだ。


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