11.お宝、眩しい!
立体映像の思わぬ申し出に、頭を抱えて困っていると、ニアが俺の肩に座りながら言った。
「助けてあげれば。貴重な文化財保護、いや人類遺産保護ということで……大丈夫! 私とリンの最強コンビで守ってあげるから!」
リンも同意するように、二回バウンドした。
話せるようになったのに……なんでバウンド?
……なんでボディランゲージ?
……まぁそんなことはどうでもいいか。
うーん、一応、話だけでも聞いてみるか。
「ダンジョンマスターになると、何か不自由になったりしないかな? そうだ! メリット、デメリットで説明してくれるとありがたいんだけど」
俺の質問に、待ってましたとばかりに輝く笑顔になる立体映像。
生き生きと説明を始めた……
説明によるとメリットは……
一、現在迷宮に残されている宝物を全て入手でき、自由に処分、活用できる。
ニ、迷宮の施設、システムを自由に活用できる(但し、システム復旧後)。
三、迷宮に保存されている失われたマシマグナ第四帝国の知識、技術も手に入れられる(但し、システム復旧後)。
四、無料で迷宮運営のノウハウが学べる。
五、いろいろと楽しい。
四と五は、なんか……いろいろとおかしいだろ!……気にしたら負けか……無視!
ニと三は、システムの復旧が失敗すれば、無しってことだ。
すぐのメリットは、やはり一の宝物だな。
小市民の俺としては、宝物と聞くとやはり釣られてしまう……
なんか見透かされているようで嫌だけど……
でも……失われた古代文明の宝物なんて……なんかワクワクしちゃうよね。
デメリットとしては……
一、迷宮の再起動、復旧が成功し、迷宮稼働後は、ダンジョンマスターとして迷宮運営に責任を負う。ただし、常に迷宮に居る必要はなく、運営をシステムに委任することが可能。丸投げしてもオーケー。
二、できるだけ死なないようにしなければならない。
二は、デメリットじゃないよね。
お願いじゃね……これ……
そして、一の『丸投げオーケー』って何よ……
完全に見透かされてるようで、微妙だわ……
確かに、『丸投げオーケー』で心が動いたけどさ……
ほんと、この立体映像優秀だわ……侮れん。
これを踏まえて、ニア、リンとも相談の上、決断した。
俺の答えは……
「わかった。俺でいいなら協力するよ」
立体映像が、めちゃめちゃ喜んだのは言うまでもない。
指組みして祈るかのように、涙を浮かべながら感謝してくれた。
ほんとに人間みたいなんですけど……
立体映像が指示する場所に立つと、床、天井それぞれの前後二カ所、合計四カ所から俺の体にビームのような光が照射される。まるで体全身をスキャンされているようだ。
それも一瞬で終わった。
これでダンジョンマスターとして登録が終わったらしい。
称号を確認したところ、『テスター迷宮ダンジョンマスター』というのが増えていた。
これで確実に手続きが終了したことが確認できた。
俺は、今後のこともあるので、ダンジョンマスターの初仕事として、この立体映像に名前をつけることにした。
名前がないと不便だからね。
スマホの音声システム“ソリ”を真似て、ダンジョンシステムの“ソリ”ということで、“ダリー”という名前にした。
“ダリ”でも良かったのだが、なんとなく、ちょび髭を連想しちゃうので、“ダリー”にした。
なんかすごく喜んでくれたみたいだ。
これから本格的な再起動に入ると、ダリーも稼働できないようだ。
期間も半年なのか、一年なのか……何年かかるかやってみないとわからないらしい。
失われた魔素を吸い上げて、システムに回しながら、復旧するので、大分時間がかかるらしい。
逆にその間は、俺はノータッチでいいらしい。
ただ、魔物を使って外敵から守らなければならないが。
考え方によっては、よかったのかもしれない。
せっかく異世界に来たんだから、少し旅もしてみたいし。
もっとも、魔物二千体連れて旅なんてできないし……
仮にそんなことしたら、地獄の軍団を引き連れた魔王みたいになっちゃうからね。
ここに残って大森林と迷宮を守ってもらえば、俺は身軽でいられる。
「マスターグリム、ありがとうございました。
この後、いくつかの調整の後に再起動復旧モードに移行します。
その前にお約束の宝物をお受け取りください。現在は、システム障害で第一宝物庫しか開きませんが、当面はこちらでご容赦ください。
ちなみに、貨幣は、古い時代のものですので、すぐ使えるかわかりませんが、少なくとも金としての価値はあるはずです。
現在の貨幣が必要な場合は、マスターが殲滅したアンデッドや浄化したモンスターがある程度持っているはずですので、戦利品として回収してはいかがでしょうか。
宝物庫の確認をいただいた後、現在の迷宮遺跡部分と大森林の防衛体制だけ打ち合わせいただければ、当面の問題は解決したとして、再起動復旧モードに入らせていただきます。
まずは宝物庫の確認を願います」
そういうとダリーは、軽やかに案内してくれた。
立体映像は自由に動けるようだ……何このとんでも技術……。
俺たちが今いるのは、ダンジョンマスタールームらしいのだが、そこに隣接する扉の一つが、第一宝物庫らしい。
俺はダリーに促され、その扉を開けた……
そこにあったものは——
——目を覆わざるを得ないほどの眩しさだった!
金銀財宝って……本当に眩しいんだ!
ニアは、目を$マークのようにしてあちこち飛び回りだした。
リンも嬉しそうに、ビョンビョン弾んでいる。
それにしてもすごい量だ……
「これ、本当に全部もらっていいの?」
思わず訊いてしまった。
「もちろんです。マスターの当然の権利です。この財宝を使って、マスターに安全に長生きしていただくことこそが最重要なのです。世の中お金で解決できることも、たくさんありますから」
笑顔でダリーが答える。
それじゃ、遠慮なくいただくとするか!
確かにお金があれば大体の事は解決できるのかもしれない……
異世界も世知辛いということか……
いや、むしろ異世界だからこそかもしれない……この財宝はありがたく使わせてもらおう。
これでお金の心配はしなくて済みそうだ。
これは精神的にすごく大きい。
ゲームなら“イージーモード”か、“周回プレイ特典”のような感じだ。
……とにかく……イージーモード、万歳!
「ニア、リン、欲しいものがあったら言ってね」
声をかけると、ニアは鼻息荒くさらに飛び回りだした。
リンも、ビョンビョン弾みながらプルプル揺れている。
さて、俺もゆっくり見るか……
この世界に来て、初の心躍る時間だ!
まず、お金関係……いろいろなデザインの金貨、銀貨が大量にある。
多分……何万枚という単位ではないだろうか……
銅貨は少ないようだ……それ以外の貨幣も色々ある。
当時の色々な国のものがあるらしく、金貨にしろ、銀貨にしろ何種類もあるようだ。
さすがに紙幣は無いっぽい。
宝石も色々なものがある。
原石っぽいものから豪奢に装飾されているものまで。
宝石だけでもすごい価値がありそうだ。
なんで迷宮にこんなに財宝があるのかと思ってダリーに訊くと、大体はマシマグナ第四帝国の隠し資産の一部らしい。
なるほど安全な迷宮に隠したわけか。
残りは、前マスターや歴代マスターの趣味らしい。
金属の塊も結構ある。
インゴットというのだろうか……おそらく貴重な金属なのだろう。
よく見ると、金の延べ棒もかなりあるようだ。
その他は、武器、防具、道具類がある。
それほど多くはないが、魔法の道具とかではないだろうか。
期待が持てる……とりあえず、さっと確認だけしてみるか。
まず道具類で一番わかりやすいのは、魔法のカバンだな。
カバンサイズが三つ、大きな箱型が二つ、いずれも容量ははっきりわからないが……。
他にも魔法道具がいくつかあった。
魔法のランタンが一つ、魔法筆が二つ、魔法紙が三束、魔法の水筒が二つ、魔法の噴水口が二つ、魔法の巻物が三つ、魔法紐が一束
防具は、マジックローブが二つ、魔法の盾が一つ、魔法鎧が一つ
武器は、魔法の剣、魔法の槍、魔法の斧、魔法のこん棒、魔法の弓が各一つ、魔法の杖が二つ
武器は、メジャーなものは一通りある感じだし……これだけあれば充分だよね。
使い方が、いまいちよくわからないものもあるけど、おいおいでいいだろう。
さて、ニアたちは、何か欲しいのあったかな?
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