White Christmas
雪が降ってきた。
寒い夜だった。
街はイルミネーションに彩られ、ここでは、『空間デザイン』『街』『夜』×『クリスマス』で画像検索すると出てくる光景が広がっていた。
まるで、一枚の絵のよう。
自動車が通り過ぎる音……。
街の雑踏に刻まれるハイヒールの効果音……。
通り過ぎる人々の声……。
いろんな音が聞こえた。
幻想的に聞こえた。
私は、秒針の音しか聞こえない部屋の静寂に耐えかねて、中心街に繰り出してしまった。
どこへ行っても『独り』は変わらないのに……。
屋根付きのバス停の近くで、雪に身体をさらしていた。
近くから声がした。
「クリスマスだね」
若い女性の笑顔があった。
「今年はホワイトクリスマスかぁ」
若い男性の笑顔があった。
恋する2人は、別にバスを待っているわけではなく、ただ、屋根の下にいただけだった。
どんな会話なのかはわからないが、断片的に聞こえた。
なんかキスしそうな雰囲気。
「もっと気持ちを込めてよ」
行き場のない私の心は、舞い落ちる雪よりも、脱力感で軽くなった。
重ね合う唇……。
ぬくもりを感じ合っている。
海外渡航歴の無い昭和生まれのゴミ男では、この情景に入っていけない。
あちらこちらで恋する人たちの笑顔が見える。
まぁ、こうなるとわかっていて、ここに来たんだけど……。
私は、ただ、なんとなく……。
ここに居たかった。
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