六百七十六話 睨んでも無駄無駄
「そんじゃ、とりあえずお互いのことについて色々と話し合おうか」
ソウスケがザハークを呼びに行き、部屋には全部で十五人の冒険者と一体のオーガが集まった。
そして全員が軽く自己紹介を行い、一緒に依頼に参加するメンバーの情報が頭に入った。
(烈火の刃の皆さんはガッツリ全員Cランクの実力があるんだな)
二刀流のラップ。双剣使いで狼人族のジャン。
巨人族で大盾と手斧を使うラッソに、攻撃魔法をメインに戦うアイリ。
そしてイメージ通り、弓をメインで戦うハーフエルフのメイ。
この五人はパーティー合計の戦力がCなのではなく、全員がCランクの実力を有している優秀なパーティー。
(それで……残りのDランクの冒険者たちは……俺に厳しい目を向けてるな)
その現状は予想していたので、苦笑いするしかなかった。
Dランクパーティーの内の一つ、天雷。
槍使いのフォルス、大斧使いのロンダ。
アイリと同じく攻撃魔法がメインのスーラ。
そして猫人族で短剣をメインに使うカリン。
フォルスが風魔法が使えて、スーラが雷魔法を使えるので、パーティー名が天雷。
という由来を聞き、ソウスケは正直なところ……現段階では少々名前負けしてるなと思ってしまった。
そしてもう一組のパーティー名は、波紋
虎人族で大剣使いのジープに、攻撃魔法メインのレイガ。
そして鞭使いのクリアナと……オーザストとというハンマー使いのドワーフだけ、Cランク。
実質、波紋という名のパーティーのリーダーはオーザストなのだ。
「ソウスケ君とかザハークさんはあれよだな、自由に動いて盗賊たちを潰す方がやりやすいよな」
「そうですね。自由に動ける方がやりやすいです」
「ソウスケさんに同意だな」
「オーケー、オーケー。ミレアナさんも同じ感じの方が良いかな」
「いえ、私はどちらでも……後方からサポートする動きでも構いません」
ソウスケとザハークは前に出て自由に戦う方がやりやすいタイプだが、ミレアナは二人の様にがっつり敵と戦いたいタイプではないので、後方から魔法や弓を使って戦うスタイルでも構わなかった。
「お、それは有難いな。それじゃ、盗賊と遭遇したらそんな感じで頼むよ」
「分かりました」
「よし、それじゃ……はぁ~~~~。お前ら、そろそろソウスケ君にアホみたいな視線向けるの止めろよ」
進行役であるラップがDランク組の数人に注意を飛ばす。
ソウスケとミレアナ以外のDランク冒険者、全員がソウスケに鋭い目を向けている訳ではない。
だが、フォルクスやロンダに、ジープやレイガといった自分の実力にそこそこ自信を持ってる組は、遠慮なしにソウスケに対して物凄くライバル視しており、それが視線に現れていた。
「ラップの言う通りじゃぞ。お前らみたいなひよっこがどれだけそっちの少年を睨んだところで、どうもできんわい」
「なっ!? そんなの実際にやってみねぇと分らねぇじゃねぇかよ」
Dランクパーティーの中で、一人だけ混ざっているCランクのオーザストに睨むだけ無駄だと言われ、虎人族のジープが椅子から立ち上がって吠えた。
「オーザストさんの言う通りだ。お前ら、ソウスケ君が怖いと思わねぇから、そんなあからさまな目を向けられるんだろ。ソウスケ君にそんな目を向けてる間は絶対に勝てないから、ぶっ飛ばされないうちにその失礼な視線を向けんの止めろ」
ソウスケにとって、ラップの言葉は有難かった。
やはりなんだかんだで、敵視に近い視線は鬱陶しい。
ただ、年長者……集団の中でトップの者が注意をしても、中々言うことに従わないのが跳ねっ返りのルーキー。
視線からのその意思を感じ、ラップは一つ大きなため息をつき……ソウスケに一つ頼み事をした。
「ソウスケ君。申し訳ないんだけどさ、この跳ねっ返りたちをちょっと殺してくれないか」
「えっ……あぁ、そう言うことですか。分かりました」
ラップがどういう意図でフォルクスたちを殺してほしいと言ったのか理解し、ゆっくり席から立ち上がった。
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