606.恐ろしい、魔法道具。
『エンペラースライム』のリンが取り押さえてくれた『正義を爪痕』の潜伏構成員と、『クイーンピクシー』となったニアが殴り飛ばした潜伏構成員からも装備を奪った。
この二人も、先に捕まえた者と同じく、『隠密のローブ』をまとっていた。
そして、二人とも胸のあたりに白いブローチをつけていた。
よく見たら、最初に捕まえた構成員もつけていたので、確認してみた。
やはり特別な魔法道具だった!
『波動鑑定』によれば……
『名称』が『遠話のブローチ』となっていて、『階級』は『
詳細表示を確認すると……通信の魔法道具だったのだ。
親機一台と子機二十台のセットになっているようで、その中で相互に会話ができるという優れ物だった。
これで連絡を取り合っていたようだ。
やはり指令を出している人間が、どこかにいるはずだ。
別行動している『アラクネーロード』のケニーと、俺の分身『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーが、実は密かに、指示を出している者を捜索中なのだ。
早い段階で二人から念話が入っていたが、いまだに見つけられていない。
必ずこの近くで状況を確認し、指示を出しているはずなのだ。
だが、あの二人が見つけられないという事は、やはり何かのステルス機能がある状態で隠れているのだろう。
それからこの二人の構成員は、手のひらサイズの四角いキューブを持っていた。
大きめのサイコロといった感じである。
サイコロと同じように、1から6まで数字が入っている。
これを『波動鑑定』すると……
『名称』が『プリズンキューブ』となっている。
『階級』は『
やはりこれも凄いアイテムのようだ。
詳細表示を確認すると……ターゲットとして選定した対象を亜空間に引き込んで、閉じ込める魔法道具とのことだ。
『ロックオン』という
解放するときは『オープンゲット』という
一つのキューブで、六体まで閉じ込めておけるようだ。
なに、このアイテム!?
めっちゃ凄い機能だと思うんだけど。
まるで……モンスターを捕まえてトレーニングして戦う、人気アニメのボール型のアイテムのようだ。
魂のあるものを亜空間に置いておくという点は、『箱庭ファーム』と似ているが、対象を選定して無理矢理引きずり込むというのがすごい。
まさに亜空間の牢獄だ。
ニアはこれに吸い込まれ、閉じ込められたわけだ……危なかった。
『亜竜 ヒュドラ』や巨大ザメ魔物が突然現れたのは、これを使ったのかもしれない。
もしまた俺の仲間たちがこれに吸い込まれたらと考えると……冷静ではいられない。
早く全て回収してしまわなければ!
敵の第三波があるかもしれないが……まずは隠れている構成員を探し出して、この危険な魔法道具を回収してしまわなければ……。
俺は『絆』通信のオープン回線で、仲間たちに今の情報を伝え、可能な限り速やかに構成員を見つけ出すように指示をした。
実際には、オープン回戦は常に開かれているので、ほとんどの話は仲間たちに聞こえている。
それ故情報を伝えると言っても、重要なポイントを確認するだけで指示を出せるので、すぐ行動に移れるのだ。
指示は出したものの……魔法道具を使って気配まで消している構成員たちを見つけ出すのは、実際はかなり困難だ。
俺が各ブロックを回って、『波動検知』で地道に違和感を探すしかないかもしれない。
まずは『コロシアムブロック』に戻ろう。
ニアももちろん一緒に戻ってもらう。
ニアはまだしばらく人型でいるつもりなのだろうか……。
元の羽妖精に戻った方が、空が飛べていいんじゃないかと思うんだが……。
そう思ってニアに話を振ってみたら……
「なんかわかんないけど、人型に大きくなったら、羽が背中に収納できるようになっちゃったのよね。だから、飛ぼうと思えば飛べるのよ。ほらっ」
——シュッ
なんと、背中からトンボのような羽が四枚生えた!
マジか……。
飛べちゃうわけ!?
てか……収納できるようになっちゃったって何よ!?
なにその便利機能! さすがクイーンだわ!
服も元々そういう仕様の服だから、問題ないのか……。
そう思って見ていたら、ニアは当たり前のように空に舞った!
そして、楽しそうに飛んでいる。
戦いの最中だというのに……。
この『東ブロック』にいる皆さんは……口をぽかんと開けて見ている。
ていうか……なによこれ!?
めっちゃ凄いじゃん!
空中戦できちゃうじゃん!
めっちゃ羨ましい……チートだわ……ずるいわ……。
俺も羽欲しいなぁ……生えないかなぁ……。
俺は『ハイジャンプベルト』を使って、ニアとともに急いで『コロシアムブロック』に戻った。
それはいいのだが……ニアが巨大化していて……というか人間サイズになっていて……人々が衝撃を受けている。
誰もが口をぽかんと開けて、目が点になっている感じだ。
そして、なぜか誰も質問を投げかけない……。
多分ユーフェミア公爵をはじめとした俺の知り合いたちは、聞いても無駄だと思っているのだろう。
「ニアちゃんが大きくなったのだ! わぁい、抱き付けるのだ!」
「やったぁなの〜。ニアちゃん大好きなの〜」
リリイとチャッピーだけは、無邪気に喜んでいる。
「ニアちゃんは、ミネみたいに、いつもいっぱい食べてるから、大きくなったのです! ミネもこのまま食べ続ければ、巨人にだってなれるのです! 負けられない戦いの先にあるものは、巨人だったのです!」
『ドワーフ』のミネちゃんがそう言って、嬉しそうに近づいてきた。
そしてニアの巨大化というか……人型化を完全に勘違いしている……。
ミネちゃんがいくら食べても、巨人にはなりませんから!
負けられない戦いの先にも、いませんから!
そもそも食べる事は、負けられない戦いじゃないし!
と思ったのだが……いや待てよ……。
ニアのこの滅茶苦茶振りを考えれば……もしかしたら、ミネちゃんもクラスチェンジすれば……あるのかもしれないと思えてきた……。
なんか……ほんとに巨人になりそうで怖いんですけど……考えたら負けだな……トホホ。
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