78.ロネちゃんの、努力。

 私、ニア様からいいこと聞いたんだ。


 頑張れば『テイム』のスキルが身に付くかもしれない。


 私、絶対グリムさんみたいな優しいテイマーになって、動物たちと仲良くなりたい!


 あと……その動物たちと一緒に、人の役に立てたら最高なんだけどなぁ……。


 私、一昨日の午前中にニア様に教えてもらったことをすぐに実行した。


 今日で三日目……。


 昨日までの二日間で……多分……千匹以上には話しかけたと思う。


 でも今日はまだ全然……


 だって悪魔が襲ってきたから……

 ほんとに怖かった……。


 危ないところをスライムたちが助けに来てくれた………。


 あの子たちは、グリムさんとこのリンちゃんが呼んでくれた友達らしい。


 私もあんな風にスライムたちと仲良くなって、困ってる人や危ない人を助けたい。

 今日、改めてそう思った。


 だから今からまた頑張るんだ!


 いろんな生き物とお話しする。

 頑張るっていうよりは、楽しいってだけだけど……。


 昨日までと同じように、出会った生き物すべてに話しかける。


 もちろん、私が一方的に話しかけてるだけだけど……


「練習させて」とお願いして、「テイム」と声をかけてもいる。

 もちろん、これも私が一方的に言ってるだけ……。


 これをがんばってスキルが身に付くといいな……。


 身につかなかったとしても……声かけるのが楽しいからいいけど。


 もちろん、毎日お世話してる馬達にも、いっぱいお話ししてる。


 なんか……お話しすると嬉しそうに黙って聞いてる感じなんだよね……。


 気のせいかもしれないけど……。


 馬たちは四頭。


 品種はわからないけど、普通の馬車馬。


 お父さんも大事にしてる。


 名前は……


 黒毛の男の子——フォーク

 黒毛で額の白い女の子——スプーン

 茶毛の男の子——ナイフ

 茶毛で足首の白い女の子——ティースプーン


 みんな優しい子たち。


 一番の甘えん坊はナイフで、一番気が強いのはティースプーンかな。

 フォークもスプーンも凄く大人しい。大人な紳士淑女って感じかしら。


 お世話するのも、とっても楽なの。


 この子たちは、馬車を引くのが大好き。


 だから、お仕事がない日でも馬車を引きたそうなんだよね。


 今度お父さんに習って御者ができるようになったら、私がお散歩に連れてってあげたい。


 この子たちで馬車をひいて、街の外にある村の方に遊びに行きたいなぁ。


 美味しいぶどう園の村に遊びに行きたい。



 あ、蜂さんだ……


「蜂さん元気? 友達になろうよー」


 蜂さんは、一瞬私の周りを飛んだけどすぐ行っちゃった……


 ん……今度は……カマキリくん発見!


「カマキリくん、元気? さっき小悪魔たちが暴れてたけど大丈夫だった?」


 よく見ると……カマキリくんが首をかしげてる。


 近くで見ると怖い顔だけど……でもなんだか可愛いかも……。


 おお……今度は……てんとう虫に蝶々も……。


「てんとう虫さん、蝶々さん元気? 友達になりましょう……テイムしていいかなぁ? 」


 なんとなく大丈夫そうなので……


「テイム! 」

「テイム! 」


 うーん……やっぱ何も起きない………


 そりゃそうだよね……

 そんなにすぐスキルが身に付くはずないし……。


 しかし……出会った生き物に話しかけなさいって言われたけど……


 ほとんど虫ばっかりなのよね。


 虫以外の動物だと鳥さんぐらいしかいない。


 そう考えると……この街はあまり動物がいないかも………


 スライムもほとんどいない街だったし………。


 街の中にいるのは馬や、他の馬車を引く動物くらい……


 あとヤギさんやブタさんを飼っているおうちはあるみたいだけど、ほんの少しだけね。


 小鳥は結構、木に止まってるかも……


 街の南門を出ると、街道沿いにいくつかの村があるけど、その中に牧場になってる村があるらしいの。


 動物がいっぱいいるみたい。


 ……やっぱ行ってみたいなー


 お父さん連れてってくれないかなー



 あ、今度はアリさん見つけた……いっぱいいる。


「アリさん、頑張って働いてえらいね。ちょっとテイムの練習させてね。テイム、テイム、テイム、テイム、テイム、、、、」


 アリの数だけ全部って言ってみた。

 すごい数になった。


 このペースなら一日千匹いけるかも……。


 何も反応もなくても、話しかけるだけで楽しい気持ちになるのって不思議だなぁ……


 小さなアリさんでも話すと一瞬こっちを見るような気がするんだよね……なんとなく……


 あと……蜂さんが何回か頭に止まった……

 最初はちょっと怖かったけど全然大丈夫みたい。


 蝶々さんも頭に止まったなぁ、そういえば。


 なんかそれだけですごい楽しいなぁ……


 やっぱ、いいこと聞いたなぁ……ニア様ありがとうございます!



 ん、お父さんだ……


「お父さん、今度私に馬車の扱いと馬の乗り方を教えてよー」


「おお、いいよ。馬車はそろそろ練習してもいいね。でも乗馬はまだ早いんじゃないかなぁ。もう少し背が伸びたらね」


「うん。じゃぁ馬車の扱い教えて。街の外の村まで練習しに行こうよ。動物いっぱいの牧場見てみたいし」


「それも楽しいかもしれないね。今回の騒動が一段落したら行ってみるかい? 」


「わーい! 本当? やったー!」


 やったー、お父さんが連れてってくれるって。

 お父さんなら絶対そう言ってくれると思ってたんだよね……ムフフ……。


 後はお母さんの許可だけね……


「お母さん、お父さんが馬車の扱い教えてくれるって。牧場の村にも連れてってくれるって。いいでしょう? 」


「あら、そう。よかったわね」


 よかったお母さんも反対しなかった。

 これで馬車の扱いが勉強できる。

 牧場にも遊びに行って、いっぱい動物たちに話しかけられる。


「全くあなたは、ロネに甘いんだから……」


 お母さんがお父さんにちょっとお小言言ってるけど……気にしない気にしない……。


「まぁいいじゃないか。毎日馬の世話を頑張ってくれてるんだし……」


 お父さんがそう言ってくれてる。

 ほんとお父さんて、私に甘いから大好き……。


「まぁそうね。今度みんなで出かけましょう。お昼ご飯持って」


「わーい! やったー」


 今からすごい楽しみ!


 よーし、これからもっとがんばるぞ!

 一日最低100匹、できれば千匹とお話しする!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る