特別短話「活躍したい、浄魔達。」
大森林の西の境界近くの大きな湖……
『マナ・アーチャーフィッシュ』たちが集まっていた……。
(あーもう行っちゃったね)
(もうちょっと落としたかったね)
(そうだね、でも後は他のみんながやってくれるでしょう)
(僕たち、ここから出られないからね)
(皆頑張ってくれるといいんだけど……)
(水から飛び出て、自由に動けるようにならないかなぁ……)
(そしたら、いろんなお友達に会いに行けるよね)
(主様にも会えるかなぁ……)
(会ってみたいね)
(((そうだね)))
(ところで、この撃ち落とした小悪魔たちどうする? )
(岸に打ち上げとく? )
(それとも食べちゃうか……)
(食べちゃって怒られないかなぁ……)
(インプなんて、使い道ないから大丈夫じゃない? )
(そうだねー)
(武器だけ岸に打ち上げとけばいいよね)
(そうだねー)
(よし! ちょっと気持ち悪いけど……魔力結構ありそうだし……お掃除のつもりで食べちゃおう! )
(ケニー様に聞かなくて大丈夫かなぁ?)
(ケニー様きっと今忙しいから邪魔しない方がいいよ)
(それにケニー様優しいから、インプ食べたぐらいで怒んないよ)
(おっし、じゃあ食べちゃおうぜ、みんなで)
(((オーケー)))
この『マナ・アーチャーフィッシュ』たちの行動が、後に思わぬ結果を招くことになる………
当然、このことは彼らの主グリムは、全く知るはずもなかった………。
◇
同じ湖の少し離れた場所……
『マナ・アロワナ』たちが集まっている……
『マナ・アロワナ』は、『アロワナ』という肉食の熱帯魚が魔物化したものである。
大きく輝く鱗の美しさ、見た目の優雅さに反し、獰猛な肉食魚なのである。
獲物を見るや、巨大な口で刹那のうちに捕食する大食漢であった。
その能力を受け継ぐ『マナ・アロワナ』は、高い戦闘力と強い闘争本能を持っていた。
亜竜にも匹敵する硬い鱗の防御と、全身のバネを使った強靭な力で敵を屠るのである。
しかし、水の中から出ることはできず、今回も全く出番がなかったのである。
(今回も出番なかったなぁ……)
(そうだな。俺たちいつも出番なし……)
(モチベーションだだ下がりだよなぁ……)
(のんびりするしかないかなぁ……)
(水から出れねぇかなぁ……)
(空とか飛べねえかなぁ……)
(『マナ・アーチャーフィッシュ』たちはいいよなぁ……あいつら今回活躍できたもんなぁ……)
(俺たちだって、結構水飛ばせるけど……あそこまでの遠距離には届かないからなあ……)
(そうだなぁ……もうちょっと低空飛行だったら俺たちも“高水圧弾”飛ばせたし、ジャンピングで撃ち落とせたかもなぁ……)
(まぁ、言ってもしょうがねぇけど……今日もみんなでダベようぜ……)
(一応、『マナ・アーチャーフィッシュ』たちのところにお祝いに行こうぜ……どうせ暇だし……そこでダベればいいんじゃね……)
(((そうだな!)))
そして『マナ・アロワナ』たちは『マナ・アーチャーフィッシュ』たちのところに遊びに行き、おすそ分けでインプの死骸をいただいたのだった。
……やけ食いだった……。
◇
同じ湖の少し離れた場所……
『マナ・グラスフィッシュ』たちが集まっていた。
『マナ・グラスフィッシュ』は、『グラスフィッシュ』という熱帯魚が魔物化したものである。
『グラスフィッシュ』は、体が透明で透けて見えるという非常に珍しい熱帯魚でる。
その能力を受け継ぐ彼らは、魔物化による強化でステルス機能を持ち、完全に周囲に溶け込むことができるようになっていた。
おそらく水中での戦いであれば、敵に気づかれることなく忍者のように活躍できたであろうが、彼らもまた水中から出ることができず、全く活躍の場がなかったのである。
(あーあ……また出番なしだぜ)
(俺だって力になりたいけど……大体無理があんだよな……そもそも攻めてくる奴がわざわざ水の中とか来ねーし………)
(あーそれ言っちゃった……それ言っちゃ駄目なやつでしょう……)
(まぁそう言うなって……)
(ほんと……空飛べないかなぁ……)
(俺たちみたいな水中の生き物は、ほんと活躍の場がないよな……)
(結構……無双する自信あるんだけどなぁ……)
(『マナ・ビーバー』たちに頼んで、この湖からいろんなとこに、川引いてもらうか……)
(確かに……そうすれば結構いろんなとこ行けるよね……)
(そうだなぁ…… 小川でいいからいっぱい作ってくれないかなぁ……)
(それいい案だよ! 今度ケニー様に提案してみよう……)
(((よっしゃー)))
(それはそうと、『マナ・アーチャーフィッシュ』たちを祝いに行こうぜ。あいつらだけでも活躍できたんだ。水の浄魔ここにありってところを見せてくれたからな…… )
この後、彼らも『マナ・アーチャーフィッシュ』たちの所を訪れ、インプのおすそ分けをもらったのだった………。
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