141.仮設住宅の、建設。

 翌日、俺達は領都内を見て回った。


 前回訪れた時よりも、大分綺麗になっている。


 もっとも前回の戦闘後、大きな瓦礫は俺達で撤去しちゃったけどね。

 細かな所は、生き残った人達が頑張って片付けてくれたようだ。


 途中から俺達を見つけた人達が集まってきて、領都でもパレード状態になってしまった。


「妖精女神様〜! 命をお救い頂きありがとうございます! 」

「あゝ、女神様! 感謝いたします! 」

「女神様〜、ありがとうございます〜」

「きゃあ〜、若旦那様〜! 」

「よお! 若大将! 」

「おチビちゃん達〜、ありがとよ〜! 」

「ちびっ子英雄だ〜、 二人とも可愛いよ〜! 」

「若旦那〜、うちの娘は健康で働きものです! 」

「若様〜、我が家系は多産です。いっぱい産んで見せます! 」

「きゃー凄腕の若様〜、いつでも嫁ぐ準備はできています! 」


 ニアは相変わらず、ノリノリで手を振っている。


 リリイとチャッピーは、嬉しそうな顔をしているが、恥ずかしいのか体をクネクネさせている。

 うん、やっぱりこの子達ってかわいい!


 俺はといえば、相変わらず……引きつった笑顔で軽く会釈する程度のことしかできない。


 そして一部変な声かけがあったが……

 最近増えている気がするんですけど……

 気にしたら負けだな……無視!


 ゆっくり都市内の状態を確認したかったのだが、パレード状態になった為にしっかり見れなかった……残念。



 案内役を務めてくれた文官さんに、避難民受け入れ予定地に案内された。


 かなり広いスペースが確保してあった。


 俺は文官さんに、しばらくの間、周囲の立ち入りを禁止するようにお願いした。

 妖精女神の技で短期間に仮設住宅を建設するが、事故等があったら困るからという理由にした。


 これで人目に触れずに済みそうだ。




 その後、俺達は一旦領都の外壁の外に出た。


 仮設住宅を建設するための木材を調達する為だ。


 近隣の林や森で、間引き的に伐採をした。


『魔剣 ネイリング』を使えば、一振りで伐採することができる。

 本当に恐ろしいほどの切れ味の剣だ。





  ◇





 俺達は今度はナンネの街に向かっている。


 木材を調達後、すぐに仮設住宅を建設した俺達は、アンナ夫人やユーフェミア公爵達に挨拶し、もう一つの復興予定の街であるナンネの街に旅立ったのだ。


 ナンネの街にも仮設住宅を建設する為だ。


 ナンネの街まで行けば、この領の全ての都市と街を訪れたことになる。


 道中で、木材の補充と、スライム達を集めながら進んでいる。


 ナンネの町だけ巡回警備要員のスライム達がいなかったからね。


 ただ、もう街には魔物がいないから、レベルを上げる方法を考えないといけないけど。


 ちなみに、領都の少し離れた目立たないところに、転移用の小さなログハウスを忘れずに設置してきた。


 これから行くナンネの街にも置いてくるつもりなので、これでこの領の都市と街にはいつでもサーヤの転移で移動できることになる。


 ナンネの街も普通の馬車で行けば領都から二日以上かかる行程だが、今回もオリョウが爆走してくれた。

 ただ出発時間が遅かったので、三分の二ほど進んだところで野宿することにした。


 周辺に、それなりに魔物の気配があるので、安眠の為に魔物狩りをすることにした。

 スライム達のレベル上げに丁度良いので、基本的にはスライム達に戦ってもらった。


 スライム達は四十七体集まった。


 スライム達をレベルを20以上にする為に、ある程度広範囲で魔物達を狩ったのでけっこうな数になった。



 リリイとチャッピーは安眠の為に、サーヤを呼んでマグネの街の家に連れて帰ってもらった。

 明日の朝連れて来てもらうことにしてある。


 そして俺とサーヤは、各都市や街の近くに置いた転移用の家を順番に訪れた。


 目的は、逃げ出した家畜動物達の回収だ。


 俺は事前に、各都市や街を巡回警備しているスライム達に念話で連絡を取り、逃げ延びている家畜動物達を保護し集めてもらっていたのだ。


 スライム達は優秀で、広範に散っていた動物達をかなり集めていた。

 怪我をしていた動物も、回復魔法で回復したらしく、みんな元気になっていた。


 この動物達を、サーヤの転移で『フェアリー牧場』に連れて帰ったのだ。


 そのままにしておくと、野生の動物や魔物に食べられる可能性が高いからね。

 今まで生きていただけでも奇跡といえる。


 この家畜動物達は、かなりの数に及んだので、後日開設する二号牧場のメンバーにする予定だ。


 ただ二号牧場の開設は、いつになるか分からないので、当面の間は今の牧場で暮らしてもらう。


 ちなみに今回保護した動物達は……


 牛——— 二百三頭

 ヤギ——— 二百六十四頭

 羊——— 百九十八頭

 鶏——— 三百二十六羽


 大規模なスペース拡張が必要だったが、これもレントンや仲間達の協力で一瞬でやってしまった。


 明日の朝にはまた驚かれるだろうが、新たに動物達が集まって来たと言うしかないね。



 ちなみに『フェアリー牧場』のスタッフの採用は、順調に進んでいるらしい。


 希望者が多くて選考するのが大変なようだが、俺の方針通り、働き口を探すのが難しい女性や十代の未成年を中心に雇用しているようだ。

 避難民だけでなく既存の住民からも応募があるようだが、一旦は避難民優先にさせてもらっている。





  ◇





 翌朝、ナンネの街に到着した俺達は、文官さんに案内された場所に早速仮設住宅を建設した。

 もちろん、人払いをしてもらってからだ。


 ナンネの街は、マグネの街と同じ位の規模の街だ。


 人口も同規模の五百人程度だったようだが、生存者は二百人弱しかいないようだ。


 今はセイバーン公爵軍が復興に力を貸しているので、領都よりも復興が早いように思える。


 ゆっくり観光しているような状況でもないので、俺達は仮設住宅を設置し終わってすぐに街を後にした。


 マグネの街に戻ろうと思っている。


 毎回マグネの街に帰る時に使えるように、マグネの街に続く街道の二股の起点の所より少し外側に転移用の小さなログハウスを設置しておいたのだ。


 これでマグネの街に続く一本道の街道のすぐ手前に転移できるので、自然に馬車で帰ってきた感じで街道に入っていけるのだ。




  ◇





 二股の起点を過ぎ一本道に入ると、すぐ俺達が作った『フェアリー牧場』がある。


 牧場に入ると、ロネちゃんがいた。


 最近、毎日『虫馬ちゅうま ギガボール』のだん吉と一緒に来ているらしい。


 普通の馬車ならゆっくり行けば、街から一日はかかる距離なのだが、片道二時間程度で来ているようだ。

 だん吉は結構早い!侮れない。


 新しく仲間になった虫馬のことが気になるのと、元々動物が好きで牧場に憧れていたようで、トルコーネさん達の許可を得て、毎日来ているようだ。


 しかし一人で来させるなんて、よくトルコーネさん達が許したものだ。


 と思ったのだが…… 実はこれには裏があって、ロネちゃんの希望を叶えてあげる為に、サーヤの手配でロネちゃんのボディーガードとして、スライムを一体つけているようだ。


 それでトルコーネさん達も了承したのだろう。


 ちなみに牧場では、だん吉や他の虫馬が遊びという名目の訓練を、スライム達と行っているらしい。


 ロネちゃんは牧場の動物達と触れ合いながら、手伝いをしてくれているようだ。


 これから新しい宿をオープンさせるので、その後はロネちゃんも宿の仕事が忙しくなって、牧場に来れなくなる。

 だから、今のうちに来させてあげているらしい。

 トルコーネさん達の親心だろう。


 それからロネちゃんのというか、だん吉のスピードが衛兵隊に評価され、臨時で物資の運搬を請け負っているようだ。

 毎日の牧場との行き帰りのついでに、衛兵隊の物資を運んでいるのだそうだ。


 その為に、前に衛兵隊から貰った小さな荷車とは別に、立派な馬車を貸し出されているらしい。


 最近では、だん吉はロネちゃんの指示で御者無しで馬車を引いているとの事だ。

 そしてロネちゃんは、元々トルコーネさんが所有していた四頭の馬車馬を御者して、なんと馬車二台で来ているようだ。


 本来はだん吉と一台だけで充分なようだが、馬達に馬車を引かせてあげる為に、わざわざ二台で来ているらしい。


 確かに馬達もずっと厩舎にいるよりも、思い切り馬車を引いて走った方が気持ちいいだろうからね。


 今、ロネちゃんは、リリイとチャッピーと一緒に虫馬に乗って遊んでいる。


 ロネちゃんが『ギガボール』のだん吉に乗り、リリイは『ギガビートル』、チャッピーは『デンデン』に乗っている。


 なんかめっちゃ羨ましい……。

 いいなぁ……



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