306.合宿、開始。
まず最初に現れた魔物は……バッファロー魔物だ。
だが、今まで倒したバッファロー魔物よりもはるかに巨大だ!
『波動鑑定』すると……
レベルが58だ!
バッファロー魔物は、正式には種族名『イビル・バッファロー』という。
『闘牛』という『種族固有スキル』を持っている。突撃するスキルのようだ。
今まで倒したバッファロー魔物は持っていなかったので、レベルが高くなってから発現する『種族固有スキル』なのかもしれない。
足で地面を蹴っている。
突撃するタイミングを見計らっているようだ。
『ロイヤルスライム』のリンが、『種族固有スキル』の『膨張』を使って巨大化した!
壁となって受け止めるつもりなのだろう。
『イビル・バッファロー』が、薄い赤みを帯びた防御壁のようなものを体の周囲に発生させている。
あれが『種族固有スキル』の『闘牛』の効果なのだろう。
防御壁を張った状態で、突進してくるようだ。
「グオオオオオオオ!」
『イビル・バッファロー』は、雄叫びとともに突進し始めた。
「アチシに任して!」
『イビル・バッファロー』に向けて、魔法銃が連射された!
『竜馬』のオリョウの二丁拳銃による連射だ!
——パンッ、ゴンッ
——パンッ、ゴンッ
——パンッ、ゴンッ
確実に捉えているのだが……致命傷にはなっていない。
バリア状の防御壁を貫通はしてはいるが、かすり傷程度しか与えられていないのだ。
『イビル・バッファロー』は気にも止めず、突進してくる。
「次はオレっちの番だ!」
『ミミック』のシチミがそう言うと、魔法杖を天にかざした!
杖の頂部には、この前『イビラー迷宮』で手に入れた『魔土石』がセットしてある。
シチミが『イビル・バッファロー』に向けて杖を振り下ろすと……岩石の弾丸が発射された!
連続発射された岩石弾が『イビル・バッファロー』に向けて襲いかかる!
——バンッ、バンッ、ゴーンッ、ゴーンッ
バリア状の防御壁に最初の数個は弾かれたが、連続攻撃の成果で防御壁は砕かれ、その後の岩石弾は命中した。
『イビル・バッファロー』の片目を潰し、一瞬足を止めさせた。
だが致命的なダメージには至っていない。
むしろ『イビル・バッファロー』が、狂乱状態でさらに突進を始めた!
「大丈夫。リンが止める!」
リンはそう言うと、真正面から突進してくる『イビル・バッファロー』を巨大な壁となって受け止めた。
おそらく『衝撃吸収』スキルを使っているのだろう。
また『物理吸収』スキルを使って、物理攻撃力も吸収してしまっているかもしれない。
最初こそ後ずさったが、ほとんどノーダメージだ。
次の瞬間————
『イビル・バッファロー』の背中が大きく裂け、血しぶきがあがった!
『スピリット・オウル』のフウが『種族固有スキル』の『
この『種族固有スキル』は、羽音一つ感じさせない無音の爪攻撃なのだ。
おそらく攻撃されたことに気づく間もなく、ダメージを受けているだろう。
『イビル・バッファロー』の背中は大きく切り裂かれているが、未だ致命傷ではない。
ニアは、未だ攻撃せずに、本を広げている……
この前『イビラー迷宮』で手に入れた魔導書だ。
どうもただの本ではなく、マジックアイテムになっているようで、魔力を通すと本自体が宙に浮くようだ。
本なのに『階級』があり、『上級』となっていたから不思議に感じたが……
やはりただの本ではなかったようだ。
そしてページが自動でパラパラめくれている。
おそらくニアが必要とするページが、自動で表示されるのだろう。
「火とともに……火の精霊よ、我に依りて御技を解放すべし!…… 『詠唱短縮発動』……火精満ちて御技顕現す!
ニアが呪文を唱えると、前方に火の玉が出現し『イビル・バッファロー』に向かって発射された!
これは、廃れた技術と言われている『魔術』を使ったようだ。
術式で構成されているので、魔法と違って適性がなくても、理論上は誰でも発動可能らしいが、術式を発動させるために詠唱が必要となり、誰でもできるとは言い難い技術になってしまったようだ。
どうもこの魔導書は、その難しい『魔術』の発動をサポートする魔法道具にもなっているようだ。
ファイアボールは『イビル・バッファロー』に命中するとそのままはじけて、炎が『イビル・バッファロー』の体を包み込んだ!
致命傷ではないが、じわじわ焼いている。
『イビル・バッファロー』が苦しそうに身悶えしている。
そこに風が流れ込み、更に炎が大きく燃え上がった!
リンが魔法杖から風を発生させ、火の勢いをさらに強くしたようだ。
シチミ同様に、『イビラー迷宮』で手に入れた『魔風石』を魔法杖の頂部にセットし、風を巻き起こしたようだ。
通常は風の刃による攻撃を発動するはずだから、適度な風を起こすにはかなりの魔力調整が必要になるはずだ。
だがリンは、難なく使いこなしている……。
魔力調整が苦手な俺とは大違いだ……久々に劣等感が……。
『イビル・バッファロー』が、もがき苦しみながら暴れ回っている。
「トドメは私に任せて下さい!」
空から声が響いた。
フウが上空から超高速で舞い降り、『イビル・バッファロー』の背中の上を通過した!
次の瞬間——
——ボトンッ
『イビル・バッファロー』の首が地面に落ちた!
フウは、『アイテムボックス』から『
足で横倒しに掴んで飛行し、そのまま横斬りにして首を落としたのだ。
剣を足で掴んで、飛行の勢いで斬りつけるなんて……
フウの爪攻撃だけでも十分強力なのだが、ある程度距離をとって攻撃したり、減速せずに攻撃したいときに、剣を使うと便利なのだろう。
前に『蛇牙裂剣』がほしいと言われたときには、どう使うのかと思ったが……密かにこの使い方を練習していたようだ。
今回は一本しか使っていないが、『蛇牙裂剣』を二本ほしいと言われて渡してあるので、もしかしたら左右の足で一本ずつ掴んで、横に剣先を向けて使うのかもしれない。
その状態で敵の中に突っ込めば、左右の敵を『車切り』にできるからね。
上空から加速で突撃しながら左右の敵を斬りつける……『突撃斬』とでも名付けるか…………。
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