《第六章 血路》

 

 魔王を討伐した英雄、勇者とその妻シンシアが暮らす家の寝室で、勇者はベッドでだらしなく鼾をかいている。

 そんな勇者をシンシアが勇者の耳たぶをつかみながら耳元で荒っぽく起こす。


 「お、き、な、さ、い!」


 力強い朝の挨拶が脳をびりびりと震わせる。


 「ってぇ……! わかったわかった……今起きるってば……」


 キンキンと鼓膜が響く耳をおさえながらだるそうに起き上がると伸びと欠伸をひとつ。


 ったく……新婚の時はいつもキスで起こしてたのに……。


 ぶつぶつと愚痴をこぼしながら突き出た腹をぽりぽりと掻く。

 着替えて食卓につくとベーコンと卵ふたつの目玉焼きを口に運ぶ。卵ひとつの目玉焼きを食べ終えたシンシアが話しかける。


 「ねぇ、今日どうせヒマなんだから、街にお使い行って来てよ。村の八百屋さん、あんまり良いの入って来てないみたいだから」

 「んー……」と生返事。

 「いいじゃない。いつもゴロゴロしてるんだから。はい、これ買い物のメモ」


 「ん」と差し出されたメモを受け取る。


•ニンジン

•玉ねぎ

•かぼちゃ

•ごろごろ芋

•小麦粉一袋


 「余計な物買ったりとか、無駄遣いとかしないでよね?」

 「あー……」とメモを見ながらやる気のない返事。

 「もう! ちゃんとしてくれないとつねるわよ?」


 そう言いながらぎりぎりと勇者の両頬を引っ張りながらつねる。


 「ふへへははらひははひでつねりながら言わないで ……」


 横一文字に伸びた口から悲鳴が漏れる。解放されると頬をさすりながら「わかったよ」と返事する。

 「あ、忘れてたけどスノコも買ってきてね。お風呂場のもうボロボロになっちゃってるから」


 シンシアに見送られながら、勇者は街へと向かう。

 瞬間移動呪文を使えばあっという間なのだが、シンシアから減量のために歩けと言われているのだからしかたない。

 歩いて30分ほど、ふぅふぅと息をつく頃には街に着いた。

 さっそくメモに書かれた通りにお使いを開始する。


 「らっしゃいらっしゃい! 採れたての新鮮な野菜だよ! お、勇者様じゃねぇか! シンシアちゃんにお使い頼まれたのかい? んじゃ、これ持って行きな! 安くしとくよ」


 「いらっしゃいませ。あら勇者様。今日はどんなパンがいいですか? え? パンじゃなくて小麦粉が一袋欲しい?

 わかりました! はい、どうぞ……はっくしょん! す、すみません。粉が舞ってて……」


 「おーう。懐かしい顔だと思ったら英雄様でねぇか。なに? スノコが欲しいとな。なら、そこにあるから好きなもの持って行きな」


 お使いを終えた勇者は買い物袋を片手に、スノコを背負いながらふぅふぅと息をつきながら帰路を歩く。

 村まであと半分近くだが、荷物を背負っていては遠いように感じられる。

 歩きながら、ふと街道の外れ、森のほうを見る。


 そういえば、ガキの頃はこの森を抜けてよく街に遊びに行ってたっけ……。


 幼少の思い出に記憶を馳せながら、街道を外れて森のほうへと歩く。記憶が正しければ、森を抜ければ街道を行くより近道になるはずだ。

 ざわざわと茂る葉に木々の間を抜けながら勇者は家路を歩く。

 昼前だから見通しはいいが、夜になれば迷い込んで出られなくなりそうなほどに木々が茂っている。

 頭上を見上げると、空高くでツバメが飛んでいる。勇者は燕をなんとなく目で追いかけながらてくてくと歩く。

 その時だ。足下が柔らかいと思った途端、ぽっかりと穴が開いて奈落へと落ちていったのは。



 「………………ッ!」


 どのくらいの時間気絶していたのかは分からないが、勇者は背中に走る痛みを堪えながら目を開ける。

 最初に目に入ったのは、はるか頭上の、僅かに光が射す穴だった。穴が小さいところを見ると、かなり高いところから落ちたのだろう。

 だが、そんな高いところから落ちた勇者は痛みはあるものの、まったくの無傷だ。

 背中に括り付けたスノコが落下の衝撃を抑えたわけでもない。その理由は勇者の落ちた先、下敷きになっているものだった。

 穴から射す僅かな光で勇者は正体を見極めようとする。

 ずんぐりとした体型に、豚にも猪にも見える顔貌をした、獣くさい臭いを放つそれはまさに……


 ――――オーク……!


 だが、下敷きになったオークはぴくりともしない。どうやら高所から落下した勇者の重みによって絶命したらしいようだ。

 勇者はやおら立ち上がると、ぱっぱっと服の埃を払うと、辺りを見回す。

 暗闇に目が慣れてくると、そこは大広間のように広いことが分かった。そして出入口と思しき穴が前後にひとつずつあることも。

 どうやらここは今はもう使われていない古い坑道のようだ。

 穴のひとつから足音が近づいてくるのを勇者の耳が捉えた。身を隠す所はない。かといってもうひとつの穴に逃げ込むにしても、その前に見つかってしまうだろう。

 だいいち、敵、オークがどのくらいの数なのかもわからないのだ。

 ただ、一般にオークは徒党を組むことが多く、その数は頭領も含めて十匹以上いると言われている。

 足音は段々と近づいてきている。武器らしい武器を持たない勇者は舌打ちする。


 せめてナイフくらいは……!


 後悔しても始まらない。横たわっているオークに武器は見当たらない。と、そばに買い物袋が落ちているのを見つける。

 勇者は手早く買い物袋を掴む。



 豚のような鼻からこれまた豚に似たような鳴き声を出しながら、二匹のオークが穴から出てくる。二匹ともそれぞれ槍を手にしている。

 勇者が落下した音を聞きつけてやってきたのだろう。

 片方のオークが死んだ仲間を発見する。そして鼻をぶごぶごと鳴らす。

 もう一体のオークが仲間を小突くと槍で何かを指す。そこには背中にスノコを括り付けた男が倒れていた。

 二匹のオークは互いに見合わせると、醜悪な笑みを浮かべる。


 死んだ仲間も間抜けな奴だが、落ちてきたこいつもとんだ間抜けだ!


 久しぶりの人間だ! ご馳走だ! 焼いて喰っちまおう!


 オークが間抜けな奴の顔をどれよく見ようと、ぬっと手を伸ばす。

 その時だ。片目に何かが刺さり、激痛が走ったのは。

 仲間の悲鳴を聞いたオークがたじろいで槍を構え直すより、両目に何かが当たる方が早かった。すると、たちまち両目から涙がどっと溢れ出る。

 あまりの刺激に目を開くことが出来ない程だ。オークが止めどなく涙が流れる目をごしごしと擦る。

 ぼやけた視界で見えたのは、男が立ち上がったかと思うと、仲間の槍を奪い、息の根を止めるところであった。

 このままでは自分もやられる! そう恐怖に駆られたオークは槍をめちゃくちゃに振り回す。だが、喉元を槍の穂先が飛び出すのを見たのが、そのオークが最後に見た光景だった。

 がぼがぼと血泡を吹いて倒れるオークの後ろに立つのは我らが勇者だ。

 肩で息をしながら、呼吸を整える。無理もない。冒険を終えてから平和に暮らしてきて、魔物と闘う機会はなかったのだから。

 ズキンと痛む腹を押さえる。見れば服が裂け、そこから血がにじみ出していた。オークが振り回した槍が掠めたのだろう。

 勇者は回復魔法を唱える。すると傷がみるみると塞がっていく。

 傷跡が消えると勇者はふうっとひと息つく。


 まず死んだフリをして近付いてきたオークの片目にニンジンを刺し、その隙にあらかじめ地面に叩きつけてばらばらにした玉ねぎを汁ごと、もう一体のオーク目がけて投げつける。


 その後は知ってのとおりだ。だが、長らく冒険から離れてきた身としてはどっと疲れが出る。

 手も今頃になってぶるぶると震えてきた。

 今の勇者は、ただの駆け出しの冒険者と変わらない。と、ひゅっと空気を裂く音がしたかと思うと、勇者の足下に一本の矢が刺さる。

 オークが出て来た穴からもう一匹のオークが出てくるのを勇者が認める。

 オークは舌打ちしながら弓に次の矢を番えるところだ。勇者は素早く踵を返すと、もうひとつの穴へと駆ける。

 だが、その足取りは魔王を討伐した頃と比べると遅かった。

 弓を番えたオークが口の端を歪めると矢を放つ。空気を引き裂いて、矢は勇者の背中に命中した。

 いや、正確には背中に括り付けたスノコだ。

 そして勇者は穴に逃げ込むと角を曲がって姿を消す。仕留め損なったオークが悔しそうに甲高い鳴き声を出す。


 だが、あの男は丸腰だ。こうなったら追い詰めて、とことんいたぶってやる。


 どうやっていたぶってやろうかと考えながらにたにたと嗤うオークは勇者の後を追う。

 角を曲がろうとした途端、眼前に何かが飛び込んできたと思ったときには固いものが眉間に命中した。

 ぷぎぃっと悲鳴を上げると、間を置かずに片目に矢が貫かれる。

 豚に似た悲鳴を上げるが、勇者がスノコから引き抜いた矢を更に深く突き刺すと、悲鳴が止まった。

 はぁはぁと荒く息をつきながら勇者はへたり込む。手にしていた買い物袋からぐちゃぐちゃになったかぼちゃとごろごろ芋が数個転がり出る。

 オークが角を曲がる寸前で買い物袋を振り回したのだ。


 これで四匹……!


 肩で息をつきながら斃したオークの弓を獲ろうとしたが、倒れた拍子に折れてしまっていた。矢があっても弓がなくては無用の長物だ。

 仕方なくベルトから円匙スコップ をひっつかむと自分のベルトに差し込む。

 本来は土を掘るための道具だが、ないよりはマシだろう。

 大広間に戻ると落ちている槍を拾い、半分に折ると焔の呪文を唱えて松明にする。

 もう一本の槍、オークの喉元に刺さったままの槍を持って行こうと思ったが、坑道のような狭いところでは長物は不向きだと思い直し、そのままにする。

 ぼうっと燃える松明を手に、勇者は買い物袋の口をベルトに挟み、円匙を片手に持ちながらもうひとつの穴へと歩く。


 かつては金銀や水晶の採掘場であったろう坑道はいまや魔物―オークの住処となった狭く暗い坑道を、松明を頼りにして勇者は慎重に歩く。

 魔女のライラがいれば、黒魔法でオークどもを全滅させることが出来ただろう。

 神官のセシルがいれば、回復魔法を受けられ、防御の加護を受けながら戦えただろう。

 武闘家のタオがいれば、武器がなくとも徒手空拳を得意とする彼なら心強い味方だっただろう。

 ドワーフのアントンがいれば、洞窟を知り尽くしているから、出口を探し当てることが出来ただろう。

 だが、今の勇者はひとりぼっちだ。呪文は一回しか残されていない。長く呪文を使う機会が少なかったからだ。

 闇のように暗い坑道を松明で照らしながら慎重に歩く。オークに出くわした時にいつでも攻撃できるよう円匙を握り直す。

 オークは未だ見当たらないが、出口もまだ見えない。

 ちりちりと松明の炎がちらめく。次第に、勇者に焦りが見え始める。

 勇者の脳裡に幼なじみであり、妻の顔が浮かぶ。


 シンシア……!


 ぎゅっと目を瞑る。その時だ。坑道の奥で仄かに灯りが漏れ、そこから豚に似た鳴き声が聞こえたのは。

 忍び足で灯りの下へと向かう。ぽっかりと空いた穴からは数匹のオークがいた。

 そして、人間の骨で造られたと思しき玉座に座するは王冠らしきものを頭に載せたキングオーク。

 王の目前では体の小さなオークが豚に似た彼らの言葉で何かを話している。

 察するに仲間がやられたことを王に報告しているのだろう。報告を聞き終えたキングオークは玉座から気怠そうに立つと、目前のオークの頭蓋を戦鎚で叩き割る。

 脳漿を撒き散らしながら倒れるオークを踏みつけながら一際高い鳴き声をあげる。

 それは戦場いくさばにおける鬨の声であろう。そして仲間、もとい部下達に命ずる。


 野郎ども、狩りの準備だ! 愚かな人間を引っ捕らえて思う存分痛めつけてやれ!

 じわりじわりとなぶり殺してその肉を喰らおうではないか!


 部下のオークたちが呼応するように甲高い鳴き声をあげる。


 その様子を勇者は穴の入り口から伺っていた。おそらくここにいるオークで全部だろう。

とはいえ、多勢に無勢だ。まともに闘っても勝ち目はない。

 おまけに武器と呼べるのは手にしている円匙のみなのだ。他に手持ちと言えば、ぼろぼろになった買い物袋に数個のごろごろ芋に、小麦粉の袋……。

 袋に穴が空いてしまっているのか、そこからぱらぱらと粉がこぼれてしまっている。

 ふと、勇者の頭に一陣の光が煌めく。それは、この絶体絶命な状況を逆転しうる起死回生の策であった。

だが、それは無謀にも等しいものではあるが……。

 勇者はオークに悟られないよう松明を消し、来た道を戻り始める。



 人間から剥ぎ取った武器武具で身を固めた五匹のオークとそれらを束ねるキングオークが坑道を進む。


 殺せ! 殺せ! 殺せ!

 仲間の痛みを思い知らせてやれ!


 そのような意味の鳴き声をあげながら大広間に辿り着く。すると、大広間の真ん中に槍を構えながら立つのは誰あろう、勇者であった。

 勇者は槍を片手に持つと大きく振りかぶって、オーク共目がけて投擲する。

 だが、槍は前方のオークの盾によって弾かれた。攻撃を躱したオークたちが歓喜の鳴き声をあげる。


 「く、来るな……っ! こっちへ来るなぁ!」


 悲痛な声で袋からごろごろ芋を数個取り出すと、またオーク目がけて投げる。

 それは攻撃というより、ただの自棄やけ である。もちろん、これも盾で弾かれるだけだ。

 もっとも当たったとしてもたいしたダメージにはならないだろう。

 ごろごろ芋を投げ尽くしてしまったのか、肩で息を切らしながら勇者が呆然と立つ。

 その惨めな様をオークたちが指さしてげたげたと嗤う。

 手持ちの武器がなくなった勇者はくるりと向きを変えると、まさに脱兎のごとく、反対側の穴へと逃げ出す。

 それを見てまたオークたちが嗤う。


 馬鹿め! そこは行き止まりだ!

 さぁ、じっくりとじわじわとなぶり殺してやろう!

 頭蓋骨を割って脳みそを引きずり出してやろう!

 腹を割いて、はらわた を引きずり出してやろう!


 ぶごぶごと鳴きながら、まさに勇者が尻尾を巻いて逃げた穴へと向かう。

 オークの骸を踏みつけて角を曲がると、行き止まりの手前で勇者が円匙で地面に穴を掘っているところであった。


 なにをしているんだ? この馬鹿は?

 墓でも掘っているのか? まさに墓穴を掘るってやつだな!


 キングオークが甲高い声で嗤う。

 王ともども一同がじわりじわりと追い詰めようとした時、鼻に粉が入る。指でほじくりながら目を凝らすと、あたり一帯にもうもうと粉が舞っているのが見えた。

 穴を掘り終えた勇者はスノコを背中に括り付けたまま、穴に身を隠す。


 馬鹿め! その穴に隠れても無駄なことだ!


 オークたちがわっと武器を手に勇者に襲いかかろうとした途端、目の前で火花が散ったかと思うとたちまち、狭い坑道で爆発が起きた。

 キングオークは目の前で部下達が悲鳴をあげながら焼かれるのを目にし、自らも熱波と爆風で吹き飛ばされた。

 坑道の天井からぱらぱらと土埃が落ちるなか、オークの骸からちりちりと煙が立ちのぼる。

 そこかしこにぱちぱちと火が爆ぜるなか、穴からスノコを背負った勇者が立ち上がる。

 斃れているオークから剣を引ったくると、ゆっくりとキングオークの下へと歩く。


 粉塵爆発。たしかそんな名前だったと思う。

狭い空間で細かい粉の粒子が舞う中で、火を起こすと火が粒子に燃え移り、連続して燃え、爆発を引き起こすことがあるのだとか。

 そして火元は火花でも充分引火すると。もちろん火元は残された一回きりの呪文、炎系では最弱の呪文だが、それで充分だった。

 冒険の途中、一時だけ仲間に加わった盗賊が教えてくれた知識がまさか、ここで役に立つとは。

 穴に避難してスノコを盾、もとい蓋がわりにしたため、スノコはもうぼろぼろだ。

 キングオークはうずくまったまま潰れた目を押さえながら、残る片目で目の前の男を見る。


 な、何者だ……? わしの部下が……こんな太った人間ひとりに……。


 もうもうと煙の中を、キングオークの下へと向かう勇者を見ながら、はたと思い当たることを思い出した。


 ま、まさか……こいつは、あの勇者……。


 勇者は剣を両手で構えると、横一文字にひゅっと空気を切り裂くように一閃。

 キングオークの喉元から黒い血がぴゅうっと出たかと思うと、そのまま倒れて動かなくなる。

 勇者は剣を杖代わりに片膝をついて息を整える。


 これでオークは全滅したはず……出口を探さなくては……。


 途端、行き止まりの天井ががらがらと音を立てて崩れていった。

 爆発によって地盤が沈下したのだろう。そこからぽっかりと穴が空き、わずかだが光が漏れていた。

 勇者はやおら起き上がると、剣を捨て穴目指して登攀する。

 片手に円匙、もう片手は拾ったナイフを土壁に刺して上へ上へと登る。

 幼なじみであり、妻のシンシアが待つ我が家へと帰るために。




 「――――というわけなんだ。俺がこんなに帰りが遅くなって、頼まれた買い物が出来なかったのは」


 家の居間で勇者がシンシアに事の顛末を説明する。


 「だから、これは俺のせいじゃなくてオークのせいなんだ」

 「えぇっ! そんな大変なことがあったの!? でも、よかった。無事で……」


 シンシアが夫を抱きしめる。そしてぎゅっと力を込める。


 「とでも言うと思ったの? ウソつくんじゃないわよ! またどこか寄り道してたんでしょ! いつもいつもモンスターのせいばっかりして!」


 シンシアがキングオークでも震え上がるであろう怒気を露わにしてフライパンを剣のように両手で構える。


 「ばっ、ちょ、ちが……ホントのこどぅあっ!」


 弁解空しく、シンシアの痛恨の一撃が勇者の頭に落ちる。


 「今晩のご飯どーすんのよ!?」



 一方、街の冒険斡旋所ギルド では受付嬢のエリカがさまざまな依頼が貼られた掲示板から一枚の依頼書を剥がすところであった。


 「あれ? エリカさん、それもう剥がしちゃうんですか? 受けようと思ったんですけど……」


 年の若い冒険者が剥がされた依頼書を指さす。


 「ええ、すでにどなたかが討伐してくれてたみたいですよ。おかげさまで依頼人が大喜びで」


 剥がされた依頼書は坑道のオーク討伐の依頼であった……。

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