六百七十話 それもありか

「お前ら、少しおどおどし過ぎじゃないか?」


「そ、ソウスケさんが慣れ過ぎてるんだと思います」


ソウスケの誘いに乗った四人は人生で初めて歓楽街に訪れた。

普段の生活では感じることない雰囲気、甘ったるく体に絡みつくような匂い。

見るからに治安が悪そうに思える光景。


そのどれもが生徒たちにとって未知のものだった。


「……多少は慣れてるかもな。とりあえず、こういった光景を見て驚くことはなくなったし」


「ソウスケさんでも、最初はやっぱり驚くんですね」


「驚くに決まってるだろ。始めてきた時、異世界かと思ったぐらいだ」


転移する前の世界でもソウスケは学生だったので、そういった場所に行く機会はなかった。

故に、歓楽街の様な場所に行ったことはなく……初めて訪れた時は少し酔いそうになったのを覚えている。


「お兄さん、ちょっと寄ってかない」


「す、すいません!! その、行く場所が決まってるんで」


「あらそうなの? それじゃあ仕方ないわね」


生徒の一人が客引きをしている嬢に声を掛けられ、赤面になりながら誘いを断った。


「……お前ら、学園では普通に令嬢たちと喋ってるんだろ。なのに緊張するんだな」


「いや、学園の女子たちとはこう……色々と違いますよ」


「まぁ~~……それもそうか」


生徒たちが何を言いたいのか、詳しく聞かなくとも何となく解る。


(嬢たちは同級生や先輩たちと違って、がっつり大人だもんな……学園に嬢に似た空気を持つ先生がいれば話は別かもしれないけど……いや、それはそれで学園の空気が乱れそうだな。うん、絶対に乱れる気がする)


憧れの保健室の教師、なんて妄想がこの世界では現実として……あり得る。

ただ、生徒たちが所属する学園にはそんな先生たちはおらず、歳上のエロさを持つ女性とは全く話し慣れていない。


「ソウスケさんはやっぱり、もう何度もこういった場所に来慣れてるんですよね」


「慣れてると断言出来るほど来てるか分からないけど、お前たちみたいにおどおどしなくなるぐらいには来てるな……最近はダンジョンの攻略だったり鍛冶に集中してたから全く来てなかったけど」


その間にソウスケの性欲はがっつり溜まっていたので、今夜はその溜まった欲を全て解き放ちたい……と、考えている。


「その……ソウスケさんは、何人も一度に相手にしたりするんですか!!!」


「ぶっこんだこと訊いてくるな。別に俺はいつも一人で……あぁ~~、それはありな気がするな」


これまでソウスケはいつも一人の嬢を相手にしていた。

ただ、オークから奪った精力増強のスキルを使用し、子供ながらにプロ相手に超善戦していた。


スタミナに関しては冒険者なので圧倒的にあり、試合が終わった後はいつも嬢の方が体力を消費している。


(別に二人を相手にするのが駄目ってルールはないんだよな……今日は結構溜まってるし、一人を相手にして途中でギブされるのは嫌だし……二人頼んでみるか)


現在ソウスケが向かっている店は、学術都市の中でもトップクラスの店。

そんな店の嬢を一度に二人も相手にするとなれば、中々のお金が飛んでしまうが……制作した武器が飛ぶように売れたソウスケは一ミリもそこに関しては気にしない。


「……え、マジでやるんですか?」


「俺最近溜まってたからな。そういったプレイもありかと思った。ありがとな」


「い、いえ。どうも」


好奇心で尋ねた質問だったが、本当にそれを実行する気だと知って驚く生徒たち。

ただ、馬鹿でなければ相手にする嬢が一人増えれば、支払う料金が倍になることぐらい解る。


((((この人、いったい幾ら持ってるんだ!!??))))


色々と普通ではないのは解っている。

しかし改めて気になってしまう……ソウスケの総資産はいったい幾らなのか。


喉から出そうで出ない言葉に生徒たちがモヤモヤしていると、ソウスケが本日の戦場にしようと決めていた店に到着した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る