六百三十八話 違う道を選んだ結果

「うわぁ~~~~……嫌な罠だな」


三十三階層を探索中のソウスケの前で、偶々罠を発動してしまったフレイムリザードが魔法陣から発せられた複数の炎柱に焼かれていた。


「一般的なリザードではなく、フレイムリザードですから大したダメージはないと思いますが」


「いや、それはそうなんだけど……冒険者が引っ掛かったら普通に嫌な罠じゃないか?」


罠が消え、煙を上げながら現れたフレイムリザードは確かにまだまだ戦える状態。

しかし体の所々に炎症があった。


(フレイムリザードの皮膚や鱗を焦がすんだもんな……やっぱり油断出来ない罠だったんだな)


ソウスケたちは罠感知のスキルレベルが高いので、基本的に引っ掛かることはない。

そしてモンスターたちも特殊な感知力で、ダンジョンを行動している際に罠に引っ掛かることはない。


(ダンジョンから生まれてくるモンスターは、全てそういった特殊能力? を身に着けてるのかもな)


今回は戦いの最中ということもあり、フレイムリザードは炎柱の罠に引っ掛かってしまったが、普段はダンジョンの中をウロチョロしていてそこら辺の罠に引っ掛かることはまずない。


「そうかもしれませんが……噴出するのがマグマでないなら、まだ優しい方ではないでしょうか」


「ま、マグマか…………確かに炎柱の方がまだ優しいかもしれないな」


炎柱とマグマの柱。

どちらが強力でダメージを受けるのか、言うまでもない。


モンスターの素材から造られた靴や衣服だとしても、溶かされてしまう可能性が高い。


「チャンス!」


フレイムリザードがブレスを放とうと口を大きく開いた瞬間を狙い、ウィンドランスを口内にぶち込んだ。


「ゴバっ!!??」


丁度火のブレスを放とうとしたタイミングで風槍が入ったことで、口内で爆発が起きた。


ピクピクと少しだけ動いた後、フレイムリザードは絶命した。

周囲に他のモンスターがいないことを確認したソウスケはミレアナと二人で解体作業を始めた。


「ミレアナも何か素材は使うか? 錬金術に色々と使えるだろ」


「いえ、倒したのはソウスケさんですので全てソウスケさんが使ってください」


「でもさ、俺が使うのは精々鱗と魔石と爪、牙とかだけだ。肉は食用にするとしても、内臓や血は錬金術に使えるだろ」


最近はエアーホッケーを造る時にしか錬金術を使わないソウスケにとって、内臓や血などは亜空間の中で腐らせてしまう可能性がある。


それならば、いっそ錬金術で杖やポーションを造っているミレアナに使ってほしい。


「……それでは、使うかもしれない時は声を掛けさせてもらいます」


「おう、じゃんじゃん使ってくれよ」


最近はあまり冒険者ギルドの仕事を受けていないソウスケだが、生徒から武器の制作依頼を受けたり、エアーホッケーの売上金。


ダンジョンの宝箱に入っている現金などのお陰で、十分過ぎるほどの収入がある。


「そっちはもう終わっていたか」


「そっちも終わったみたいだな……やっぱり、近くで見るとそのフレイムリザードは大きいな」


「そうだな。亜種という訳ではないが、それでも普通のフレイムリザードよりは強かった。変異種? と呼べばいいのか……とにかく、Bランクモンスター並みの強さを持っていた」


そう言うザハークの顔には満面の笑みが浮かんでいた。


(久しぶりに楽しい戦いができたみたいだな)


三十一階層に入ってから遭遇したモンスターは全てレベル三十を越えていたが、ランクはC。

どんなモンスターと戦っても面白い相手だという感想が出ても、戦っていて楽しいと満足することはなかった。


(……確かに、ランクはCだ。名前のところに亜種や希少種、変異種という言葉も付いていない……となると、同族以外のモンスターをたくさん食べたけど、進化しなかった個体ってところか?)


進化しない代わりに体の巨大化という選択肢を体が選んだ。

その可能性があるかもしれないと思い、ソウスケはモンスターという異次元の生物はやはり面白いと感じた。


(素材の価値としてもBランクモンスター並みの物だろうけど……俺が倒したわけではないからな。そろそろBランクのモンスターと遭遇したいところだ)


ターリアから頼まれた武器を制作するために、そろそろ素材を手に入れて地上に戻り、鍛冶を始めたいと思いはじめたソウスケだった。

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