ミールのソラ

作者 ゲーナ

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★★★ Excellent!!!

海を行く船と、それらを狙う海賊、さらに海賊から船を守る戦闘機乗りたち、そして彼らを調停の名のもとに監督する保険会社。

本作は現実とは別の歴史を歩んだ「現代」だ。

ミリタリーを題材にする時に、リアリティ・ラインというのは大切だと思う。
荒唐無稽な設定のもとミリタリーを題材にすれば、ともすれば軍事ファンタジーになってしまう。

では現実の世界で、世界の海を行く船舶の航行状況に関するデータをもっとも持っている組織は何か。

それはアメリカでも中国でもなく、イギリスに端を発したロイズと呼ばれる組織だ。
国際航行を行う300トン以上の船が搭載しているAIS(自動船舶識別装置)からなる世界最大のネットワークを始めとした多種の情報網を構築しているこの組織は、世界中の船の動向をリアルタイムで把握している、と言われている。

そしてイギリスに本拠地を置くロイズ保険組合(名前の由来は上と同じ人)。保険のための保険、多数の保険請負人からなる巨大な保険法人。
こっちのロイズは、コーヒー屋に集う保険請負人が扱う海上保険を端として肥大化していった。
現実に海賊被害が発生した場合、船が保険に入っていれば出張ってくるのはこの人たち。

もし国家の枠組みが大きく後退し、かわって企業が台頭してくるのなら。

海における戦闘行為を企業が監視し、そこに一定の秩序とルールをもたらすのは世界規模の保険会社である、というのは十分説得力のある背景設定だと思う。


さらに本作の白眉である空戦描写。

戦闘機の機動というものは、運動エネルギーと位置エネルギーを等価交換し、いかに相手の優位に立つか、だと聞いたことがある。
たとえ飛行機の構造というものを熟知していても、高空で高速機動する戦闘機を文章で描写するのは難しい。
そこには豊富な知識とたしかな文章力が必要になってくる(というかレビュー書いてる僕は過去に挫折しました… 続きを読む