六百六十四話 これぐらいの値段設定で……
ターリアにフレイザーと火竜・焔を渡し、その後門下生たちの相手を軽くしてからソウスケはザハークが作業中の鍛冶場へと向かった。
「何か一つぐらい造る、か……あれ、ダイアスさんじゃないですか」
「おう、ソウスケ君、久しぶりだな」
鍛冶場に向かう前に客間があり、そこには学園で教師をやっているダイアスという兼任の冒険者が座っていた。
「どうも、確かにちょっと久しぶりですね。それで……ここにいるってことは、もしかして武器制作の依頼ですか?」
「おう、その通りだ。ようやくお前に造ってもらうための素材が集まってな」
良い笑顔でダイアスは収納袋から中級者向けダンジョンで手に入れた素材を取り出す。
テーブルの上に並べられた素材を見て、ソウスケは思わず驚いた。
「凄いじゃないですか、ダイアスさん。グレートウルフの牙にフォレストタイガーの牙。それに……これは紫鉱石。それにエルダートレントの魔石……もしかして、結構無理しましたか?」
「はっはっは!! 冒険者なんだから欲しい物の為に無理をするのは当たり前だ」
よくよくダイアスを視ると、少し前に会った時と比べて強さが増していた。
(……本当に無理したんだろうな。死線を乗り越えて強さが増してる……確かダイアスさんってCランクだよな。もしかしたらBランクになれるんじゃないのか?)
実際に、ダイアスの戦闘力はBランクの上位組には負けるが、下位から中堅ぐらいまでの強さは持っていた。
「それで、こいつらを使って一つ武器を……ロングソードを造ってくれないか。勿論、代金は払う」
「勿論、造らせてもらいますよ。ただ、直ぐには造れないと思います。明日から造り溜めてた武器を露店で売ろうと思ってますから」
「構わないぜ。急ぎで新しい武器が必要って訳じゃないからな……ただ、ソウスケ君やザハークがどんな武器を売るのかは斬りなるな」
「見ますか?」
「良いのか!?」
「えぇ、勿論構いませんよ」
ソウスケ自身が造った武器。
そしてザハークから預かっている武器をテーブルの上に並べていく。
「…………解ってはいたが、二人ともやっぱり凄いというか……こっちの方面でもとび抜けてるんだな」
テーブルに置かれた物だけが全てではないが、冒険者としてそれなりの経験があるダイアスは武器の目利きも優れており、鑑定のスキルを持っていなくとも二人が造った武器が平均以上の出来上がりだと即理解。
「ふふ、教師に褒めてもらえると嬉しいよ」
「教師なのはソウスケも同じだろ」
「俺はただの臨時教師だよ。年齢的には生徒たちと変わらないし」
「はは、確かにそうだったな。にしても……この武器たちは、いったい幾らぐらいで売るつもりなんだ」
「ん~~~……ちょっと待ってくれ」
そう言うと、ソウスケは武器をランクごとに分け始めた。
そして口頭でダイアスに大体の値段を伝えた。
「ッ!!?? お前、それは……かなりお買い得だな」
「やっぱりそう思うよね。でも、俺やザハークからしたら素材は自分たちで調達できるから、それぐらいが丁度良いと思ってるんだ」
例えば普通の店では金貨二十枚で売っている質の武器であれば、ソウスケは金貨十四枚程度で売ろうと考えている。
他の武器商店の者たちの反感を買わない程度に……しかし、他店と比べてお買い得の値段。
一般と比べて三割引きの値段で武器を売る。
この内容にザハークも同意している。
なんなら、そこまでお金に興味がないザハークはもっと安くても良いのでは思っているが、それはそれで良くないことが起こるかもしれないと解っているので口に出さなかった。
「二人の場合はそうだよな……よし、同僚たちにも声をかけとくぜ」
「おっ、それは嬉しいな。是非とも頼むよ」
二人が造り上げた武器の質と値段設定を考えれば自然と客は寄って来るが、販売開始から客がたくさんいるというのも悪くない。
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