325.おびえる、理由。
魔法陣がどこまで広がったかわからないが、一瞬にして結界が張られたようだ。
(ナビー、結界の範囲はわかるかい?)
(はい。今確認しています。構成員の分布領域は、隔絶できたようです。上下の空間にも行き渡っているので、このアジトにいる構成員はおそらく完全に閉じ込めたと思います。ただ転移を防げるかどうかは、実際転移が使われてみないとわかりませんが……)
よし。範囲的には大丈夫だったようだ。
転移を防げるかどうかは、もう信じるしかない……。
ただ俺としては、転移を発動されないように、速攻で倒す努力をするけどね。
俺や仲間たちは、ナビーのナビゲーションに従って、構成員たちを随時拘束していった。
だがやはり時間がかかる……。
俺の目指している場所は、もうすぐだ。
俺が向かっているのはおそらく……幹部のいる場所だと思われる。
一番上方の場所だし、大きな広場に面した小部屋みたいなのが数多くある構造になっているのだ。
大きな広場に着くと、戦闘陣地のようなものが作られている。
完全に迎撃体制を整えていたようだ。
俺に向けて、一斉に連射式の『クロスボウ』が発射される!
俺は『波動収納』から『魔盾 千手盾』を取り出し、魔力を流した。
千手盾から無数の手が出現し、それぞれに半透明の魔力の盾を出現させた!
そして、全ての矢を防御した。
俺の限界突破したステータスの速さなら、全ての矢を避けることもできたかもしれないが、そんな面倒くさいことはやってられないのだ。
早く無力化してしまいたい。
ここは割り切って、力技の正面突破で行こうと思う。
ここにいるのは、全員戦闘担当の構成員のようだ。
『ナンネの街』を占拠していた戦闘部隊と同じ服装だ。
確か……強襲部隊『ソードワン』と言っていたが……非常に似ている。
というか、こいつらは『ソードワン』なんじゃないだろうか……。
名称は違うかもしれないが、戦闘のエリート構成員たちなのは間違いないようだ。
魔法の杖で、火や水で攻撃してくる奴もいるからね。
並みの軍なら、かなり苦戦するのではないだろうか……。
俺にとってはあまり関係ない……。
矢や魔法道具を使った一斉総攻撃という感じの怒涛の攻撃だが、俺は一切気にせず『千手盾』で全て受け止める。
『千手盾』は、無数の手を伸ばすことができるので、全方位防御が可能なのだ。
俺は『千手盾』に防御させながら、構成員たちの間を走り抜ける!
そして走りながら、魔法の鞭を振り回し戦闘員たちをどんどん弾き飛ばしていった。
もちろん『状態異常付与』スキルで『麻痺』を付与しながらだ。
絶対この奥に、幹部がいるはずだ!
『波動鑑定』によると、ここにいる構成員は全てレベル40以上でかなりの強さだが、俺にとっては全く相手にならない。
四十人ほどいた構成員を、あっという間に無力化して麻痺させた。
残りは……奥にある左右の部屋に一人ずつ気配がある。
『波動検知』で確認済みだ。
まず左の部屋の扉を、鞭で破壊する!
ビューンッ————
————バゴーンッ
扉が壊された瞬間、中から大量の矢が発射された!
中にいたのは女性……四十代くらいの黒髪ロング……あいつは……『領都』と『ナンネの街』を襲撃した『武器の博士』だ!
だが『武器の博士』は、俺の顔を見るなり、恐怖にひきつった表情になった。
以前も俺が拘束しようと近づいた瞬間、恐怖の表情を浮かべて転移して逃げてしまった。
また逃げる気かも……
次の瞬間……
『武器の博士』の左手が一瞬動いた!
なにかをしたようだ……転移しようとしたのか……?
「な、なぜ? ……なぜ転移できない……」
『武器の博士』が呆然としながら呟いた。
どうも……前回同様、転移で逃げようとしたが、できなかったらしい。
空間断絶結界で、転移を防げたようだ!
よし! これで逃げられる心配はない!
……あとは確実に、生け捕りにするだけだ。
俺は万全を期すために、改めて『波動鑑定』をかける……
レベルは…… 57だ!
……確か前回鑑定したときは52だった気がするが……短期間にレベルを上げたのか……。
スキルは……
戦闘系スキルとして、『剣術』『槍術』『斧術』『棒術』『盾術』『弓術』『銃術』『格闘』など相変わらずほとんどの戦闘系スキルを持っているようだ。
他にも『アイテムボックス』『武器作成』『強者看破』など様々なスキルがある。
前回はあまり気にしていなかったが……おそらく『強者看破』のスキルがあるから、俺の強さがわかるのかもしれない……。
『強者看破』とは、強い者や強くなる素質がある者を見抜くスキルのようだ。
さすがにレベルや所持スキルなどは、わからないようだが。
そのスキルのせいで、俺には勝てないことを悟っているのだろう。
おそらくだが……『武器の博士』は、本来ならかなりの戦闘狂なはずだ。
その戦闘狂の性格でも、『強者看破』が伝える恐怖により俺に戦いを挑む気にはならないのかもしれない。
俺に対するときの彼女は、逃げの一手しかないような感じだからね。
逆にそういう意味では、『強者看破』スキルのお陰で、無駄に命を散らす危険もなくなるのかもしれない。
『武器の博士』は、何度も転移を試みているようだが、やはり失敗に終わっているようだ。
表情に……絶望が満ちている。
『領都』を襲ったときに見せていた残忍な嗜虐の笑みとは大違いだ。
同一人物とは思えないほど絶望の表情をしている。
そしてガタガタと震えだした。
俺は『武器の博士』を威圧するように見据えた……
「ヒイッ」
『武器の博士』は、恐怖のこもった悲鳴をあげるとともに、『アイテムボックス』スキルでなにかを取り出そうとしているが……
させないよ!
ビューンッ————
————べシンッ
「ヒイイイッ……」
俺は魔法の鞭を使って、一瞬で麻痺させた。
そして念のために、『状態異常付与』スキルで『眠り』を付与し意識を奪った。
よし! これでこの場所に残る敵はあと一人だ。
俺は残っている右側の部屋に向かった。
しかしその瞬間——
——バンバン、バンバン、バンバン、バン、バン、バンッ
なに!
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