特別短話「子供達の、決意。」
「カチョウ、みんな大丈夫かなぁ……ぼく……心配……」
フラニーの転移で霊域に戻ってきた『トレント』のレントンが、心配そうに尋ねる。
「レントン、大丈夫よ。みんな強いもの! それにいざとなったらマスターが助けてくれるわ。そのためにフラニーが残ったはずだもの」
一緒に転移してきた霊域の代行者『スピリット・オウル』のカチョウが諭すように答える。
「そうだね、みんな強そうだったし。何よりマスターが来てくれたら絶対大丈夫なのだ。なんか……ぼくにはわかるのだ。マスターってポカポカなのだ……」
「ワタシもそう思う。主様ってすごくあったかい。一緒にいたい。守ってくれる」
『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラが、喉をゴロゴロ鳴らしながらレントンに同意する。
「そうねトーラ、ハハ達もまだちゃんと挨拶してないけど、フラニーやカチョウを見てればわかるわ」
「あーそうだね、みんなのこともすぐに助け出してくれたしね」
トーラの母親と父親の『スピリット・ブラック・タイガー』も、まだ見ぬマスターに全幅の信頼を置いているようだ。
「そうだね。ハハ、チチ」
「ワタクシは全く心配などしておりませんわ。マスターほどの方は二人とおりませんもの。全く問題なしですわ」
『スピリット・タートル』のタトルは当然とばかりにキリリと話す。
「アタイも心配してない。それより、あそこに残って戦いたかったな」
『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウが、前足を掻くような仕草で鼻息を荒くする。
「まぁまぁ、フォウったら……。まだちゃんと治ってないんですから無理しちゃだめですよ」
カチョウがなだめるようにフォウを翼で撫でる。
「フォウは、相変わらずお転婆だね」
「「「そうね」」」
「「「そうそう」」」
カチョウの子供たちがあきれたように周りに集まる。
「アタイはね、必ずご主人様のお役に立つんだ。もうほとんど良くなったんだから、明日からは毎日特訓だよ。やってやろうじゃん! 」
「全くもう、フォウはしょうがありませんね。ワタクシが付き合ってあげますわ。ワタクシだって必ずマスターのお役に立つんですから」
タトルが呆れるような、それでいてワクワクした口調で同調する。
「もちろん、ぼくだってやるよ。ぼくこそマスターの右腕になるのだ! 」
レントンが負けじと宣言する。
「ワタシ、主様と遊ぶ! いっぱい遊ぶ! 主様の右腕と遊ぶ! 」
“右腕”の意味を全く理解していないトーラが無邪気にはしゃぐ。
「まぁまぁ、マスターはあっという間に、この子たちの人気者ね」
カチョウが優しく子供たちに微笑む。
「なんてったってぼくたちの命の恩人だし。ぼくもフウと一緒にマスターのお供になるんだ! 一緒にお出かけするんだ!」
レントンは、もう決まったことのように、強い決意を口にする。
「はいはい、わかりました。その話は今度ゆっくりね。今は休んで。なんの心配もないから」
カチョウが、子供たちの会話がこれ以上ヒートアップする前に寝かせつけようとする。
「わかりましたわ。皆さん、今日はしっかり休んで明日から特訓ですわよ」
「わかったなのだ」
「わかった。ハハ、チチ、おやすみ」
「明日から頑張るからね。いろいろアタイに任せな! おやすみ」
タトルの仕切りに、みんな同意する。
子供たちは、なんとか気を静め休んでくれたのであった。
カチョウは思う……
「この分じゃぁ、救出作戦のために同行させたフウも霊域に戻らずマスターと同行するって言い出しかねないわね……」
少し寂しい溜め息が漏れた……。
この子供たちが、これから巻き起こすことなど今のカチョウには、全く想像することもできなかった……。
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