夏の記憶
大地の色がオレンジ色に変わろうとしている。
晩夏は、いつも、崖の上に立っているような気分。
緑は鼓動を止め、海の色は躍動感を失い、潮風の香りまでもがその濃度を弱める。
あの太陽でさえも、衰えを隠せない。
ポートブリッジの中央付近から海を眺めている。
あれから何十年が経過しただろうか……。
ここから見える景色は変わってしまった。
私は止まったままなのに……。
泣きたくて、甘えたくて、死にたいほど寂しくて……。
ここに立つと、弱さが露呈してしまう。
どうして何もできずに終わったのだろう。
少なくとも、あの時の私は、今よりも数倍輝いていたはずだ。
どうしてなんだろう。
私は夏が大好きだ。
寂しさを吹き飛ばしてくれる、あの暑苦しい夏が大好きだ。
もうすぐ寂しい季節がやってくる。
終わってほしくない。
終わらないでほしい。
いつまでも、この夏につつまれていたい。
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