89.ミルキーの、決意。
俺がカボチャの種をサーヤの家のどこかに蒔けないか考えていると……
……丁度、サーヤが『
「サーヤおかえり。ミルキー達は大丈夫だったかい? 」
「はい、みんな元気でした」
「そう、それはよかった。ところでサーヤ、相談があるんだけど……」
カボチャの種の件を軽く相談してみると……
植える場所はいっぱいあるという返事が返ってきた。
詳しく訊いたところ……
実はサーヤの所有する土地は、あの家だけではなく、隣の林を含めた周辺一帯を所有してるとの事だった。
昔、家を買うときに区画丸ごと買ってしまったらしい。
北西のはずれ、しかも壁にかなり近いということもあって、不人気で安く買えたらしい。
面積にして、五万平方メートル(5ヘクタール)あるらしい。
そのうち林が三万平方メートル(3ヘクタール)ぐらいを占めるようだ。
家屋敷で使ってるのは、千平方メートル(0.1ヘクタール)位だろうから、残りだけでも相当な面積がある。
今は原っぱになってるそうだ。
しかも、近くを流れる川が敷地内を通っているらしい。
引こうと思えば、水も引けるらしい。
なんて素晴らしい環境だ!
今度ゆっくり敷地を見せてもらって、カボチャの種を植えさせてもらうことにした。
俺の話が一段落すると、待ってたかのようにサーヤが話を切り出した。
どうも話したいことがあったようだが、種子のことでつい熱くなってしまった俺は、全く気づかなかった……。
サーヤの話は、一度家に戻って欲しいというものだった。
ミルキー達から俺に話があるらしい。
時間的にはそれほどかからない用件らしいので、俺はさっと行ってくることにした。
ニア達も一応ついてくるらしい。
『
早速中に入ると……
ミルキーが何か真っ赤になりながらもじもじしている……
どうしたのだろう……
ニアとサーヤが何やらこそこそ話をしているが……
「グ、グリムさん…わ、わわ、私も……」
うーん……どうしたんだろう……
何かパニくってる……
「ミルキー、どうしたんだい? 大丈夫だよ。ゆっくりでいいから言ってごらん」
俺がそう言うと、妹弟達から背中を撫でられながら深呼吸をして口を開いた。
「私も、グリムさんのパーティーメンバーに入れてください。頑張って強くなります。お役に立ちますから……」
おお……一瞬、告られるのかと思ってビビったが……そんなはずないよね……ふう……。
しかし……サーヤに引き続き……どうしたものか……
俺が思案していると……
「グリムさんお願い、お姉ちゃんをパーティーメンバーにしてあげて」
「私達三人は留守番でいいから、お願いします」
「グリム兄ちゃん、姉ちゃんを、およめアグウブ……」
アッキーとユッキーにお願いされた。
ワッキーは話の途中でミルキーに口を押さえられバタバタしている……はて……。
「旦那様、どうか私からもお願いです。ミルキーも一緒に仲間にしてください。子供達の事は、私の
「いいじゃない、何を迷ってるのよ」
サーヤとニアも賛成のようだ……。
「別に駄目ってわけじゃないけど……この街でゆっくり暮らした方が安全じゃないかなぁ……」
「わ、私……一緒に行きたいんです! お願いです」
突然、ミルキーが強い口調になった。
意思のこもった目で、しっかりと俺を見つめている。
……まぁ拒絶する理由はないし……いいか……。
「わかった。でもパーティーメンバーになるっていう事は……今知らない事をいろいろ知ってもらう必要があるけど……その覚悟はあるかい……? 」
敢えて試すように尋ねてみた。
「も、もちろんです! 絶対に秘密は言いません」
秘密って……
どんな秘密があると思ってるんだろう……
まぁ確かに秘密があるっぽいような事は言ったけど……
「わかった。じゃあ座ってゆっくり話そうか……」
俺はそう言ってミルキー達に、今までの経緯を説明した。
そして、ミルキー達は人族の村で暮らすので、大森林の事や霊域『ボルの森』の事、そこで暮らす仲間達の事を他言しないようにお願いした。
妹弟達は、まだ子供なので口を滑らす危険はあると思ったのだが、子供達だけ秘密にするのは仲間外れにするみたいで嫌だった。
ミルキーと一緒に全部聞いてもらった。
ここで、サーヤから提案があった……
それは……
ミルキー達は人族の街で暮らすので、ついうっかりがあるかもしれない。
それを防ぐために、サーヤの『契約魔法』で“秘密保持契約”を結んだらどうかということだった。
詳しく聞くと……
秘密にしなきゃいけない内容やキーワードを事前に決めておいて、それに関することを話そうとした時に声が出なくなるという契約ができるらしいのだ。
例えばワッキーがついうっかり秘密を口にしてしまいそうになると、自然と声が出なくなって相手に聞こえなくなるらしい。
本人には苦痛は一切ないとのことだ。
もちろん契約内容で、肉体的な苦痛を罰則としてつけることはできるらしいが。
そんなことをするつもりは毛頭ない。
ただ、うっかりを防げて本人に肉体的な苦痛がないなら安心ではあるが……。
確かに考えようによっては、かなりの便利機能だ。
一瞬、それはいいと思ったのだが……
よくよく考えるとその契約で縛るっていうのも……全然気が進まない……
と思っていると……
逆に子供達の方から、是非それをやってほしいと頼まれてしまった。
その方が自分達も安心だと言うのだ。
特にアッキーとユッキーから、自分達はともかく、ワッキーが心配だから絶対やったほうがいいと力説されてしまった。
当の本人のワッキーも……
「ぼく、絶対うっかりしちゃう! 自信がある!」
と宣言してしまい……
「ぼく、絶対それやりたい! 」
とお願いされてしまった。
俺は思わず笑ってしまったのだが……
……まぁそういうことならいいだろうと思い、サーヤにお願いすることにした。
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