153.消えた、子供達。
本屋を出た俺達は、調合関係に使う小道具一式を購入する為に雑貨屋に向かった。
雑貨屋は中央通りに戻って、更に南門の方に進んだ所にある。
中央通りに面した立地の良いお店で、さっきの本屋さんの倍以上の広さがあり、雑貨の名にふさわしい品揃えだ。
必要な道具を一式揃える事ができた。
それ以外にも日用雑貨を色々と大人買いした。
あまりの量に店員さんが驚いていたし、配達すると言われたのだが、魔法のカバンがあるからと断った。
そしてここでもニアがいるお陰で、お店の人に深く感謝され、値引きしてもらった。
俺達は南門にかなり近い場所まで来たので、避難民達の仮設住宅の様子を見に行くことにした。
南門まで来ると、衛兵達がざわついている。
何かあったのだろうか……。
そんな時、俺達を見つけた避難民の数人が駆け寄ってきた。
「ニア様、グリム様、子供達が、子供達が何人か行方不明なのです! 」
なに! 子供達が行方不明……
「落ち着いてください。何があったんですか? 詳しく教えてください! 」
彼女達の話によれば……
仮設住宅で暮らしている子供達うち、四人が昨日の夜から帰っていないそうなのだ。
朝からみんなで探しているが、見つからないらしい。
今は衛兵達も一緒に探しているようだ。
「わかった。私達もすぐに探すから、子供達の名前と特徴を教えて! 」
ニアがそう訊いた所で衛兵達も俺達の方に寄ってきた。
衛兵からも捜索状況を訊いたが、全く手がかりが無いようだ。
俺の『波動検知』で探したいところなのだが、その子供達の正確な波動情報が無いので出来ない。
会ったり話したりしている子達なら、記憶の中に波動情報があると思うが、特定が出来ないのだ。
同様に、フウに複写させてもらった『
「トーラなら臭いで見つけられるなの〜」
チャッピーが俺の腕を掴んでそう言ってきた。
なるほど!
ここは匂いで探すか! 警察犬ならぬ警察虎だ!
俺は『フェアリー薬局』で留守番をしていた『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラに念話を繋ぎ急いで来てもらうことにした。
他のメンバー達は、引き続き『フェアリー薬局』で待機だ。
あまり大勢で来ると、大きな騒ぎになってしまうからだ。
もし仮にこれが誘拐か何かだとしたら、騒ぎが大きくなると相手に警戒され、見つけにくくなる可能性があると思ったからだ。
しばらくするとトーラが走って来たのだが……
何故か……ダンゴムシ型虫馬『ギガボール』のだん吉に乗ったロネちゃんも一緒に来た。
どうしたのだろう……?
「グリムさん、大変なんです。力を貸してください! 」
「ロネちゃん、どうしたんだい? 」
「さっき孤児院の院長先生が来て、子供達を探してるって。二人居なくなって探してるって……」
「え、本当かい? いつから居なくなったかわかる? 」
「早朝には居たようなんですが、朝食の時から居ないみたいなんです」
うーん、これは何か起きてるな……。
俺は避難民達に用意してもらった子供達の匂いが付いている物を、トーラに渡し、匂いでの捜索を開始した。
そしてもう一つ、折角ロネちゃんが来たから、その能力を使わせてもらおう。
「ロネちゃん、虫達に探させてみて。いつも働いてくれてるミツバチ達でもいいよ。泣いている子供や助けを求めている叫んでいる子供がいないか、探させて」
「うん、わかった。やってみる!」
「ニア、ロネちゃんと一緒に探して。リリイとチャッピーは俺と一緒にトーラと行く。ハーリーさんは、この事をトルコーネさん達に伝えてください。ロネちゃんを心配しないように」
「オッケー」
「わかったなのだ」
「わかったなの〜」
「かしこまりました」
そして俺は、念話でリンとこの街を担当するスライム達にも捜索するように指示した。
トーラによる嗅覚嗅覚での追跡と、ロネちゃんの街中に張り巡らした虫の捜索網、そしてスライム達の監視網で、なんとか探し出すしかない。
俺は一応、『聴覚強化』スキルで、子供の泣き声に焦点を当てで探してみたが、誘拐された子供はいないようだった。
普通に泣いている子供だけだった。
「グリム様、衛兵隊でもお手伝いします。何をすればいいかご指示ください」
丁度南門に来たクレアさんが走って来るなり、俺にそう申し出てくれた。
すごい勢いだ……そして顔が近い……。
非常にありがたいのだが……
衛兵隊が派手に動き回ると、誘拐だった場合警戒される危険がある。
そこで目立たないように普通の巡回という体で、怪しい者がいないか探してもらうことにした。
◇
トーラは確実に匂いを捉えているようで、迷う様子は無い。
中央通りから西側に入り、守護の屋敷の前の道を通る。
また守護の屋敷が絡んでいるのかと一瞬過ぎったが、そんなはずはないよね。
守護の屋敷を通り過ぎ、北に進むと高級住宅街になる。
そのエリアの一画にある大きな屋敷の前でトーラが止まった。
見つけてくれたようだ……。
俺は念話で状況をニアに知らせるとともに、リンを呼んだ。
ここからの任務はリンが最適任者だからだ。
『隠密』スキルと体色変化による透明化のコンボで潜入してもらうのが一番確実なのだ。
慎重に敵の状況と子供達の居場所を探る必要があるからね。
やって来たリンに状況を説明し、早速潜入してもらう。
◇
リンが戻ってきた。
「あるじ、子供達の気配ある。でも場所の入り口わからない。それから、チャッピーいじめてた悪い奴いた! 」
詳しく訊いてみると……
この屋敷にも本館と別館があるが、別館の方から子供達の気配がするらしい。
だが、監禁されている場所の入り口が見つけられないとの事だ。
そして驚いたことに、チャッピーをいじめていたあの奴隷商人がいるというのだ。
これで完全に筋が読めた!
おそらくあの奴隷商人が子供達を誘拐し、他国に連れ去って売りさばくのだろう。
そしてこの屋敷の主人がそれに協力しているのだろう。
やはりああいう奴を放置しておくと、こうやって被害を受ける人が出てしまう。
あの胸くそ悪い奴隷商人も、それに協力するこの屋敷の人間も、二度と悪事が出来ないようにしてやる!
当然、殺すなんていう短絡的な手段は選ばない。
衛兵隊に逮捕させれば、おそらく犯罪奴隷になるはずだ。
奴隷商人が奴隷になるのは何とも皮肉な話だが、罰としては最適だろう。
そして二度と悪さも出来ないはずだ。
ただシラを切られないように、確実に居場所を見つけておく必要がある。
そう思っていたところに、丁度ニアとロネちゃんとだん吉が合流した。
俺は状況を説明し、ロネちゃんにまたお願い事をした。
「ロネちゃん、蜂やこの屋敷にいる虫達に働きかけて、子供達が監禁されている場所の入り口を探してみてもらえないかな? 」
「うん、わかった。お願いしてみる」
そう言うとロネちゃんは、胸の前で指を組んだ。
「虫さん達お願い! 子供達が捕まってる場所の入り口を探して! 」
ロネちゃんがお願いする時、一瞬風が吹いたような気がした……。
虫達が場所を見つけた時に、そこがわかるようにリンにもう一度潜入してもらった。
しばらくすると、リンが戻ってきた。
報告によれば、蟻達が入り口を見つけ、蜂がそれをリンに知らせに来たとの事だ。
蜂について行ったところ、客室の一つに隠し部屋があったらしい。
その前に大きな書棚があるので、普通には発見出来ないようだ。
その書棚を動かせば、入り口が現れるのだろう。
これで場所の特定が出来た。
さてと、悪党退治と行きますか!
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