六百八十七話 強化の秘密

「お前、本当にただのオーガか?」


「人の言葉を喋る時点で、普通のオーガではないと思うが?」


下っ端連中はソウスケとミレアナに任せ、ザハークはバンディーとの戦闘を軽く楽しんでいた。


(この感じ……ゴブリングラップラーよりは上か)


ゴブリンファイターの上位種にあたるゴブリングラップラーはCランクに該当し、その体はもはやゴブリンには見えない大きさ。


同じCランクのオーガであっても、食われる可能性は充分にある。


(おそらく、冒険者ならBランク……といったところか。ふふ、良いな……それなりに楽しめる)


今のところザハークの動きに付いて来れているバンディー。

そんなバンディーをザハークは面白いおもちゃが見つかった子供の様な目を向けた。


「それもどうだ、な!!!」


「ふん!!」


両者の重い一撃がぶつかり、結果はややバンディーが押された。


(こいつ……普通のオーガよりも体格はちぃせぇくせに、パワーはどう考えても通常種のオーガより上だな)


ザハークはただのオーガではなく、希少種。

身体能力だけではなく、知能や魔力においても通常のオーガを大きく上回っている。


そしてレベルもそこら辺のオーガよりも断然高く、強化系のスキルを使用しているバンディーを素の状態で対応。


まだまだ余裕があり、バンディーとの戦いで魔法は一度も使用していない。


(チッ!!! どっからこんなオーガが生まれたんだ……あり得ないだろ)


あり得ない、なんてことはあり得ない場所であるダンジョンで生まれたので、決してあり得なくはない。


「よっと……認めてやるよ、オーガ。お前は強い」


「そうか。お前も盗賊にしてはそれなりに強いぞ」


ザハークに煽っているつもりはない。

ただ事実を述べただけ。


しかし、言葉の感じ方は人それぞれであり……バンディーにとっては、完全に煽りの言葉だった。


(ぶっ、ザハーク……真正面から喧嘩売り過ぎだぜ)


(……あれが天然というものでしょうか)


二人はザハークが素で無意識に煽りの言葉を返したと解っており、ソウスケは思わず吹いてしまった。


「嘗めやがって……まっ、お前もお前らも……これで終わりだ」


いかにも最後の最後に殺されそうな言葉を吐くと、バンディーは一つの魔法陣を展開。


そしてザハークはその魔法陣から放たれるオーラに見覚えがあった。


(この感覚……なるほど。運良く契約できたということか)


ザハークが感じ取ったオーラに、ソウスケとミレアナも反応した。


(へぇ~~~~~。下っ端連中も下手な強化魔法よりも強化出来たのは、それが理由だったんだな)


(特別でもない人間が、ここまで他者を強化出来るのは、そのような理由があったのですね……契約できたところを考えると、特別ではない……という訳でもないかもしれませんね)


禍々しい雰囲気を放つ魔法陣から現れたのは……一体の悪魔。


人の体を持ちながらも、頭は獅子。

サソリの尾を持ち、背には鷲の羽を四つも持つ。


「バンディーか……俺を呼んだってことは、お前だけじゃ勝てない敵と遭遇したのか」


「あぁ、そうだよ。あの人の言葉を喋るオーガだ」


「……ほぅ。確かに普通のオーガではないな。亜種か……はたまた希少種か」


亜種か希少種か。

そんな悪魔……パズズの言葉にバンディーは少し驚くが、それでもパズズを召喚できたことでザハークたちに対する不安は全くない。


「おいおい、悪魔って……さすがに不味いんじゃないか?」


「……それなりに強そうではあるな」


「加勢した方が良いんじゃねぇのか?」


「いや……それは大丈夫だろ。こっちは全部片づけ終えたし、ザハークが倒し終えるのをゆっくり観とこう」


確かにバンディーが召喚した悪魔はそこら辺のモンスターよりは圧倒的に強い。

それはソウスケも解っているが、どこからどう見ても自分と契約しているレグルスとレーラよりは強そうに思えなかった。

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