90.付喪神、現る。
俺は
そして、その妹弟達もパーティーメンバーではないが、
これは彼らを守る為でもある。
『共有スキル』が使えるようになるからね。
もっとも、今の俺の『共有スキル』ではあまり守られそうもないが……。
『絆通信』で遠く離れても、念話ができるっていうだけでも、かなり安心できるだろう。
そして、一度みんなで大森林や霊域に行くことにした。
そんな時だ……
……家がうっすら光り出した……
……気のせいかと思ったが… …確実に家が光っている———
強い光ではないが、暖かく柔らかな光が家から溢れている……
これはまるで……霊域『ボルの森』の『大霊樹』の中に入った時と同じだ……。
あの……精霊達に認められた時と同じような感じの光だ……
これは精霊だ……
周りを見渡すと仲間達は、呆然と光を見つめている……
言葉をなくしている……
みんな、これは決して悪いことでないとわかっているはずだ。
この柔らかく暖かい光……
これは精霊だと俺が言おうとした時———
精霊が大きな繭のようなものを作り出した………
……いや……精霊が集まって凝縮されている感じだ……
塊になってきている……
だんだん……人の形っぽいものになってきている……
そして……
……柔らかく暖かい光が一瞬強く輝いた!
……眩しさにつむった目を開けた瞬間———
———赤髪の綺麗な美少女がその場所に立っていた!
「ナーナ!」
サーヤが突然、叫びながらその少女に抱きついた。
「ナーナ、ナーナ、わあー、、、、」
サーヤが泣きじゃくっている。
サーヤがこんなに取り乱すなんて……
ナーナという名前に聞き覚えがある。
確か……死んだ親友の名前がナーナだったような気が……
「サーヤ、泣かないで……」
サーヤはまだ泣きじゃくっている……。
「サーヤ、泣かないで……」
「ナーナ……やっぱりあなたなのね……でもどうして……? 」
「そうよ、私はナーナ、でも正確にはナーナでは無いの。大丈夫、お化けじゃないから……」
「一体どういう……」
「私は……正確にはナーナの残留思念よ。
心配しないで、ナーナの本体の魂はちゃんと輪廻の輪に帰ったから。
私はこの場に残っていた、ほんの一欠片の残留思念。
この私達の大好きな家が、長年の私達の思いと大きなエネルギーを受けて、付喪神化したのよ。
精霊達がいっぱい集まってくれて、付喪神化がする時に私の残留思念を拾い上げてくれたの。
それを主体に精霊達が付喪神を作り上げてくれたの。
だから私は、ナーナの残留思念と精霊達が混じり合って付喪神化したこの家の精霊なの。『付喪神 スピリット・ハウス』なのよ」
「え、この家が付喪神化してくれたの。私達の大好きなこの家が……しかもナーナと溶け合って……あゝ……神様……」
サーヤが嗚咽している。
俺は、黙って二人を見守っていた。
なんとなく……経緯はわかったが……
……謎ワードが満載だ……。
サーヤが落ち着くのを待って、俺達は ナーナから詳しい話を聞いた。
『付喪神化』というのは、ニアやサーヤも知っていたようだ。
本来魂を持っていないもの、主に道具等を長く愛用していたり愛情込めて使っていたりすると、そこに魂が宿り、『精霊体』という実態を持った精霊のような存在になるらしい。
これを『付喪神化』と言うようだ。
俺の元いた世界でも、古い時代に大事に物を使っていると、それに魂が宿るとか神様が宿るとか言われていたはずだ。百年経つと宿るという話もあったはずだ。
いわゆる八百万の神的な発想だ。
それと同じようなもの……とゆうか……実際に起きるということのようだ。
『付喪神』とは言いつつも、神様とまではいかないらしく、あくまで『精霊体』であり、どちらかというと霊獣に近い存在らしい。
道具が魂を持ち意思を持つということが多いらしいが、場合によっては人型の実態を作ることもあるらしい。
ナーナの場合は、家が意思を持っただけでなく、人型として、しかも映像ではなく実態として現れるほどの力を持っているらしい。
これはおそらく、多くの精霊達の働きのお陰だろうということだ。
本来は付喪神化したものが、ある程度長い時間をかけて、人型の実態を持つこともあるようだが、ナーナの場合はいきなりそれが出来てしまったらしい。
ナーナ本人の分析によれば……
考えられる原因は、ナーナの残留思念を取り込んだことや、俺の存在らしい。
何故に“俺の存在”と思ったが……
どうも俺は『精霊の加護』を持っているので、精霊達が色々と助けてくれているらしい……。
それで精霊の力が大きく働いて、ナーナの家は大きな力を持って付喪神化をしたのではないかとのことだ。
そして謎ワードがもう一つあった。
本来のナーナの魂は、輪廻の輪に戻ったと言っていた。
……つまりそれは輪廻転生……魂が生まれ変わり、別の人生を歩むということだろう。
俺はこの考え方を知っていたし、実際そうだろうと思っている。
直感的にだ……。
目の前にいるナーナは、本体の魂ではなく僅かに残ったナーナの一部……残留思念が付喪神化したものだ。
ただ、一部と言っても、ナーナのすべての記憶を持っている。
ナーナそのものでもあるらしい。
家の精霊ということで、人型の実体を持てるのは家の近くにいる時だけらしいが……。
家妖精のサーヤに、家精霊として復活したナーナ、家が繋ぐ素敵な親友同士だ。
俺達は、改めてナーナに挨拶をした。
サーヤもほんとに喜んでいた。
ミルキー達やニア達も、最初はびっくりしていたが、みんな喜んでいる。
こんなに嬉しそうなサーヤを見たら、見てる方も幸せな気持ちになるよね……。
ナーナは残留思念として、守護霊のようにサーヤとこの家についていたらしく、俺達やミルキー達のことを見ていたらしい。
この家に住んでくれることは大歓迎で、それが嬉しくてエネルギーが高まって、より精霊達が集まってきてくれたらしい。
そして俺達の話を聞いて、自分もサーヤと一緒に馬車で旅して回った時のことを思い出し、一緒に行きたいと強く思ったらしい。
そしたら突然、実体化していたようだ。
どうも思いの力が強く関係したらしい……。
ということで……
何故かナーナもパーティーメンバーになった……。
だが……家の近くでしか自体化できないからパーティーメンバーも何もないと思ったのだが……
……なんと凄い裏技があった!
家がもう一つあるというのだ!
しかも動く家が……
当然俺達は何の事かさっぱりわからなかったが……
ニヤニヤするサーヤとナーナに、家の隣の納屋のような倉庫に案内された。
そこには……
……確かに家があった!
……しかも動く家だ!
家のように作られた大きな馬車があったのだ。
大きさは……大きめのキャンピングカーかマイクロバスぐらいはありそうだ。
しかも緩やかではあるが三角屋根………
……家っぽい………というか家だ!
昔サーヤ達はよく馬車の旅に出ていたらしく、その時に使っていたものだそうだ。
家として、サーヤの『管理物件』に登録されているらしい。
二つ埋まっていた登録スロットの一つが、この『家馬車』だったらしい。
これによって、どこに行ってもサーヤの『
俺が出かける時に、この馬車を使えばナーナも一緒にいけるというわけなのだ。
なるほど……確かに凄い裏技だった。
この『家馬車』も、ナーナにとっては、本体の家に付随する一部つまり倉庫や別棟のような扱いらしい。
ナーナは、本体の家、『家馬車』どちら側でも好きに実体化ができるようだ。
サーヤの『管理物件』登録上は別物扱いだが、付喪神化したナーナにとっては一部という扱いらしい。
この仕組みは、かなり便利かもしれない。
行く先々で、俺が家を建てなくても、この『家馬車』があれば、『管理物件』登録した場所と行き来出来るわけだから。
という事で、仲間になったナーナは……
種族が『付喪神 スピリット・ハウス』となるらしい。
レベルは1だそうだ。
ナーナが人間だった頃のレベルを引き継いではいないらしい。
ただ、スキル等は一部引き継いでるものもあるとの事だ。
そこは後でゆっくり教えてもらうとして……。
今はまず、このお洒落で素敵な『家馬車』の中を見せてもらおう。
屋根がオレンジ色で、その他は薄茶色がベースになってる。
入り口は、御者の座る前のほうに一つと、後部の二箇所だ。
後ろの扉は観音開きになる構造のようだ。
中に入るとかなり広い。
ソファーが置いてある。
全く馬車の中と思えない……リビングのようだ。
サーヤによると、ベッドもセットできるらしいし、色々な仕掛けが組んであるらしい。
二人で悪ノリで魔改造したそうだ。
またサーヤのスキル『
そう使うと凄い便利機能だ……。
でもよく考えたら、俺、リン、シチミの収納系スキルでも似たようなことができるけどね。
みんなこの『家馬車』を気に入ったようだ。
ワッキーなどはこれを見て、やっぱり一緒に旅に行きたいと本気で言い出していた。
俺は特にみんなに宣言したつもりはないが、なぜか旅に出るのが前提らしい……。
まぁ出たいと思ってるけどね。
この世界を見てみたいから……
俺達は、ナーナにも大森林や霊域を見せてあげるために、この『家馬車』ごと転移で戻ることにした。
フラニーに転移してもらう為に、念話しようとしたところ……
リンが俺の前に来て……プルプルしだした……
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