96.掘り出し物、み〜つけた。
午後からは、俺は大森林の残り五つの大きな湖を中心に見て回ることにした。
ニア達は、新しく仲間になったミルキー達と一緒に、明日の『インプ』狩りに備えて訓練をしてくれることになった。
フラニーの転移を使って効率よく回ったとはいえ、やはり半日では、大湖五カ所とその周辺を見て回るのが精一杯で、全域を見ることはできなかった。
明日の『インプ』狩りが終わった後にでも、残りを回りたいと思っている。
そういえば、霊域も見なきゃね。
何日かかることやら……。
五つの湖には、いろんな種類の『浄魔』達がいた。
しかも結構な数だった。
あの子達がみんな飛べるようになって、対空戦力になったら、ほんとにすごいことになりそうだ。
そして、みんな愉快な奴らだった。
やはり湖から出れないからストレスが溜まっているようだったが……。
みんな俺の突然の訪問に、驚きつつも喜んでくれていたと思う。
がんばって、できるだけ名前をつけてあげた。
そして面白かったのは、『共有スキル』にセットしてある『財宝発掘』スキルの影響なのか、みんな湖の底に落ちているお金などを見つけて集めてくれていた。
銭貨、銅貨が多いが、銀貨、金貨もあり、現在使えることが確定している“コウリュウド”と名の付く物も結構あった。
『コウリュウド王国金貨』だけでも合計すると三百枚以上になった。
これは結構おいしい!
このスキルもセットするものがないから、とりあえず入れたスキルだが……
これは当たりだったようだ。
今後も期待できそうだ……
湖の底に宝船が沈んでたり……
どこかの洞窟に埋蔵金があったりしないかなー……。
お金だけじゃなく、武具等も湖の底に落ちているようで、使えそうな物がいくつもあった。
一応すべての物は『波動収納』に回収した。
時間がある時に、ゆっくり確認すればいいだろう。
ただ、確実に掘り出し物とわかるものが一つあった。
階級が『
『魔法のブーメラン』——— 魔力を流し、意思の力でコントロールする。魔力を流した者のところに自動で戻ってくる。
これはすごい掘り出し物だ!
湖の底……侮れない。
今後も何かいいものが見つかることを期待したい……。
すっかり暗くなったので、迷宮前広場に戻ると、リンが、新しく集まったスライム達を連れて帰ってきていた。
フラニーが転移させてくれたようだ。
新たに十八体、大森林に直接来た子達は二十三体でフラニーが転移してくれた。
合計四十一体、最初に林に集まっていた子達百六十八体と合わせると、二百九体となった。
『スライム』軍団の誕生だ……。
今後も増えそうな気がして……いや増えるだろうなぁ……末恐ろしい……。
夜は、いつものように宴会状態でみんな楽しく過ごしたわけだが、俺はどうしても心に引っ掛かるものがあった。
それは盗賊達に捕まっているというか……飼われている……いや、虐待されている動物達の事である。
本来、馬達は荷引き動物として大事にされるはずであるが、盗賊達はおそらく、また旅人から奪えばいいという発想で、使いつぶしているのだろう。
ろくに世話もせずに、死んだら肉として食う。
そんな感じなんだと思う。
ふとそんなことを思ってしまったら、やっぱり一刻でも早く助け出したいという気持ちになってしまった。
そこで俺は、明朝インプ狩りに行く前、すなわち早朝というか夜明け前に盗賊のアジトを一網打尽にしようと思いついた。
盗賊達は寝入った頃に襲えば、苦もなく拘束できるだろうし……。
そこで俺は、ニア、リン、フウ、オリョウを連れて、夜明け前に急襲することにした。
もちろんフラニーの転移を使って。
ということで、早めに夜の宴会を切り上げて眠るように指示を出した。
……がほとんど終わる様子がないので好きにさせた……。
俺は適当なところで切り上げて、新しくできたログハウスの中に入って眠った。
ログハウスは、窓にあたる部分の良い素材がなかったので、窓予定のところが、ただの切り抜きになっている。
したがって、外の宴会の声は普通に聞こえてくる。
騒がしくて眠れないというほどではないが……賑やかな感じの中で寝るのもまぁいいだろう……。
ベッドは、レントンが木枠を作ってくれて、フラニーが『植物錬金』で布団のようなものを作ってくれた。
結構快適である。
◇
夜明け前、まだ暗いうちに俺達は大森林の外、あの不可侵領域の街道の林に転移してもらった。
そこで俺は『波動検知』で盗賊の気配を探る。
『波動検知』の使い方も大分慣れてきて、結構すぐ検知できるようになってきた。
盗賊に意識を合わせて探ると……
……だんだんとドス黒い波動を検出できるのだ。
これが盗賊達の出してるマイナス波動なのだと思う。
だからミルキー達の様に、この不可侵領域にひっそり住んでいる人もいるだろうが、善良な人であるかぎり検知されないのだ。
もっとも、そのような人達に意識を合わせて探れば、検知できるだろうが……。
俺達は見つけた盗賊の気配をたどりアジトを突き止める。
この時間は、皆酔いつぶれ基本的に寝ている。
特に見張りが立っていることもない。
あっという間に拘束だ。
起きないように、一応『状態異常付与』で睡眠を付与しているので、盗賊達は皆夢心地のままだ。
目覚めた時にびっくりするだろう。
そして馬達を保護する。
今回は馬達だけでなく、ヤギや鶏もいた。
馬達の中には、前回の保護の時にはいなかった『
『ランドキャタピラー』と呼ばれる大型芋虫や、『デンデン』と呼ばれる大型カタツムリだ。
サーヤから話を聞いて、是非見たいと思っていたので、感動した。
まさにファンタジー生物!
結構、気にいってしまった。
なんか……かわいいのだ!
芋虫にしてもカタツムリにしても、目がクリクリしててめっちゃかわいい!
芋虫なんか、俺が好きだった人気絵本で、お腹を空かせた青虫の話に出てくるのにそっくりだ。
この子は最後に蝶になったりするのだろうか……。
今度サーヤに訊いてみよう。
サーヤが前に言っていたが、『ランドキャタピラー』や『デンデン』はすごくおとなしくて世話しやすいそうだ。
ヤギは、普通のヤギのように見える。
鶏は……あの感じ……烏骨鶏に似ている。
結構いい卵産むんじゃないだろうか……期待できる。
馬車やその他の物品を全て『波動収納』で回収する。
……これで完了だ。
俺達は、盗賊のアジトを回り、この作業を繰り返した。
アジトは全部で六カ所あった。
おそらくこれで、この街道にある盗賊のアジトは全てだと思うが……。
今回の戦果……
確保した盗賊———二百二十八人。この中には、女盗賊も何人かいた。
保護した動物達
『
『
『
『
『
『
『
『
『ヤギ』——— 三十九体
『鶏———烏骨鶏もどき』——— 八十六体
没収した主なもの……
確保した馬車——— 十五台
没収した金貨——— 百五十枚
その他の貨幣——— 多数
武器防具——— 多数
その他奪った積荷らしき物が色々あった。
その中で特に目を引いたのは……米だ!
なんと米があった!
この世界にも米があるらしい!
久しぶりに米を食べれるという嬉しさに歓喜したが、それよりも心躍るのは、これを種籾にすれば稲作ができるということだ!
どこかに、水田を作って稲作だ!
俄然……燃えてきた!
この世界の食糧事情はまだよくわからないが、少なくともマグネの街には米は普及していないようだった。
是非、米食文化を普及させたい。
まぁ自分が食べたいだけ……だけどね……。
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