311.飛ばれると、怖い。
「次は、ぼくの番だ! ウイーーンッ」
ワッキーが、固有スキル『高速刈爪』を発動したようだ。
魔力の爪を伸ばしながら、両方の手のひらを左右に高速で振動させている。
何回見ても……草刈機のような感じだ。
——ビュイイイイイインッ
——ギギギギギッ
高速回転の魔力爪が激しい接触音を立てながら、『イビル・コックローチ』の外殻をその油とともにギリギリと削っていく!
前に見たときよりも、魔力爪が長く伸びているし回転も速くなり威力が増しているようだ。
油を弾きながら外殻に傷をつけているが、固くて大きなダメージを与えられていない。
そうこうしてるうちに、ワッキーは『イビル・コックローチ』の体当たりで大きく弾き飛ばされてしまった!
ワッキーもすぐに立ち上がったので、ほぼノーダメージだろう。
「これならいけるはず!」
今度はユッキーが、巨大な鉄球を『イビル・コックローチ』に投げつけた!
——バゴォーンッ
鉄球は見事に『イビル・コックローチ』に直撃し、大きく後ろにのけ反らせた! ノックバックのようなかたちになった。
ジャストミートしたかに見えた鉄球も、やはり体表面の油の効果で威力を半減されてしまったようだ。
この鉄球は前に『フェアリー武具』で手に入れたロマン武器の一つだ。
『名称』は『魔鋼の鎖鉄球』で、『階級』は『
魔力の調整で重さを変えられるので、うまく調整できれば軽く振り回せる。
使いこなせれば、インパクトのときだけ質量を増大させ、攻撃力を上げることもできるのだ。
冷静沈着なユッキーには似合わない感じなのだが……彼女が希望したので渡していたのだ。
普段の仕事ぶりは、未成年であるにもかかわらず、誰よりも大人で冷静で緻密なのだが……
どうも戦いは、豪快にいきたいようだ……。
「今度は私よ! アチョッ!」
アッキーがそう言って飛び出すと、ヌンチャクを振り回し『イビル・コックローチ』を連続で殴打した!
まるでカンフー映画のスターのようだ! カッコいい!
このヌンチャクも、シチミの『宝物召喚』で出ていたものだ。
『名称』が『魔鋼のヌンチャク』で、『階級』が『上級』になっている。
やはり魔力調整により、打撃の瞬間に重量を増大させ破壊力を大きくすることができる。
アッキーが興味を示したので、渡しておいたものだ。
かなり練習をしたようで、すごい達人になっちゃてる!
いったい誰に使い方を聞いたのか……
あの特殊な掛け声を言っているところから考えると……なんとなく……『ライジング・カープ』のキンちゃんの『固有スキル』の『ランダムチャンネル』の情報のような気がしないでもない……。
油で滑らされながらも、連続で打撃を繰り出しダメージを与えている。
だが……やはり攻撃に時間がかかりすぎていて、『イビル・コックローチ』の体当たりで弾き飛ばされてしまった!
アッキーは体当たりされる瞬間、バックステップで威力を殺したらしく、大きく飛ばされはしたものの転がることなく着地した!
「今度はアタイに任せな! やってやろうじゃん!」
『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウがそう言いながら、『種族固有スキル』の『
体が光を発している……
すぐにフォウの全身を、神々しい黄金の光が包み込んだ!
黄金の塊となったフォウは、大きな光の弾丸と化し、『イビル・コックローチ』に突撃した!
——バゴォーンッ
フォウは『イビル・コックローチ』を跳ね飛ばした!
まるで暴走トラックのような一撃だ!すごい攻撃力だ!
前に見たときよりもスピードが増していて、『イビル・コックローチ』は全く避けることができなかった。
だが……さすがゴキブリ……しぶとい!
『イビル・コックローチ』はすぐに起き上がった。
……なんだ?
……目が一瞬光った!
ビィーンッ、ビィーンッ、ビィーンッ————
うわ! ……飛んだ!
耳障りな飛行音を立てて、『イビル・コックローチ』が飛んでしまった!
普通の人間なら、これを見ただけで恐怖状態になり、能力が低下しそうだ……。
限界突破ステータスの俺でも……かなりきつい……。
おそらくこれが『種族固有スキル』の『
ミルキーたちが、一瞬ビクッとなっていた。
おそらく悪寒を感じたのだろう。
空を飛ばれると更に厄介だ……。
サーヤの盾で抑えることもできない。
もし『挑発』スキルを持っていれば、それでも攻撃をサーヤに絞らせることができるのだろうが、今の奴は縦横無尽だ!
「大丈夫! アタイに任せな!」
フォウはそう言うと……魔法道具『
あれも『イビラー迷宮』の宝物庫で手に入れた魔法道具で、『階級』が『
これを装着すると、空を走れるようになるようだ。
フォウは、地面の上を駆け出すと……途中から空中に駆け上がった!
おお! 地面を駆けるのと同様に、空を駆け抜けている!
そしてさらにスピードを増し、もう一度『種族固有スキル』の『
超加速で『イビル・コックローチ』に追いつき、後方から体当たりして地面に叩き落とした!
しぶとい『イビル・コックローチ』も、激しく地面に激突し相当なダメージを受けたようだ。
体表面の油もかなり減っている。
「今度は私が抑える! サーヤ、トドメを!」
ナーナはそう叫ぶと、『固有スキル』の『人馬車一体』を発動し、上半身が騎士で下半身が馬車の『馬車タウロス』状態になって、『イビル・コックローチ』を殴りつけた!
そこに魔法の弾丸が連続で炸裂した!
サーヤが『魔法のマスケット銃』を連射したのだ!
これも『フェアリー武具』で手に入れたロマン武器の一つで『階級』は『上級』だ。
遠距離攻撃用武器として、前にサーヤに渡していたのだ。
『魔法のマスケット銃』は、魔力弾を一発ずつ発射する構造で、本来なら先込め式で詰める弾丸も魔力弾なので、魔力を通せばすぐに装填されるのだ。
これにより連射が可能になっている。
サーヤの撃っている姿は、めちゃくちゃかっこいいのだ!
そして一発の攻撃力はかなり大きい。
体表面の油が少なくなっていた『イビル・コックローチ』に連続発射された魔力弾が次々にめり込んだ!
さらに『イビル・コックローチ』に向けて走りだしたサーヤは、武器を『漆黒の刈取鎌』にチェンジした!
これも『フェアリー武具』で手に入れたロマン武器で、俺が前にユーフェミア公爵たちを『死人魔物』や巨大魔物から救った時に、試しに使ったものだ。
『階級』は『
巨大な両刃の鎌なのだ。
サーヤが興味を示したので、これも前に渡していたものだ。
この武器を使いたがるなんて……サーヤってやっぱり……ドSかも……
というか……けっこうなバトルジャンキーかもしれない……。
「これでトドメです!」
サーヤは、大鎌を大上段に構えて、『イビル・コックローチ』に振り下ろした!
——ザクッ
体表面を覆う油がほとんどなくなった外殻に大鎌が突き刺さった!
そしてサーヤは、その突き刺さった大鎌をそのまま手前に引いて、『イビル・コックローチ』の体を切り裂いてしまった。
体の中央あたりから頭にかけて、縦に真っ二つにされた『イビル・コックローチ』は、そのまま目の光を失った。
サーヤを始めみんな警戒態勢を解いていないが……大丈夫のようだ。確実に絶命したようだ。
かなり苦戦していたが……最終的には大勝利だ!
なんか……すごい戦闘だった。
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