六百六十七話 条件がある?

それなりの期間で造り上げてきた武器を殆ど売った後、再びダンジョンの攻略に向かい……は、しなかった。

そもそもソウスケはダイアスから武器の制作を頼まれており、先日武器の素材として使って欲しいモンスターの牙や鉱石を受け取ったばかり。


そしてソウスケはダイアスからだけではなく、まだまだ生徒たちからもこういった武器を造って欲しいと頼まれている。


(この調子でいくと、上級者向けダンジョンを攻略再開するのは十日後ぐらいになりそうだな)


ターリアの武器に必要な素材を集める為に上級者向けダンジョンを探索したことで、それなりに素材は増えているので制作に問題はない。


ただ、ソウスケが武器を造っている間……ザハークは暇なのかというと、そうではない。

生徒たちの中には是非ともザハークに自身の武器を造って欲しいと思っている者もおり、ミレアナも同じ状況なので三人は一仕事が終わってもまた作業を続けることになっている。


しかし三人ともそんな状況が苦ではなく、面倒だとは思っていない。

寧ろ自分が造った武器で生徒たちが喜んでくれる。

その結果に対して非常にやりがいを感じていた。


(上級者向けダンジョンを攻略したらそろそろ別の街に行くんだし、生徒たちの依頼を全部達成してからダンジョン攻略に向かうのもありかもな)


まだ行先は決まっていないが、それでも上級者向けのダンジョンを攻略すれば、学術都市が管理している三つのダンジョンを全て攻略したことになる。


ソウスケたちはその三つのダンジョンに興味があって訪れたので、攻略を終えれば必然的に目標達成となる。


(上級者向けダンジョンには実は五十層以降の階層があった!!! って新事実が発覚したりしたら、それはテンションが上がるんだけど……まっ、そんな都合良く変化が起きたりしないよな)


既に全ての階層が攻略されたと思われていたダンジョンに、新しい階層が見つかるという例は決してゼロではない。

ゼロではないが、かなり珍しい発見。


学者たちは本来であれば珍しい発見だが、何かしらの条件を達成すれば、必然的に新しい階層が見つかるのではと考える者もいる。


(まっ、今はそれよりもダイアスの武器を全身全霊で造り上げないとな)


ダイアスが必死で取ってきた素材はグレートウルフとフォレストタイガーの牙に、紫鉱石。

そして中級者向けダンジョンの最下層のボスであるエルダートレントの魔石。


勿論、これらはダイアス一人の力でゲットした訳ではない。

同じ冒険者とパーティーを組んで潜ってモンスターを狩り、ボス戦に至っては誰がどう見ても一番活躍したと認める働きをして、モンスターの素材の中で一番価値がある魔石をゲットした。


ダイアスの実力は中堅でやや上の方だったので、それなりに強い部類ではあるのだがフォレストタイガーやエルダートレントを相手に無茶をすれば、当然殺される確率がかなり高くなる。


ダイアスがソウスケに武器を造ってもらう為に集めた素材は、まさに死線を乗り越えて手に入れた物。


その想いに答える為に、ソウスケは今持てる全ての技術を総動員して一つの剣を造り上げた。


「…………うん、良い感じ、かな。ザハーク、どうかな。この魔剣」


「ん? …………ふむ、先程からいつもより……いや、普段から集中しているが、今回は更に集中していたな。その気持ちが魔剣に現れている、といったところだ」


「つ、つまり良い感じってことか?」


「あぁ、少なくとも俺はソウスケが言う良い感じだと思うぞ」


「よし!!!!」


鍛冶師としての腕はまだソウスケの方が上なのだが、ソウスケ的にはザハークに褒められると超嬉しくなってしまう。


「さて、鞘も作らないとな」


ソウスケは上がった気分が冷めないうちに鞘作りに入り、今日もまた夕食時まで何かを造り続ける三人だった。

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