第6話 「西川君って、、」

とある土曜日



イヤホンから流れる音楽を

わざと、

周りの音が聞こえないくらいに

ボリュームをあげて


家事をこなしていた


ベランダで

布団を干し終え、


心地いい

朝の日差しに誘われて

背伸びをしながら


「朝から学校に行かなくていいって、最高」


そのまま

朝食の片付けをしに

リビングへ下った


お母さんが

土、日に関係なく

働いてる事もあって

私の朝は意外に忙しい


だからこそ

夏の天気と音楽に

やる気と元気をもらってる


ようやく、ひと段落した時


手に残る洗剤のニオイを

少しだけ不快に感じながら

携帯を手に取って

数件のメールに目を通していった


登録した携帯サイトから届く

お知らせのメールがほとんどだったけど。


その中に、

知らないアドレスからの

一件のメールを見つけ

恐る、恐る開いてみると


その相手は西川君だった


ホッとしたと同時に


連絡先を、

登録していなかったと

反省しながら

文面を読んでいった



夜遅くにすいません。


我ながら、恥ずかしい。

うっかりしてた


僕の電話番号は

○○○-△△△△-✖️✖️✖️です


森崎さんからの、

最初のメールが

こんな内容だなんて

不本意です。


だけど、

かなり深い時間まで起きてるんだね?


イメージと違った!


もしかして、勉強してた?

わからない問題とかあった?


ゴメン!

肝心な時に力になれなくて。


勉強中は携帯の電源を

切るようにしてたから

メールに気づいたのも

遅くなってしまいました。


でも、明日からは

携帯の電源を切らずに

勉強するから!


いつでも連絡してください^^;



私は、

自分の電話番号を知らせる為に

電話を鳴らし

数回のコール音ののち

電話を切った



おはよう🌈


やっぱり間違えてたんだね💦


でも、仕方ないよ

誰だって

うっかりする事はあるから😊


西川君の言う

不本意な内容って言うのが

間違えを指摘された事なら


西川君からのメールも

私にとって不本意だよ?


私が間違えを伝えなかったら

西川君からの最初のメールは

少なくとも

ゴメンねメールじゃなかったと思うし ✨🍒


西川君が

私にどんなイメージを

持っていたかわからないけど(^^;;


勉強はしてなくて

友達と長電話してたの😉


携帯の電源を切って

勉強してるなんて偉いね🎵


私は多分、

マネできないと思う (笑)


勉強に困ったら

お言葉に甘えさせてもらうね💕


何だか、

気を遣わせちゃってごめんね💦



私は

西川君へのメールを打ち終えると


朝から、

家の中を動き回って

掻いた汗を流す為に

シャワーを浴びに向かった


目を閉じながら

シャワーを浴びていると

頭の中に西川君からの

メールの一文が浮かんだ


イメージと違う。。かぁ。


そういえば西川君って

学校と携帯の中じゃ

何だか雰囲気、違かったなぁ


恐縮して話すところは

変わらないけど


真面目で、優しくて


きっと、メールの中の

西川君が本当の姿な気がする



シャワーで汗を流して

少しだけ、熱くなった体を

冷蔵庫の冷気が

優しく迎えてくれた


ジュースを片手に2階へと

階段を上って


宿題をしようと

机に向かって座った時


宿題のプリントが

無いことに気づいた


部屋中を探しても見つからず


学校に忘れたんだと思い


家を出て、学校へ向かった


学校へ向かう道中

河川敷を歩いてると


子供達の

楽しそうな声が聞こえてきて


見おろしてみたら


少年野球の子供達が

昼食を食べていた


可愛いなぁ〜

あっ!お腹減ってきた

早く帰ってお昼食べなきゃ。




校舎の近くで部活に励む

テニス部の元気な声を聞きながら

自分の教室へ入った


自分の机に手を入れても

プリントは入ってなかった


うそ?!

ここに無かったら、一体。。


私は机に突っ伏したまま

ボーッと反対側の校舎の窓を見つめ続けた。。





ふっと我にかえると

さっきまで聞こえていた

テニス部の元気な声は

聞こえなくなっていた


うん?もしかして


教室の時計が答えを教えてくれた


嘘でしょ!寝ちゃってた


窓ガラスから差し込む

夕陽の光が机を照らし


お腹を痛めたような空腹に

宿題をしようとした気持ちが

勝つはずもなく

家へと帰ることにした


そして、

私は思いだしたように

前日、

桃に連絡を取った事を夏希にメールで伝えた


よし!連絡完了!



学校からの帰り道


朝からシャワーを浴びて

清々しかった体は

じんわりと汗を掻いていて

私は

朝からシャワーを浴びて

さっぱりしてたのにと

思いながら歩いた


すると、

目の前の信号が

赤に変わるのが見えた


信号を待ってる間

私の前にいた数名の

女子高生と男子高生が

話しているの言葉が

自然と耳に届いた


それでさ、

あいつと初めて遊んだら

意外と盛り上がったんだよ


あるよね〜

レアメン的なメンツで

遊んだ方が盛り上がるパターン


だろ?だからさ

今度、お前らの学校の女子

何人か連れて来いよ

俺らと遊園地でも行こうぜ


だからの意味わかんないし

ただ、紹介してほしいだけじゃん!


あっ!バレた? 笑


信号が青に変わり

私はそのグループを追い抜かして歩いた


夕方になり暑さは多少の

和らぎを見せたけれど

やっぱり、まだ暑かった


道沿いの居酒屋さんに

ハンカチで汗を拭いながら

楽しそうに

サラリーマンの人が入って行って


すれ違った、若いお母さんは

小さな男の子に

今日の晩御飯は

冷やし中華だと話してた



やっぱり、ココだよね



私にとっての居酒屋さんは

よく通るコンビニで


晩御飯ってわけじゃないけど

おにぎりとジュースを買った


そしてふと、

店内に置かれてるコピー機が目に入り

私は、とっさに閃いて


携帯を取り出し

桃に電話をかけた


早く出て!と心で呟きながら

桃の声が聞こえるのを待った


ハ、ハ、ハイ!

も、も、もしもし


えっ?


電話の相手は桃ではなく

西川君だった


私は携帯の画面を確認して

動揺した


最後に電話したのは

桃だったはずなのに


そして、

急に電話を切る事も出来ずに

そのまま話した


あっ!西川君、ゴメンね


全然!!


あの。。

実はさ、宿題のプリント

なくしちゃったみたいで

それで、

コピーしたらいいんだと思ってさ


桃に


森崎さんは、う、家にいるの?


えっ?

あっ、いや

学校の近くの

信号を渡ったとこの



あのコンビニにいるんだね


あっ!はい!


プリント持って

すぐに行きますから

ま、ま、待っててください


いえ、あの、わ、私


10分で着きますから




そう言って

一方的に電話を切られてしまった


いいのかな?頼んじゃって。。


しばらく、

お店の外で待っていると

携帯が鳴った


もしもし、柚子?


あっ!桃!


ゴメン!


えっ?


柚子の宿題のプリント

私、間違えて

自分のと一緒に

持って帰ってきたみたいでさ

今から届けに行こうか?



あっ、、、

いや!自分で取りに行くよ

また連絡する


すぐに

西川君へ電話を掛けたけど

西川君は出なかった



私が

西川君に2度目の電話を掛けてから

10分程が経った頃


滝のように汗を流しながら

息も切れ切れで

西川君は現れた


コ、コレ、、

持って、、、き、、ま



ちょっと、待ってて!


私は思わず店内に走り

飲み物を買って

西川君の手に握らせた


これ、早く飲んで!



西川君はしばらく

ペットボトルを見つめて

一気に飲みだし

すぐに飲みほした


じゃ、じゃあ、コピーしようか


う、うん。大丈夫?


何度やっても

コピーは上手く撮れなかった


原因はすぐに

2人の頭の中に浮かんだ


西川君の手に握られたプリントは

手汗でぐっしょりと濡れていて

数字も問題もボヤけていた


西川君、もう大丈夫だよ


ごめん、森崎さん


ううん、帰ろ




森崎さんはそう言って

笑いかけてくれた

同級生の女子が

僕に笑いかけるなんて

最後がいつだったかも

記憶にない



キモい、汚いと

中学から言われ続け

酷い扱いを受けてきた


そんな僕の隣を

初めて好きになった人が

歩いているなんて


とても、信じられず

最初で最後だと言い聞かせ

頭と目に焼き付けていた



ねぇ?



ハイ!!



西川君、

本当は

10分で来れるような所に

いなかったでしょ?



え、え、あ


やっぱり 笑

そりゃ夏だし暑いけど

あの汗と疲れきった顔を見たら


嘘ついてくれたんだなって。。


誰でも分かるよ!



どこにいたの?



今まで

人間扱いされなかった日々の

ご褒美かと思うくらい

森崎さんが僕を下から

覗きこんで見せた

イタズラな表情と笑顔の破壊力は

凄すぎた



塾の下駄箱に。



西川君の塾って

図書館より遠いじゃん


どうして、

すぐ来れるなんて言ったの?


何故、下駄箱に?と

聞かれなくてホッとした

授業の終わり、

使われていない下駄箱の棚の中に

押し込められるという

嫌がらせを受けていたなんて

言いたくなかったから。



も、森崎さんが困ってたからです!



結局、

何の役にも立たなかったけど。



ありがと!


えっ?!!



西川君ってさ

もっともっと

本当の自分を出した方がいいと思うよ?


そうすれば

理解してくれる人とか

隣を歩いてくれる

男子の友達、増えると思う



そう言ってくれた

森崎さんの横顔を

永遠に見ていたかった


そして

僕の事を理解してほしい人は

森崎さんだけだと

心の中で返し


僕の中で

今まで以上に

好きという気持ちの風船が

デパートの屋上に上げられている

バルーンの様に大きくなっていくのが

ハッキリとわかった


西川君!



ハイ!!


不意を突かれ

思わず、とんでもない

声の大きさで返事をした


海、、行かない?



森崎さんと2人で?



違うよ!

私達と!って言ったのに

ちゃんと聞いてなかったでしょ



ゴメン!

あ、そういう意味じゃなくて

ぜひ、

こんな僕も一緒でいいなら



そんなに、かしこまらないでよ

あっ!桃と夏希に聞いてから

改めて

連絡する事になるけどいいかな?



森崎さんは時に天使の様に

そしてイタズラな小悪魔になる

他の2人がNGを出し

行けなくなる事は

目に見えていた


だから、

こんな会話をしながら

10分足らず

隣を歩けただけで

僕は充分だった。



じゃあ!

私、寄るところがあるから!

今日はありがとうございました


彼女の背中越しに重なった

夕陽のせいで逆光だったけど

笑顔で

手を振ってくれてた事は

ハッキリとわかった


そして、

僕に彼女が背をむけた瞬間

こっそりと手を振った



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